ポール・ニューマン特集4本のうち、「熱いトタン屋根の猫」と「明日に向って撃て!」は映画館で見ていたので、この2本はパスでもいいかな、と思っていたら、なんと、MOVIX柏の葉では初日のみ、この2本を最大箱で上映。
映画館のこの手の意欲には応えなければいけないので、金曜日の初日はこの2本をハシゴ。が、473席の大きなシアター、どちらの映画も観客数は5人。うち、ハシゴは私ともう1人。残りの3人は「熱いトタン屋根の猫」は比較的若めの男女、「明日に向って撃て!」はシニア男性ばかり。全員、おひとり様で、広い場内にばらばらに座っていました。
もったいないなあ。大きなスクリーンに映る美しい映像(古さを感じない美しさだった)、そして、MOVIXならではのすばらしい音響。どちらの映画も訛りのない英語で、とても聞き取りやすい。「熱いトタン屋根の猫」のけだるい音楽、「明日に向って撃て!」の銃撃音の迫力。せっかく映画館が大きな箱を用意してくれたのに、ほんともったいない。次の「ハスラー」と「暴力脱獄」は大きいスクリーンでは見られないかも。
「熱いトタン屋根の猫」はテレビで1回、映画館で1回見ただけだと思うが、メインタイトルからもう、なつかしさ全開で、どのシーンもよく覚えていた。最近の解説では同性愛を描いた映画という記述が目についたが、それは違う。原作の舞台劇では同性愛なのだが、映画化では同性愛ではなくなっている。ニューマン演じるブリックが妻の白いドレスにほおずりするシーンがあって、彼はほんとうは妻を愛していることを示している。自殺した親友との関係は同性愛というよりはホモソーシャルな友情として描かれている。この映画が作られた50年代はまだ同性愛を描くのは無理だったのだ。また、ブリックが妻とよりを戻すラストは、テネシー・ウィリアムズの戯曲を舞台化するときに、原作者の意図に反してハッピーエンドにされてしまったものをそのまま映画化している。でも、映画ではブリックは同性愛でなく、ほんとうは妻を愛しているから、ベッドに1つしかなかった枕の隣にもう1つの枕を投げるラストがとても効いている。
この映画で特に好きなのはブリックと父親の関係で、偽りの人生を生きている父親に対する反発、そして、クライマックスでの父との和解の方が、彼と妻の関係よりも心に残っている。ブリックには「エデンの東」でジェームズ・ディーンが演じたキャルと通じるところがある。
「明日に向って撃て!」はキネ旬の特集に書くために図書館でDVDを借りて見たばかりだったが、DVDが古いものなので映像があまりよくない上、自宅の小さいモニターだと暗いところがよく見えなかったりしたが、やはり映画館のスクリーンで見ると音も映像もすばらしい。前半、追手に追われ続ける長いシークエンスでは音楽がまったくなく、後半、ボリビアの騎馬警官隊に追われるときはスキャットの曲が流れ続ける。この対比が面白い。私はこのボリビアの騎馬警官隊に追われるシークエンスが前から好きだった。
2022年に、大きなスクリーンとよい音響で、「熱いトタン屋根の猫」と「明日に向って撃て!」が再見できるとは、生きていてよかったとつくづく思う。ニューマンに加えて、エリザベス・テイラーやレッドフォードやキャサリン・ロスの演技も楽しめる。どちらも音楽がよい。映像もデジタル化されてくっきりきれいになっている。
MOVIX柏の葉はロビーに紹介コーナーも設けているし、フードコートにも看板を出していて、力が入っているのだが、お客さんが少ないのが残念。土日は入ってくれるといいのだが。
入場者プレゼントのポストカードをもらった。
来年は「ヴィデオドローム」をリバイバルするらしい。80年代にレーザーディスクで何度も見て、映画館にも出かけた映画。ビデオスルーのあとに映画館で初公開されたのだったと思う。