「テイク・ディス・ワルツ」で、主人公たちが30年後に会おうと約束したのはカナダのノバスコシア州の灯台のようなのですが、最初、ウィキペディアに写真のあったペギーズ・コーヴにある灯台かと思って、写真をよく見たら、どうも違います。んなわけで、またまた訂正。
ノバスコシア州とルイスバーグ要塞については日本語のページもあるので、興味ある方は検索してください。当然ながら、英語版の方が詳しいです。ノバスコシア出身のNHL選手にはシドニー・クロズビーほか多数の名選手が(って、カナダならどこもそうかもしらんが)。
ノバスコシアはカナダの大西洋岸にあり、かつてはイギリスとフランスの植民地争いの舞台にもなった地。ノバスコシアとはニュースコットラントという意味で、イギリスが占領していたのですが、それに対し、フランスの植民地を守るために作られたのが映画の冒頭に登場するルイスバーグ要塞。仏語読みはルイブールで、映画でも現地ではそう発音されていました。公開鞭打ち刑のショーをする古い時代の衣装を着た人たちもフランス語を話していました。
カナダ映画には英語のものとフランス語のものがあって、フランス語の方はフランス語圏のケベック州で作られ、アカデミー賞の外国語映画賞によくノミネートされたり受賞したりするのはご存知のとおり。近年では「みなさん、さようなら。」(受賞)や「灼熱の魂」(ノミネート)といった傑作があります。
一方、トロントを中心とする英語映画は、デイヴィッド・クローネンバーグやアトム・エゴヤンが有名。そして、「テイク・ディス・ワルツ」の監督で、トロント出身、しかもエゴヤンの「スウィート・ヒアアフター」のヒロインだったサラ・ポーリーも、彼らのあとに続くトロントの監督となります。
ヒロインのマーゴは2つに引き裂かれているとか、どっちつかずとかいった表現で描かれていますが、カナダはある意味、英語とフランス語、イギリス系とフランス系に引き裂かれた国です。だから、フランス圏を守るために作られたノバスコシアのルイスバーグ要塞に行くのは、それを表しているとも言えます。
ホッケー・ファンになると、どうしてもカナダに興味を持つようになります。なかでも、トロント・メイプルリーフスの本拠地のオンタリオ州トロントは、私が応援するセイバーズの本拠地、ニューヨーク州バッファローに近く、バッファローの人は観劇などはトロントへ行くとか、逆にオンタリオ州南部の人がセイバーズのファンで、バッファローまで観戦に来るとか、そういった親しみもあります。
そんなわけで、この映画でも、風景の中にトロントを見つけることがあって、なかなか興味深い。マーゴはトロントの郊外に住んでいるのですが、彼女やダニエルが行く湖はもちろん、オンタリオ湖です。広いので、対岸が見えず、海と勘違いする人もいるかもしれません。湖の対岸はアメリカ、ニューヨーク州です(バッファローはオンタリオ湖からナイアガラの滝のそばを通って南下したところで、すぐそばの湖はエリー湖。「ブルース・オールマイティ」に出てくる湖はエリー湖です)。
また、ヒロインがいる場所のずっと遠くに、トロントの中心街にあるタワーが見えていたりします。このタワーはクローネンバーグの「ヴィデオドローム」にも登場しました。
ダニエルは人力車で稼いでいる、という設定ですが、映画の中ではリキシャと呼ばれていて、これは日本語由来ですね。西洋には人力車はないのか? 日本でも台東区のあたりは人力車が観光に使われてますが、カナダのトロントにあるとは。
カナダといえばホッケー、ということで、サラ・ポーリー監督もホッケーゆかりの映画人です。前作「アウェイ・フロム・ハー」では、主人公たちが語り合うシーンの背後で、ラジオのホッケー中継が流れていましたが、あれがトロント・メイプルリーフスの試合で、実況しているのは有名なアナウンサーでした。
実はポーリーのおじは、バッファロー・セイバーズの初代実況アナだったのだそうです。現在のリック・ジャネレット(彼もカナダ人)は2代目です。
「テイク・ディス・ワルツ」の中のルーのせりふで、「ホッケーで負傷してタマをとらなければならなくなった男」のことが語られますが、字幕では「事故で」と短縮されてました。でも、せりふを聞いていると、確かにホッケーと言ってます。ホッケー選手(男子)は大事な部分にカップをつけることになっているのですが、時々、めんどくさがってつけない人がいるとか…。「がんばれ、ベアース」でも、男の子たちがつけるのをいやがっていましたが、ホッケーのパックは野球のボールより危険です。
下の紹介ではストーリーがおもになってしまいましたが、ストーリーでは語れない部分もたくさんあるということで、映画の中のカナダと、そしてホッケーのことを少し紹介しました。