2026年3月13日金曜日

「マーティ・シュプリーム 世界をつかめ」

 アカデミー賞にも多数ノミネートされているティモシー・シャラメ主演の「マーティ・シュプリーム 世界をつかめ」。


なんかもう、クソみたいな世界のクソみたいなアメリカ人がいろいろ悪さをしまくっているのだが、そのどれもが裏目に出て、誰も何も得してない。その話がえんえんと2時間半の大部分続く。いつ終わるんだよう、とにかく長い。もう少し短くできなかったのか?

モデルとなる卓球選手は実在するけれど、映画は完全なフィクションのようだ。参考記事はこちら。

どこまで実話?『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』の設定を深掘り

とにかく出てくる人物がクソばかり。太った醜いアメリカ白人男性が次々と登場するわ、やせた主人公もクソだわ、その不倫相手2人もクソだわ、主要キャラでクソじゃないのは戦争中ユダヤ人強制収容所に入れられていた元卓球チャンピオンだけど、彼はアメリカ人じゃない。

時は1952年、卓球ハスラーの主人公マーティはアメリカ代表でロンドンの卓球選手権に出場するが、決勝で日本人の遠藤にぼろ負け。それで東京での選手権に出場してリベンジしたいと思うのだが、アメリカって、卓球の代表には旅費も出さないのだね(フィクションかもしらんが)。それでマーティは金庫から金を盗んだり、その他いろいろ犯罪的なことを次々とやっていくのだが、どれも成功しない。

その間、主人公が卓球の賭けをするシーンはあるが、ぼろ負けした相手に勝つために練習したりするシーンはまったくない。主人公含め、クズとしかいいようのないアメリカの貧乏白人たちがクソみたいなことを繰り返し、そのたびに失敗するという話がえんえんと続く。

1952年の話だけど、アメリカって、戦争に勝ったんだよね? なんだか負けたみたいな世界。

この映画のテーマについては、監督が語っている。この4ページ目からが興味深い。

映画「マーティ・シュプリーム 世界をつかめ」ジョシュ・サフディ監督が語る制作背景——ティモシー・シャラメ、ファッション、OPNの音楽、日本での撮影(WWDJAPAN.com) - Yahoo!ニュース

監督の解説を読むと、なるほど、と思う面もあるが、映画そのものについては納得しがたい部分もある。

以下ネタバレ。


結局、マーティは日本で商売したいアメリカの実業家の企画する八百長試合に出ることを承諾し、選手権が開催される日本へ行く。が、選手権に出られないとわかった彼は、いきなり本気出して真剣勝負をして遠藤に勝つのだが、それまで全然卓球で精進してないのに、なんでいきなりここで勝てちゃうわけ? モデルになった選手は実際に日本でチャンピオンに勝ったそうだけど、モデルの人はちゃんと精進したんとちゃう?

卓球のスポコン映画じゃない、というのはわかるんだが、あのクソみたいなことをえんえんとやっては失敗して、最後に突然、日本で真剣になって勝利、そのあとアメリカに帰って子どもが生まれたのを喜んで、と急にヒーローになっちゃって、なんだかまるでやられ放題のあと勝つプロレスみたいな話じゃん。最後の勝利と子どもの誕生で、それまでのクソみたいなことが全部チャラになる感じがしてならないのだ。これを主人公の成長とか呼ぶのか?

1980年代の音楽が使われているのは、80年代のマーティが過去を振り返るという設定があるらしい。80年代といえば日本がバブルの最盛期、ジャパン・アズ・ナンバーワンだった時代で、その時代には強いのは日本、弱いのはアメリカだったから、アメリカ人が日本人に卓球で勝つのは意味があったんだろう。1952年は、アメリカが戦争の泥沼に突入していく時代で、日本は明るい未来がある時代だったんだろう。でも、現在は日本はどん底、アメリカが一応、まだ強い。まあ、アメリカもメイク・アメリカ・グレイト・アゲインとか言ってるから斜陽なだろうけど。そして今起きている戦争のことも考えると、なんだかなあ。

「しあわせな選択」の原作「斧」を図書館から借りて読んでいるのだけど、こっちも相当にクソな話だが、「マーティ・シュプリーム」に比べたらまだましな気がしてしまう。


クライマックスの卓球シーンは上野公園で撮影し、日本人役には本物の日本人を起用したとのことで、そこに監督のこだわりがあるようで、そこは興味深い。