2022年10月29日土曜日

「暴力脱獄」&「アムステルダム」&「ハスラー」

 ポール・ニューマン特集の「暴力脱獄」と「ハスラー」が金曜日から公開。


そしてオールスター共演の新作「アムステルダム」も公開。が、MOVIX柏の葉だと「暴力脱獄」と「ハスラー」の間に「アムステルダム」を見ることに。

3本とも2時間超えなのでハシゴは疲れそうだったけど、間が2回とも50分くらいあいていたので、わりと余裕を持って見られた。


「暴力脱獄」は年をとってからDVDで1度見ただけだったので、わりと忘れていたシーンが多かったけれど、最後、ジョージ・ケネディが「ルーク、おまえはいつも笑っていたな」と言い、ポール・ニューマンの笑顔が次々と出てくるところで泣いてしまった。

キネ旬の特集で、ラスト、十字にまじわる道が十字架を表していて、ルークはキリストだという指摘があったが、途中のゆでタマゴ50個食べたあと、テーブルに横たわるシーンが磔にされたキリストにそっくりだった。

ルークは悪いことをしていないのに懲罰房に入れられて、それから脱獄を初めてする。それまでは脱獄は考えておらず、看守に逆らうこともあまりなくて、このまま行けば普通に刑期を終えそうだったのに、母親が死んで脱獄するかもしれないと懲罰房に入れられたのが反骨精神に火をつけた格好だ。

黒いサングラスをかけた男が死神か悪魔のようで、ルークが神に、なぜ、と訴えるシーンもあり、悪魔と神とキリストという宗教的なメタファーが全体に感じられる。

1本目が終わったあと、屋上で軽い昼食。1階のスーパーで買ったのを屋上で食べた。天気がよくて、子どもたちが遊んでいた。





2本目はデイヴィッド・O・ラッセル監督の新作「アムステルダム」。初めてタイトル聞いたときは、イアン・マキューアンのブッカー賞受賞作の映画化かと思ったが、違っていた。


第一次世界大戦で知り合った3人の男女が、1933年に殺人事件に巻き込まれる、というところから始まり、復員兵を利用してアメリカをナチス化しようとする陰謀が明るみに、という話。1933年というのは、ナチスがドイツの政権をとった頃だが、アメリカはナチス以前から優生思想が盛んで、その延長でアメリカのナチス化をねらう人々がいたようだ。ロバート・デ・ニーロ演じる将軍には実在のモデルがいて、同じ演説をしている様子がラストに出てくる。

で、先週金曜日はポール・ニューマン特集の「熱いトタン屋根の猫」と「明日に向って撃て!」がこのシネコンの最大箱で1回ずつ上映されたのだけど、今週の金曜はこの「アムステルダム」が最大箱(字幕2回、吹替2回)。で、私が見た字幕2回目の客はなんと、4人! 先週のニューマン特集だって、それぞれ5人いたというのに。大丈夫か、この映画、って、全然大丈夫じゃなさそうなんだけど。というのも、本国アメリカでものすごい酷評なのだ。

しかし、この映画を挟んで見た2本のニューマンの映画、どちらも非常にオーソドックスな作りでわかりやすく、よいテンポで飽きさせない名作だったが、間に見たこの「アムステルダム」は奇をてらった映像と構成で、テンポが悪く、わかりづらい。これではせっかくのテーマが生きないのではないか。

そして、またまた1階のスーパーで売っていた2割引きのお弁当で軽い夕食を食べたあと、いよいよ一番の本命「ハスラー」。


ポール・ニューマンの映画では一番好きなのだけど、これまで映画館で見ていなかった。中学生のときに日曜洋画劇場で初めて見て、その後、1980年代にレーザーディスクを買って何度か見た。こちらはよく覚えていた。

クライマックスのミネソタ・ファッツ(ジャッキー・グリーソン)との対決シーン。エディ(ニューマン)は表向きはファッツと戦っているが、実際はバート(ジョージ・C・スコット)と戦っているのだ。ファッツに勝ったあと、分け前を要求するバートとの対決で、エディは毅然とした態度をとる。バートは「大手の店ではプレーできないようにしてやる」などと息巻いているが、その前に分け前を50%にするとか30%にするとかダンピングしていて、もはや彼の負けは明らかだ。それに対し、死んだ恋人(パイパー・ローリー)への思いを語るエディは人間として成長している。

エディが去り、エンドクレジットの間にファッツも去り、エンドクレジットの文字が消えたあと、場面中央にはバートだけがいる。人望を失ったバートが敗北者(ルーザー)になっていることを示すラストシーンだ。

エディと恋人サラ、そしてバートの関係は、ファウストとマルガレーテ、そしてメフィストフェレスに似ている。バートは死神であり、悪魔だ。そして、無言でことのなりゆきを見つめているファッツは、神のような存在なのかもしれない。

「暴力脱獄」も「ハスラー」も、キリストやファウストのようなメタファーが全体を貫いていることに気づいた。こうしたメタファーによる神話性はいかにもアメリカの物語らしい。この2本、もう一度見たい、できればもっと大きなスクリーンで、と思ったが、大きなスクリーンでやってるところはないのかな。先週の最大箱はやっぱりよかった。

そして、入場者プレゼントのポストカード。


どちらも私が最初に入ったので、最初の1枚だった。「暴力脱獄」はお客さん2人、「ハスラー」は3人と、かなり寂しい。でもまあ、新作の「アムステルダム」が4人だし、このシネコンで平日だとこんなものなのかも。