だいぶ前に買ってあった、「ナチュラル」と「ザ・シークレット・サービス」の2枚組DVDのうち、「ナチュラル」を見ました。もちろん、初めてではなく、初公開時に試写室で見ています(もう映画雑誌に書いていたのだ)。
この2枚組はなぜか1000円だったので、こりゃお買い得、と思って買ってしまったのですが、上に書いたように「ナチュラル」は初公開時に見ているし、「ザ・シークレット・サービス」も確かレンタルDVDで見ていたので、買ったはいいが積んどく状態でした。
ところが先日、なぜか突然、「ナチュラル」見たくなって、見たのですが、初公開時に見たときはかなりいい映画だと思ったのに、今見るとそれほどでもないのでがっかりでした。
初公開時は監督のバリー・レヴィンソンが「ダイナー」で登場した直後で、期待の監督であったのです。今になってみれば、彼は結局、「グッドモーニング・ベトナム」と「レインマン」だけの人であったと思いますが、当時は期待度高くて、出演者も魅力的だったので、実際よりもよい映画に思えたのでしょう。
もちろん、つまらない映画ではないし、初公開のときのいい印象がなければ、がっかりもしなかったのでしょうが、ファンタジーの仕掛けが中途半端なのと、グレン・クローズがミスキャストなのがきびしい。クローズは「ガープの世界」で映画デビューしてまだ間もないときで、「危険な情事」以後の怖い女、やり手の女のイメージがまだなかった頃ですが、これは明らかにクローズの役じゃない。彼女の演技力が無駄遣いされている。
この映画で一番おいしいのは、出番が少ないバーバラ・ハーシーで、初めて見たときも彼女が一番印象に残りました。有名スポーツ選手に銀の銃弾をお見舞いする女で、黒い衣装を着て、見るからに悪女、いわゆるブラックウィドウです。銀の銃弾というのは、たしか、狼男をやっつけるのに使う弾丸だと思いますが、そういうファンタジー的なところが最初から充満している映画で、そういう面は好きなのだけど、そのファンタジーがその後、あまりよい効果を上げていないのが残念なのです。
この黒衣の悪女に対するのが、白い衣装のクローズで、彼女の白い帽子に光が当たり、それを見たレッドフォードが復活するシーンは美しい。白い衣装のクローズは天使なのです。
一方、レッドフォードを陥れようとするキム・ベイシンガーは、ハーシーとクローズの中間的な女性で、だから、場面によって黒い衣装だったり白い衣装だったりします。この3人の女性の黒と白の衣装の対比は初公開時にも注目して見ていました(というか、私は昔からこういうところに注目する人間)。ベイシンガーは球団を陥れようとする側の人間ですが、彼女はレッドフォードに惹かれてもいて、だから中間的な女性なのです。が、このベイシンガーの中間的なところが消化不足なので困る。
そんなわけで、初公開時のいい印象が壊れちゃった、だから、昔見た映画をDVDで見るのはいやなんだよね、という感じになったのですが、最後に、エンドクレジットを見ていて、え、と思ったことが。
なんと、この映画、ニューヨーク州バッファローで撮影されていたのです! 映画の舞台はもちろん、バッファローではなく、主人公の所属する球団はニューヨーク市のチームなのですが、1920年代から30年代が舞台ということで、バッファローの現代っぽくない地域で撮影したのだと思います。エンドクレジットで、バッファロー市と市長に感謝する、とか書いてありましたね。「バッファロー66」とか、「ブルース・オールマイティ」とか、バッファローが舞台の映画はありましたが、「ナチュラル」がバッファローで撮影されていたとは知りませんでした。