「いちごブロンド」の原作舞台劇の最初の映画化「或る日曜日の午後」(舞台劇と同じタイトル)と、大昔にテレビで見た「燃えつきた欲望」が入っているDVD10枚セットを買いました。
早速、この2本を鑑賞。
「或る日曜日の午後」は「いちごブロンド」と大筋で同じで、こちらもクーパー演じる主人公は刑務所に入っているけれど、入った理由がちょっと違う。「いちごブロンド」の方が狡猾な友人にだまされて、という印象が強く、刑務所で歯科医になる勉強をしているシーンもあり、「いちごブロンド」の方がていねいに作られてる感がある。
あちらでの評価も「いちごブロンド」の方が断然高いようだけど、「或る日曜日の午後」もきちんと作られた作品で、キャグニー主演の「いちごブロンド」がコメディになっていたのに対し、こちらはクーパーなのでシリアス。
かつて日本では一番人気のあった男優、ゲーリー・クーパーだが、この映画ではいつも酔っぱらっているような、なんとなくダメ男っぽい人物。キャグニーの方はいちごブロンドの女性に対して自分は片思いだとわかっていたが、クーパーの人物は・フェイ・レイ演じる女性と相思相愛だと思い込んでいて、それで友人に奪われたことを根に持っている。でも、実際は、彼女は主人公のことを思っていない。
最後、主人公が復讐を思いとどまるとき、キャグニーはその理由を言うけれど、クーパーは言わず、観客に想像させるようになっているのも興味深かった。
「燃えつきた欲望」は共演がローレン・バコールとパトリシア・ニールという豪華版、脇役もジャック・カーソン(「いちごブロンド」で敵役だったが、この映画ではいい人)、ドナルド・クリスプ、グラディス・ジョージという豪華版。監督は「カサブランカ」のマイケル・カーティス。
なのに実は日本未公開だったのだ。「燃えつきた欲望」はテレビで放送されたときの題名。
中学生のときにテレビで見て以来だけれど、今見ても非常に見ごたえがある。19世紀末の南部が舞台なので、黒人の扱われ方とかもいろいろ気になった。
配役順はクーパー、バコール、ニールの順だけど、この映画、「摩天楼」で共演したクーパーとニールの2作目で、この2人は「摩天楼」がきっかけでロマンスになり(つか、不倫?)、そういう意味でも当時は注目作だったようだ。
バコールはニールより先にスターになり、ハンフリー・ボガートと結婚した頃。
そんなわけで、この映画も「摩天楼」の2人、クーパーとニールが同じような役柄になっているところが注目なのです。
「摩天楼」同様、この映画でもニールの方が身分が上、クーパーは見下される身分。ニールの演じる女性はクーパーに冷たく接し、彼を翻弄する。
「摩天楼」では冷たくしても、実際は彼女は彼が好きなのだけど、この映画ではどっちかというとクーパーの片思いで、そのクーパーにバコールが片思いしている、という設定。
クーパー演じる主人公は父親の復讐のためにタバコ産業でのしあがり、ニールの父に復讐するのだけど、その過程で彼の周囲の人たちをも裏切っていき、邪悪な人間になっていく。清廉潔白な役が多い彼にしては珍しい役柄だけど、「摩天楼」の彼も肯定的には描かれていたけれど、人物像としては似たところがあった。
結局、すべてを手に入れ、ニールも手に入れるが、今度は彼の方が復讐されることになる。
バコールもニールも、ウエメセでクーパーにきついことを言う女性を演じていて、昔のハリウッド映画って、こういう、ガンガンものを言う女性がけっこういたなあと思う。
普通だったら、最後にバコールと結ばれるのだが、この映画は(原作小説のせいかもしれないが)、すべてを失って去っていく主人公で終わる。
同じころの映画で、カーク・ダグラス、ドリス・デイ、ローレン・バコール主演の「情熱の狂想曲」という映画があって、ここではバコールが悪女というか、問題を抱えた女性で、主人公は最後にデイと結ばれるのだが、「燃えつきた欲望」はこういう定番ではないラストだった。「風と共に去りぬ」みたいに希望を残すようなところもない。
このゲーリー・クーパー主演映画10枚組、半分近くは大昔にテレビで見ていた。「燃えつきた欲望」以外だと、「真珠の首飾り」、「サラトガ本線」、「久遠の誓ひ」は見た記憶がある。
何かにとりつかれて邪悪になってしまう人物といえば、カーク・ダグラス主演、ビリー・ワイルダー監督の「地獄の英雄」があって、大昔にテレビで見たきりだけど、これもこのシリーズの別の10枚組に入っていて、ヘミングウェイの「持つと持たぬと」の映画化でパトリシア・ニール主演の「破局」も入っている。
「持つと持たぬと」はハンフリー・ボガートとローレン・バコールの初共演作「脱出」の原作でもあるけど(原題が「持つと持たぬと)、こちらは原作とは違う話になっていて、「破局」の方が原作に近いらしい。「脱出」は何度か見たけど、「破局」はまだなので、ぜひ見たいです。
注 「情熱の狂想曲」、「破局」もマイケル・カーティス監督。つか、3本とも1950年なんですが。職人だなあ。