パク・チャヌクの映画は「お嬢さん」と「別れる決心」が大好きだが、最新作「しあわせな選択」はなにかちょっと違う感じがして、見に行くかどうか迷ったが、やはり気になるので見に行った。
高卒で製紙会社に入社し、25年間、会社のために尽くして工場の現場で出世した主人公が突然、解雇され、別の製紙会社に就職しようとするが、紙需要の低下で不況の製紙業界には同じく解雇された優秀なベテランのライバルが何人もいて、再就職がむずかしい。そこで、自分より優秀なライバルを消そうと考える、というストーリー。原作はドナルド・E・ウェストレイクの「斧」だそうで、英米のミステリーを韓国を舞台に翻案というのは「お嬢さん」につながる。
「お嬢さん」は日本の植民地時代の朝鮮を舞台にしていたが、今回は時代は現代だけどベトナム戦争の傷跡がさりげなく盛り込まれている。日本は憲法を盾に自衛隊のベトナム出兵を断ったが、韓国は軍隊をベトナムに送り、兵士たちは加害と被害の両方で精神的な後遺症を患っているという。主人公の父がベトナム帰還兵で、父がベトナムで手に入れた北朝鮮製の拳銃を主人公が使ってライバルを殺そうとする。しかも、解雇のきっかけが、勤務する会社がアメリカの会社に買収され、リストラのリストを作るよう言われた彼がそれに反対したのが解雇の理由のようだから、アメリカの圧力が全体の背景にありそうだ。
このあたりに注目すると面白いのだけれど、「お嬢さん」や「別れる決心」のようなタイプの作品ではなく、どっちかというと「パラサイト」っぽい路線なのかな? でもそれはチャヌク向きではないし、とにかくストーリー展開がぎくしゃくしている感じがして、見ていて戸惑うことが多い。
娘がチェロの名手で、もっと上のレベルの先生につくことを勧められるが、それには多額の費用がかかる、という設定が、「TOKYOタクシー」いや「パリタクシー」から来てるのかな?
(以下ネタバレ)夫の犯行を知って、それでも生活のために夫の共犯者になる妻と、真相に気づいているらしい息子、そして、それまではチェロを弾くのを聞かせなかった娘が突然、聞かせるようになるラスト近くのシーンには、子どもたちは知っている、という暗示がある。リストラに反対して解雇された主人公が、新しい職場ではリストラを容認してしまう、そしてラストは製紙工場の現場の機械化が描かれ、主人公の未来が安泰ではないことを示している。大きな木の根元にいる息子、という幻想シーンと、ラストの切り倒される木もおそらく象徴的な場面なのだろう。
途中、喜劇っぽいところもあるのだが、全体的な統一感がイマイチなのも乗れない理由で、最後も、悲劇なら悲劇のカタルシスが欲しいところだが。
20年前、日本製紙クレインズを応援していて、その後、日本製紙釧路工場が閉鎖になったことを思うと、製紙業界はどの国も大変なのだろうと思う。
映画の前にシネコンの入ったショッピングセンターのマックで遅い昼食を食べようとしたが、注文したものがなかなか来ない。隣の席の人は私よりあとから来たのに、その人のところにはもう注文したものが来ている。順番が多少前後することはあると思って待っていたが、なかなか来ない。隣の人も私のが来ないのを気にしている様子。このままでは映画に間に合わないと思い、スタッフに返金してもらおうと声をかけたら、横から店を仕切っているようなお局風の女が大声で「順番にやっています」と怒鳴った。「もうこれ以上待てないから返金してくれ」と言ったら、ぶすっとした顔で黙って返金してくれたが、ものすごく感じが悪かった。
実は隣の人だけでなく、私が注文したときに前後にいた人たちももう商品は来ていたのだ。完全に、私の分だけ無視されたままなのは明らかで、あのままだと1時間たっても来なかっただろう。しかし、日曜で非常に混雑していて、あのお局女もイライラしているのが丸わかりだったから、まあ、しかたないか、返金してもらえたし、と思い、そういったことはいっさい告げずに店を出て、すぐそばのスーパーでパンを買って無料で座れる椅子に座って食べてからシネコンへ行った。昼食がパンになってマックのセットの3分の1の値段になったし、映画も間に合ったから別にいいのだけど、このマック、平日はとても落ち着いていて、フロア担当のスタッフが感じがよくて好きだったのだ。あのお局女は見たことがなかったので、休日の混雑のときだけ来る人なのかもしれない。マックは店によってはモバイルオーダー優先で、店内の客は後回しにされると聞いたことがあるので、マックがファストフードなのはすいているときだけと思った方がよさそうだ。

