2014年1月30日木曜日

最近見た映画

先週あたりから試写にも行けるようになりました。
それでも先週は90分間座席に座っていると腰がちょっと、という感じでしたが、今週はかなり大丈夫に。
というわけで、見た映画のメモ。


「Room237」
風邪で倒れる直前に見た映画。思えばこのときに風邪をひいたような気がする。
映画はスタンリー・キューブリックの「シャイニング」についてのドキュメンタリーで、いろいろな人がこの映画の深読みを披露しているが、キューブリックの映画って、深読みしたり、監督の言いたかったことを決めつけたりするとつまらなくなると思う。こういう可能性もあるという程度にとどめておいた方がよいのだ。


「ドン・ジョン」
ジョゼフ・ゴードン・レヴィット監督主演の映画。主人公は「SHAME」と同じくポルノビデオ依存症で、現実のセックスよりポルノでマスかく方がイイ、と言っている男。これが1つのトレンドになっているのか? ただ、シリアスで暗かった「SHAME」に比べ、こちらはコメディなので明るいし、笑えるのが救い。


「家族の灯り」
100歳を越える最長老監督マノエル・ド・オリヴェイラの新作。マイケル・ロンズデール、クラウディア・カルディナーレ、ジャンヌ・モローと、出演者も豪華。内容は舞台劇の映画化のようで、ほとんどある家の中だけで進行。失踪した息子をめぐる老夫婦と、息子の嫁を中心に、家族を守るための嘘が描かれる。冒頭でシベリウスのヴァイオリン協奏曲が鳴ったところでシビレた(失踪した息子が海を見つめる映像もいい)。そしてストップモーションのラスト!


「フルートベール駅で」
けんかに巻き込まれた丸腰の黒人青年が過って白人警官に射殺されてしまった実話の映画化。監督は20代の若いアフリカ系。刑務所から出てきた元ヤクの売人が、幼い娘と恋人のためになんとかまともに生きようとし、よい人にもめぐりあうが、悲劇が起こる。非常に淡々とした描写で、登場人物の大半は白人も含めて善人。一部、悪人も出てくるが、わりとパターン化された善人と悪人で、善悪併せ持つ人間の複雑さとかはない。抵抗する主人公におびえ、スタンガンのつもりで銃を撃ってしまう警官も、わりと善良そうで気が弱い感じの男に描かれている(実際、おびえていたためにこういうことになってしまったらしい)。こういうあたり、深みがないと思ってしまうのだが、もともとこういう事件はアメリカが銃社会だから起こるので、日本のように銃が違法だったら警官もめったに銃は抜かず、こうした悲劇も起こりにくいのだが、アメリカでは銃社会批判を持ち出すと総スカンになってしまうという現実があるようで、だから、この映画もそこに踏み込むことはできないのだろう。


「オール・イズ・ロスト」
出演者はロバート・レッドフォードただ1人。ふだんは顔にラバーをつけたりして年齢をごまかして不自然な顔になっているレッドフォードだが、この映画では年齢相応のしわのある顔で出演、こっちの方がいい男だ。内容は「127時間」や「ゼロ・グラビティ」と同じサバイバルもの。山、宇宙ときて、今度は海。大海原でヨットが大破し、救命ボートで救いを待つ男の絶望と生への執着が描かれる。海の映像が美しい。


「ブルージャスミン」
ウディ・アレンの新作はケイト・ブランシェットの鬼気迫る演技が見もののシリアスドラマ。セレブの妻だったジャスミンは破産し、夫を失い、一文無しになって、庶民の妹のところに転がり込む。ジャスミンと妹は同じ里親のもとで育った里子の姉妹なので、血のつながりはない。セレブだったときには妹を疎んじたり、妹夫婦に迷惑もかけたりしていたのに、文無しになると妹のところに転がり込む自己チューのきわみ、相手が聞いていようがいまいがいつも自分のことばかりしゃべっている。そんなジャスミンと妹の現在と、ジャスミンの過去が交互に描かれ、しだいにジャスミンの破産のわけがわかってくる、という内容で、ジャスミンを演じるブランシェットの狂気にとりつかれたような目つきがすごい。妹のもとに転がり込んで迷惑をかけるのは「欲望という名の電車」、ラストのジャスミンの過去に戻ってしまったような狂気は「サンセット大通り」と、過去の名作をほうふつとさせるが、考えてみたら、この題材、コメディにしても面白いはずなのだ。でも、アレンはあえてコメディにしないでシリアスドラマにしたわけだけど、サンフランシスコの明るい風景といい、どう見てもコメディになるはずだろう、と思う展開やテンポなのにシリアスというのがすごいといえばすごい。でも、個人的にはあまり好きになれない話だ。