ネトフリ映画「マエストロ その音楽と愛と」。「ター」の主人公が尊敬していたレナード・バーンスタインの伝記映画。
出だし、晩年のバーンスタインのカラーのシーンのあと、映像はモノクロになり、カーテンを閉めた暗い寝室でバーンスタインが電話を受けていて、カーテンを開けるとベッドには男の恋人が、というなかなか印象的なシーンから始まり、妻になる女優フェリシアと出会い、ミュージカルの作曲をし、妻との間に娘や息子が生まれ、というモノクロの前半は、古臭いかなと思いつつもそれなりに凝ったシーンがある。フェリシアに「踊る大紐育」の話をするシーンが、ミュージカルの水兵たちのシーンになり、彼らもその中に入っていくとか、古いんだけど、まあそれなりに楽しいシーンもあるのだが、いまいちパッとしない。
そのモノクロの前半の最後、まだ幼い娘が走っていき、そこからカラーの後半に変わると、娘は年頃になっていて、すでに10年かそれ以上がたっていることがわかる。
後半のバーンスタインはすでに指揮者として名をなしているが、男性との関係も続けているので、妻が苦悩している。妻を演じるキャリー・マリガンの演技はみごとで、クレジットも監督・脚本・主演のブラッドリー・クーパーよりも彼女の名前の方が先に出るので、彼女の苦悩がドラマの中心のはずなんだろう。が、どうもそう見えない。
そんなわけで、男性との関係を続けながらも妻を必要としている夫と、それに苦悩する妻、というのがどうもあまりうまく描けていない。「ナポレオン」よりは人間を描こうとしているけれど、「ナポレオン」よりはマシって程度。2作とも、並外れた才能を持つ男とその妻を描いているのだけど、どっちもダメダメな描き方なのはなんなのか?
バーンスタインに詳しい人はクーパーがそっくりと思うみたいだが、私にはバーンスタインを演じる彼は「アリー スター誕生」の彼とまったく同じ人物にしか見えなかった。演技が同じような感じだし、妻を苦しめる夫というのも同じだし、彼の演じるバーンスタインは音楽家としての面はほとんど描かれていないに等しい。だからクライマックスと思われる教会の指揮シーンが全体の流れの中でまったく生きていない(妻との和解のシーンなのだが、それも機能してない)。
アメリカではクーパーの「アリー スター誕生」がやたらと高く評価され、「ボヘミアン・ラプソディ」が過小評価された時期があったが、私から見ると「アリー」は古めかしい内容で、どうしてあんなに評判いいのか理解できなかった。その後、風向きが変わり、ゴールデン・グローブ賞、アカデミー賞では「ボヘミアン」が「アリー」を押さえてよい賞を取ったが、この「マエストロ」も内容も手法も古いし、クーパーの演技は同じタイプだし、それほどでもないのにアメリカでは高い評価と私には見えてしまう。
この映画で次々と若い男性に手を出すバーンスタインが、「ター」の女性指揮者に似て見えるのだが、おそらく「ター」の主人公のモデルの1人がバーンスタインだったのだろう。「ター」の女性指揮者は批判的に描かれたが、バーンスタインに対してはそういう描き方はまあ無理なので、その辺も映画が手ぬるくなっている原因なのだろう。
のっけからクラシックが鳴りまくりの映画で、音響のいい映画館で見ればよかったと後悔したけれど、クラシック鳴りまくりというのも芸がないというか、この辺の音楽の使い方も疑問だった。
製作にスピルバーグやスコセッシがいるけど、この2人のどちらかが監督した方がよかったに違いない。ていうか、最初スピルバーグが監督する予定だったのに、クーパーに譲ったというのだが、これはむずかしい題材だと思って逃げたんじゃないだろうか? しかし、スピルバーグって、配信批判してたのにネトフリ映画の製作とはね。
あと、「ナポレオン」をクソミソにけなしたけど、なんだかんだ言っても、「ナポレオン」は腐っても映画館で見るように作られた映画だと思った。見た直後はいろいろ不満があった「ター」も、「マエストロ」見たら「ター」の評価が爆上がり。他の映画のよさに気づかされる映画なのか、「マエストロ」?
映画館にあったクリスマスツリー。そして、ドンキの入口の小さなアクアリウム。
晩御飯どうしようかな、と思っていたら、かつやが年末恒例の4種類のメニューどれでも550円だったので、カツカレーを食べる。去年は税込み550円だったような気がしていたけど、調べてみたら去年も今年も税抜き550円でした。