近隣でやってないので埼玉県まで見に行った「チタン」。埼玉県はコロナ時代になってから一度も行ってなかったので、2年以上ぶり。
浦和美園駅。そういやこういう条例できたのだった。まあ普通に歩いてる人はいました。
イオンの中も。
「チタン」イオンシネマの入口は殺風景。
で、「チタン」ですが、まさかの父ものだった! 批評とか全然読んでなくて内容もあまり知らないようにして出かけたのだけど、びっくり。
冒頭、主人公のアレクシアがまだ幼い頃、父親の運転する車に乗っていて、後部座席から父親がいやがるような声を出していて、父親がイライラ、ついにはアレクシアがシートベルトをはずしてしまい、それが原因で事故。アレクシアは頭蓋骨にチタンを埋めるはめになる。
これは実は後半の伏線。
成長したアレクシアは車の展示会でセクシーな踊りを披露。しつこく言い寄ってきた男を一発で殺し、その後も仲良くなったレズビアンの女性を殺し、その場にいた人たちも殺す。
その殺し方が実に手際がよくて、人間の急所を知っている手口で、殺し屋で食っていけそうなくらい。
アレクシアは車とセックスして妊娠してしまう。おなかがどんどん出てくる。そのことへの嫌悪感、あるいは、後半、バスでどこかへ行こうとしたときに女性に関する卑猥なことを言って騒ぐ連中を見て耐えきれず、バスから降りるシーンがあるので、アレクシアは女性を性的に扱う男が嫌いで、なおかつ、妊娠のような自分の体の女性性を嫌う人物なのかと思ったし、実際、そういう側面はある。が、映画の中心はここではなかった。
自分が指名手配されていると知ったアレクシアは布で体をぐるぐる巻きにし、顔を変え、髪を短くして男装し、行方不明になった青年のふりをする。青年の父親が現れ、息子だと言って彼女を引き取る。父親の息子への無償の愛を受けて、アレクシアは次第に変化し、倒れている父親を心配して「パパ、起きて」とまで言うようになる。
アレクシアは性同一性障害ではなさそうで、ただ、女性を性的に扱う男たちや妊娠してしまう女の体に嫌悪感を抱いているのだろう、と思ったので、男性のふりをし、さらに父親の愛を得て変化したのだろう、と思った。
父親は別れた妻を呼んで息子のふりをする彼女に会わせるが、妻は彼女の裸を見て真実を知る。しかし、自分も妊娠出産がいやだった、息子がいなくなっても悲しくなかった、と言う。妊娠出産する女の体がいやだという、自分と同じ感覚の女性に出会えたのだ。
しかし、アレクシアは完全に女の体がいやだというわけではなく、車の上でセクシーに踊っていたときのような女の体は好きなようだ。結末近くで彼女は消防士たちの前でセクシーに踊る。
父親もやがてアレクシアの正体に気づくが、それでも彼女への愛は変わらない。彼女を息子だとまだ信じていたときのことだが、彼女の正体に気づいた部下の消防士を殺害するようなことまでする。
この父親の無償の愛、性的なところのまったくない愛は、クライマックスの出産シーンでさらに強くなる。
アレクシアが求めていたのはこの、父の無償の愛だったのだ。冒頭、幼い彼女が父親のいやがることをするのは、自分を愛さない父への反抗だったのだ。
車とのセックスだから生まれるのは車かと思ったが、人間の赤ん坊だった。父親はこの子にも無償の愛を注ぐだろう。