GW後半、5月3日は南から強い風が吹いて、団地の建物のどこかからバタンバタンと大きな音がするが、どこなのかわからない。屋上かな?
3日は外出先で、というより、帰りの電車でいやなことに2回も遭遇したので、ちょっと気分が悪かったのだが、よく考えてみたら、出かける前にこの記事を見て気分が悪かったのだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160503-00000001-withnews-sci
一見美談のように見えるのだが、よく読んでみるとまったく美談ではない。
最初は、心を病んだ人が絵を描くことで生きがいを見出したのかと思ったら、まったく逆で、絵に熱中していたら心を病んだのだという。
そのため、会社を休職して絵に専念、7月には東京で2週間の個展を開き、有料の講習会までやるという(後半はコメント欄に書かれていた)。
記事を読むと、絵を描いて心を病んだ→絵を職業にしたい、となっていて、なんだかよくわからない。ゴッホは絵を職業にはできなかった。
また、コメント欄にもいくつか指摘されているが、この人の絵は写真の輪郭をトレースして、その上に鉛筆で色を塗っていくやり方で、いわば塗り絵のようなものなのだ。確かに鉛筆のテクニックはあるのはわかるが、トレースせずに写真を見るだけで正確に絵が描けるかどうかはこの記事と関連サイトの映像ではわからない。もしも写真を見るだけでは描けないのなら、デッサン力はないことになる。
子供の頃、絵が得意だったというので、ある程度のデッサン力はあると思うが、子供の頃絵が得意だったが絵の世界に進むほどでなかった人というのは(私のことです)、往々にして、デッサン力が不足していて、ただ、色彩感覚が優れ、また、色塗りの技術が高い人だったりするのである。
だから、この人が写真の輪郭をトレースして、あとは写真どおりに鉛筆で色塗りしているだけなら、確かに色塗りは素晴らしいとしても、だからどうした、の世界なのである。
今、書店では大人の塗り絵の本がたくさん出ているが、それに素晴らしい色彩をつける人がいて、その人が塗り絵にはまって心の病にかかり、みたいな話に見えるのである。いや、塗り絵の方がまだ、色を選ぶのは塗る人だから、写真そっくりよりはまだ独創性がある。
また、これも多くの人が指摘していることだが、この絵を売りに出した場合、もとになった写真の著作権が問題になる。なので、個展では見せるだけで売らないと思うが、売らないでどうやって職業にするのだろうか?
もう一つ、疑問に思ったのは、自分の製作過程をビデオに撮って公開していることだ。ビデオ撮影のために照明を暗くするので目に影響が出たと書いてあるが、絵を描くのにビデオのために照明を暗くするとは本末転倒。というより、絵だけでなく製作過程をビデオに撮って公開するという自己顕示欲に疑問を感じるのだ。
確かに作家や翻訳家の中には自分の仕事の過程について語りたがる人がいるが、ビデオに撮ってまで公開ってどうよ、と思う。それも1つや2つじゃなく、いくつもあるのだ。そして、このビデオのせいで、写真をトレースして塗り絵していることがわかってしまったのである。
絵心がない人から見ると、写真どおりの絵が作れることにひたすら驚き、また、心の病のせいで美談のように受け取られているのだが、上にも書いたように、心の病の人が絵に生きがいを見出したのではなく、絵を描いて心の病にかかったのだから、それは美談じゃないだろうと思う。むしろ、この人にとって、絵を描くことはよいことなのかどうか。
テレビにも出演していて、顔や名前は出していないそうだが、個展では有料の講習会をするという。
描いている女優は恋愛禁止で有名な某アイドル会社のアイドルたちのようだから、このアイドル会社に所属して絵を描き、売るのであれば、もとの写真の著作権も、アイドルたちの肖像権もクリアできる。そういう方向でなら職業としてやっていけるだろう。
でもまあ、絵を愛する者としては、ああいう本質的には塗り絵でしかないもの、模倣でしかないものを芸術のように言ったりするのが(本人は言ってないと思いますが、まわりが)どうもいやなのだよね。
そういえば、勉強のために名作絵画を模写する画学生が、あまりにうまくできるので贋作を作るようになったという話があったよね。なんかそれに近い話なのだよ。コメント欄にもあったけど、元の写真家が作りだした陰影とか表情とかを模写してるだけなのだよね。
心の病だから批判しちゃいけない、というのであれば、こういうふうに派手にニュースにしてもいけないのだよ。