火曜日から水曜日にかけて猛烈な強風だったが、団地のバタンバタンという音の正体が昼間にわかった。下の階の2つ先の部屋のベランダの物置の扉がバタンバタンとぶつかっていたのだ。鉄筋コンクリートというのは本当に音の所在がわかりにくい。部屋にいるといろいろな方向から聞こえ、どこだかまるでわからなかった。強風は夜じゅう続いたので、バタンバタンという音であまりよく眠れなかった。そのせいか、おかしな夢を見た。そして昼ごろに起きたあと、かなりいやなことがあった。火曜日のいやな出来事、その夜の夢はこれの前触れだったのかもしれない。
それはともかく。
火曜日の帰りの電車で起こったいやなことの1つは、ボックス席で私の前に座った親子がものすごく変だったこと。乗り込んできたときから変な母子だと思ったが、母親がやたらハイになっていて、子供(幼い女の子)にテンションの高い声で話しかけまくっているのだ。次から次へと子供に話しかけ、それに対し、子供はまったく答えない。そのときはおかしいのは母親の方じゃないかと思ったのだが、それからしばらくすると、その女の子が私の足を蹴った。
子供が足をぶらぶらさせて前の人の足を蹴ってしまうというのはよくあるのだが、この女の子は明らかにわざと蹴っていた。しかも、母親が止めると、面白がってさらに私の足を蹴り続けた。
こりゃたまらんと思い、足の前にバッグをぶら下げて防ごうとしたら、女の子が「ごめんなさい」と言った(このとき初めて女の子が声を出した)。すると母親は「えらいわねえ」と女の子をほめちぎったので、私はうんざりして無表情でいたが、そのとき電車が駅に着き、母親は女の子の手をつかんで急いで電車を降りた。まだ目的地でなかったようだが、この展開だと女の子がやばくなると母親は思ったのだろうか。ホームに降りたあとの母子の様子も普通ではなかった。
こりゃ、母子両方ともおかしかったんだな、と思った。
そして水曜日、また同じ路線の電車に乗った。今度もまた親子連れ(両親と子供2人)が近くに来たが、まったく普通の親子だったので、なんだかとても安心した。
ここ十年くらい前から、引っ越すたびに近所に情緒不安定な子供がいて、文京区は子供の精神によくない町なのだろうかなどと思うこともあった。近くの小学校で父親が子供を道連れに焼身自殺という事件もあった。今の町に引っ越してからは子供はのびのび、家族が公園で遊ぶ姿もほほえましく、なんだかほっとすることが多かったが、文京区ではないけれど、都内の電車でちょっとおかしな母子に遭遇して、子供や親の世界のことはよくわからないけれど、いろいろあるのだろうなあ、と思ったのだった。