驚いた。「蜜蜂と遠雷」あたりに落ち着くんじゃないかと思っていた。キネ旬ベストテンにも入っていたし、このあたりが無難なところなんだろうと思ったが、政権を真っ向から批判したインディペンデント映画を最優秀賞とは、日本の映画人も捨てたもんじゃない。
同じプロデューサーの「宮本から君へ」が、あとから助成金取りやめにされたことへの反発もあるのだろう。ピエール瀧が表向きの原因だが、「新聞記者」のプロデューサーだからやられたとの推測があった。
ほかでは、「翔んで埼玉」が最優秀監督賞・脚本賞・編集賞と、映画の根幹にかかわる部門の受賞。映画としての技術的なレベルの高さが評価されたのがとてもうれしい。また、この映画も実は、圧政をする権力者に対して民衆が蜂起する内容で(しかも対立する埼玉と千葉の解放戦線が途中で共闘という、野党共闘みたいな話)、そういう政治的な部分に触れると物議をかもすのでみんな触れないでいるが、意外とそういうところも受けたのかもしれない。
というわけで、他の映画も含め、受賞した皆様、おめでとう、ですが、「天気の子」の受賞が当たり前すぎてまったく話題になっていない。
ところで、最優秀作品賞の「新聞記者」はイオン・エンターテイメントが共同配給で、全国のイオンシネマで公開された。他では松竹系のMOVIXが積極的に上映していたが、天下のTOHOは上映しなかった。話題の「パラサイト」が当初、TOHO以外はあまり上映しなかったのとは逆のケース。「新聞記者」はイオンのおかげで多くの人に見られた、というのは事実だと思う。
イオンシネマは昨年、ネットフリックスの「ROMA」を突然、全国で上映して映画ファンを驚かせたが、その後も「アイシッシュマン」は同じく全国のイオンシネマで公開。全国とはいってもすべてのイオンシネマではないが、北海道では道東の釧路でも上映されていて、全国規模での上映を果たした。「マリッジ・ストーリー」など地味な作品はさすがにイオンも一部の映画館でしかやってないのだが、「ROMA」と「アイリッシュマン」は全国規模で上映した。
ネットフリックスは配信優先という立場で、映画館で公開されていてもHPに劇場情報も何も載せない。宣伝もしない。試写ももちろんやってないわけで、映画館としては宣伝もない状態で上映するわけだから大変だと思う(TOHOシネマズでなぜかネットフリックスのチラシを配っていたとの情報もあるが)。ネトフリ映画の劇場公開については、大手のシネコンが上映しようとしない(イオンも大手なんですが)、その背景には対立が、みたいなまったく新鮮味のない記事がキネ旬に出ていたが、その筆者の行動範囲にイオンシネマがないから見られなかったのね、という感想しか浮かばなかった。世の中にはイオンシネマはあるがTOHOがない、だから始まったばかりの「パラサイト」が見られない、という人たちもいたんだが。
そのキネ旬は「Fukushima 50」の特集をしている。
この映画は最初に予告編を見たとき、東電がんばったの映画にしか見えなかった。東電が全面協力している映画が原発の問題を描くわけがない。たとえば、「チャイナ・シンドローム」は電力会社の協力は得ていない。それどころか、ジェーン・フォンダをテレビ番組から降ろせという圧力までかかった。
だから見る気はなかったのだけど、その後、ネットに出た記事を読んだら、私の予想の斜め上を行くトンデモ映画じゃないか、これは。
以下、ネットで見つけた記事。
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映画『Fukushima 50』はなぜこんな「事実の加工」をしたのか?
観客をミスリードする作りhttps://gendai.ismedia.jp/articles/-/70707
どの段階で誰が、「総理大臣を悪役にする」と決めたのかは知らないが、出発点がそこにあるので、演技も演出も、「総理」登場シーンだけは、事実とはかけはなれてしまっている。
当時の民主党、菅直人政権を批判するためのプロパガンダ映画として作られたのなら、その目的は達成されるだろう。
Fukushima50ーよく出来ているが、誘導されてしまう危険性?
https://cinemacinema.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
また、彼が福1に乗り込んだことでベントが遅れたというのは、当時の野党が流したデマのはずだが、そのまま描いている。政府が「海水を使うな」と指示したという話も、本当は東電の判断。炉心が塩水で使えなくなるのを恐れて止めたというのが真相と聞く。なのに政府からの指示と描いている。つまり、これらは当時言われたこと。のちにデマだとわかったことをベースにして、共に菅総理。あるいは民主党の失態だと指摘している。が、どちらも事実ではない。なぜ、デマをそのまま描くのか?
映画「Fukushima50」なぜ、原発映画なのに多額の製作費が集まり、豪華キャストを実現できたのか?=東電を賞賛する作品だから!
https://cinemacinema.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
この映画のテーマは「東電の皆さん。日本を救ってくれて感謝。これからも頑張ってくださいね。原発はもう安心ですよね」ということを伝えたいのではないか?と思えるほど。だから、原子力ムラも、原発推進の現政権も、圧力をかけない。むしろ応援してくれる。企業も安心して出資できる。
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キネ旬の星取り表では3人の評者が最低の1つ星をつけているが、上のような問題はわからない。
特集はまだ読んでいないが、正直、この号のキネ旬はネトフリの記事といい、もやるものが多くて、あまり読む気になれない。見ないで言うのはいけないのだが、この映画にだけは、絶対に金を落としたくないと思う。
原発事故については、それに先立つ第一次安倍内閣の時代に、福島第一原発が津波で全電源停止のおそれがあるので対策を、と野党に言われたのに、安倍が問題なしとしたのが一因と言われている。そして、この未曾有の危機のとき、政権にいた民主党は野党の自民党に協力を呼びかけ、自民党にも協力すべきとの意見もあったようだが、安倍が反対し、民主党の足を引っ張ることばかりした。そして民主党が政権から降りたあと、悪夢の安倍政権が長々と続き、ついにはコロナウィルスで日本は戒厳令状態(満員電車と会社はのぞく)、コロナより経済が心配な有様。トイレットペーパーがないのも安倍がまわりに相談せずに決めた全校一斉休校のせいだから、みんな、忘れるな。次に安倍がなにかしたら、ほんとに紙も食料もなくなるかもしれない。
前に東雲イオンにトイレットペーパーが山のようにあるという記事を出したけど、新浦安や幕張新都心のイオンもトイペは豊富にあるらしい。特に新浦安は駅前で便利、しかも、イオン以外の店もトイペとか置いてあるらしい。このあたりの東京湾岸は大きな倉庫が多いので、在庫を置けるというのがあるのだろう。
「新聞記者」、ネトフリ映画、そしてトイペ、イオンがんばる。