2015年11月24日火曜日

真っ白な2か月間が終わり

そしてまた生活のにおいのする毎日が始まった。

9月下旬の連休初日、旅行鞄に必要なものと小型扇風機を入れて団地の管理事務所に向かい、そこで鍵を受け取って契約した部屋に入ってから2か月間。その間はまったく生活臭のない暮らしだった。
部屋に入るとまずガスの開栓。前日に宅急便で送っておいた段ボール箱2つを受け取り、買ったばかりのエアベッドと寝袋を取り出して、それからカーテンとシーツを買い、トイレットペーパーとティッシュペーパーを買い、100円ショップでこまごまとしたものを買いそろえて、団地生活が始まった。
9月下旬はまだ暑かったので、寝具はエアベッドと寝袋で十分だったが、だんだん涼しくなるにつれて毛布を買ったり、冬用パジャマを買ったりして、とにかく部屋も新しいし、物も新しい、そんな生活臭のない暮らしはまさにリゾート気分。
団地は建ってからすでに半世紀以上がすぎた古いものだが、室内はきれいにされていて、特に畳と風呂が新品だったのが気に入って借りたのだ。2DKを借りたのだけど、その前に見た1DK2部屋はどれも畳や風呂が新品でなかったので、ほとんどこれで契約してしまったようなもの。
これまではきれいにリフォームされたところに引っ越しても、自分の荷物を運びこむとそこはもう新品の部屋ではなくなってしまったし、それが当たり前だと思っていたけれど、ほとんどすべてが新品で、生活のにおいがしない真っ白な生活(壁や天井がきれいに塗られて真っ白)は初体験だった。
最初は団地と都心のアパートの二重生活を続けるつもりだったので、冷蔵庫や布団も新しい物を買おうと思っていたのだが、団地に住み始めてすぐに都心のアパートに帰るのが苦痛になってしまった。羽毛布団を買おうと思っていたのに、突然思い立って、アパートにあった古い羽毛布団を布団用バッグに詰め込み、それをかついで団地に帰ったときに、都心のアパートを引き払う決心がついた。
都心のアパートで悪臭がするようになったのは10月に入ってからだったが、1か月かそれ以上の間、悪臭のある部屋に荷物を置いていたので、荷物に悪臭がついてくるのではと心配した。引越の翌日はどこへ行っても悪臭が鼻から離れず、前のアパートで使っていた、一級遮光の真新しいカーテンを思い切って捨てた。洋服のカバーなども捨てた。実際は悪臭はそれほど移っておらず、自分の長年の生活臭の方が強いのだが、あのアパートの悪臭が悪夢のようにまとわりついていたのだ。今も時々、その悪臭が鼻についてくるときがある。(悪臭は大家の居室の方から臭っていたので、大家の飼い犬の排泄物ではないかと思うのだが、まさか隣に死体が、なんてことはないよね?)。

ハロウィーンが終わると、翌日から町はクリスマス商品があふれる。早速100円ショップでミニツリーとLEDライトを買ってキッチンに飾ったが、2DKだからクリスマスツリーを飾ろうと思い、近所のスーパーで高さ1メートルほどのツリーのセットを買う。まだ店頭に出たばかりで、誰も買ってなかったが、先日売場へ行ったらもう2つしか残ってなかったので、早く買ってよかった(たぶん一番乗り)。
まだ生活臭のない真っ白な部屋で電球をチカチカさせていたツリーは、今は運び込んだ荷物と同居している。レンタルスペースを借りて、そこに荷物を運びこめばよかった、と少し後悔(それはまたそれで不便なのだが)。
ステレオをセットしたので、音楽が聞けるようになったが、音楽がまた、その曲をよく聞いたときに住んでいた部屋を思い出させる(幸い、前のアパートではステレオを出していなかった)。そこでまた過去の生活臭がよみがえってしまう。
それと、荷物の中をいくら探しても見つからないコートがあるのだ。そのコートは北千住のイトーヨーカ堂(ご存じ、ヨーカ堂1号店)で1900円で買った安物で、見栄えは悪いが着やすいのでさんざん着たおして、もうヨレヨレになっていたのだけど、それでも二重生活をしていたときに団地に持って帰りたいと何度も思ったコートだった。11月くらいにはちょうどいい厚さのコートなのだ。
が、それがどうしても見つからない。今一番欲しい物が見つからない。もしかして段ボール箱が1つ行方不明なのだろうか、と思ったが、そのコート以外で見つからない物は今のところない。
今はない池袋のキンカ堂で買ったジャケットを捨てる時、このコートは残してジャケットを捨てよう(捨てるというかリサイクルに出す)と思ったことは覚えているが、コートを捨てたことは記憶にない(服はリサイクルに持っていくので、記憶に残るのだ)。
それで荷造りの記憶をたどっていくうちに、だんだん、コートを段ボール箱に入れたのかどうかもわからなくなってきた。今年の春に、このコートはもう限界だよね、と思ったことも思い出した。でも、捨てたという記憶もない。二重生活の時に、持って帰りたいと思っていたが、実際にコートを出してみたりはしなかった気がする。
まあ、あの引越し屋がいい加減で、段ボール箱1個行方不明、なんてことにだけはなってほしくない。生活のにおいがいやと言いながら、なぜ、あのヨレヨレのコートに執着していたのか不思議だ。

追記
コート、見つかりました。衣装箱の一番下にあった。
100円ショップで売っている洋服カバーに入れてハンガーラックにつるしてあったのを、ポリ袋に入れて衣装箱の一番下に入れたのだが、ポリ袋を開けたとたん、アパートの悪臭が。
大部分の衣類は物入れに入れてあったけど、ハンガーラックにつるしておいた服は1か月以上、アパートの悪臭にさらされていたのだ。幸い、すべて洋服カバーに入れてあったけれど。
ポリ袋と洋服カバーは即、ごみ袋へ。悪臭というのは引越してもついてくるので、悪臭のする部屋に長居をしてはいけないとわかった。