久々、近場のTOHOシネマズでキャスリン・ビグロー監督の「デトロイト」。
1967年、デトロイトで起こった黒人たちの暴動のさなかに、モーテルにいただけの丸腰の黒人青年3人が白人警官3人によって射殺された事件の映画化。
前半は記録映像をまじえながら事件のあらましを描き、後半はモーテルを舞台に緊迫したドラマが展開、そして最後は裁判シーンとなる。2時間半近くもあるので飽きるかと思ったが、まったく飽きることもなかったし、長く感じることもなかった。
アメリカでは現在でも丸腰の黒人が白人警官に射殺されるという事件が多く、しかも白人警官が罰せられない事態も起きている。つまり、50年前のこの事件は決して過去のものではないという訴えがじわじわと伝わる映画。
白人警官が丸腰の黒人を射殺した実話の映画化としては「フルートベール駅で」という映画があった。黒人差別の歴史を扱った「それでも夜は明ける」や「大統領の執事の涙」と同じ時期に公開されている。
「フルートベール駅で」は黒人男性監督の作品で、何の罪もない丸腰の黒人青年を射殺してしまう白人警官はまったく悪人ではない、ただの気の弱い男で、それゆえに恐怖にかられて銃を撃ってしまうというように描かれていた。
それに対し、白人女性監督の「デトロイト」では、黒人青年たちを射殺する3人の白人警官の中心人物はネオナチっぽい雰囲気の狂気の男に描かれている。他の2人はわりと普通の人に見えるが、この中心人物の狂気に取り込まれて黒人を射殺してしまうという感じだ。
この狂気の白人警官はモーテルの事件の前にも黒人を射殺している。店から商品を盗んで逃げる黒人を後ろから撃ち殺したとして上司から叱責される。しかし、白人警官は自分がやったことは当然だと思っているようだ。「フルートベール駅で」の白人警官と違い、恐怖から黒人を殺すわけではないのだ。
その一方で、警官たちが暴動に対して恐怖を感じていて、銃声を聞いてパニックになり、モーテルに突入、という感じもある。
しかし、モーテルに突入してからの白人警官の態度はやはり異常で、その場に居合わせた州警察の面々もデトロイトの警官たちは異常だと感じるが、巻き添えを食いたくないと言って帰ってしまう。
モーテルにいたのは数人の黒人青年と2人の若い白人女性で、黒人だけでなく白人女性たちも暴力をふるわれる。このあたり、やはり女性監督ならではと感じるのは、白人警官たちの黒人蔑視と女性蔑視がぴったりと重なっているところだ。若い白人警官は白人の女が黒人と楽しんでいるのが気に入らない。黒人の中には退役したばかりのベトナム戦争の英雄もいるが、白人警官はそれは嘘だと決めつける。白人女性は売春婦と決めつけられ、一緒にいた黒人はヒモだと決めつけられる。女性と非白人に対する蔑視が根底にあり、この2つを重ねて描いたところがこの映画の秀逸なところだ。
ひとつ気になるのは、中心となる白人警官の狂気があまりにも突き抜けているので、これはこの人物の異常性だけが問題なのだと思ってしまう危険性があるということだ。
暴動の背景にある黒人たちの不満と怒り、黒人に対してひどい態度をとり続ける白人警官の問題も描かれてはいるのだが、1人の狂気の人物が突出していると、現在でも頻繁に起こっている白人警官の黒人射殺の問題につながっていかない恐れがある。そこがこの映画のちょっと弱いところだ。
結局裁判では白人警官たちは無罪になってしまい、救いのない結末になっているのだけれど(民事では黒人の遺族が勝訴しているようだ)、神への祈りの歌を歌う職業を選んだ黒人青年の祈りに希望が託されているようなエンディングになっている。
モーテルにいた黒人青年も白人女性も、そして暴力をふるった白人警官もみな若い。年長の人物たち(州警察や州兵)は彼らの暴力を見ているだけで何もしない。大人の責任のことを暗に言っているのかもしれない。
一昨年からシネコンで映画をよく見るようになり、MOVIXもTOHOシネマズもよく行くのに6回見たら1回タダのカードを作っていなかった。
去年なんか「君の名は。」を何度も見に行ったこともあり、TOHOは3回くらいタダで見られるくらい見ていたし、MOVIXも2回くらいタダで見られるくらい見に行った。でも、シニア料金でいつも安いし、カード作るのめんどくさいし、と思ってカード作らなかったのだが、日劇ラストショウに3回も行くのにカードないのは損、と思って、ついにカード作った。ネットで登録して「デトロイト」のチケットを発券する前にカードをもらい、そのあと発券して、これでマイルがつきました。日劇3本と合わせて4回だから、あと2回でタダになるのだけど、「デトロイト」を上映しているシネコンは「スリービルボード」や「シェイプ・オブ・ウォーター」など、公開館が少ない映画をよく上映するので、マイルも回数もたまります。MOVIXの方はあまりあちこち行かないからなあ。MOVIXはカード代が安いので、持っていてもいいのだけど。