2024年2月2日金曜日

「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」(ネタバレあり)

 マイウェンが監督主演、ジョニー・デップが全編フランス語でルイ15世を演じる「ジャンヌ・デュ・バリー」。デップはせりふは少ないが、表情で魅せるシーンもある。


昨日一昨日と、高いつくばエクスプレスで映画を見に行ったので、交通費がばかにならなかったが、今回は行きも帰りも徒歩で、交通費節約(かなり歩いた)。ここは「DUNE」パート2イチオシのよう。


ジャンヌ・デュ・バリーといえば、「ベルばら」で知った人が多いと思うけど、私もそう。「ベルばら」ではマリー・アントワネットの視点なので、ジャンヌは悪女になっていたが、映画はだいぶ違う。

演じるマイウェンがあまり美人でなく、わりと普通のおばさんみたいで色気もあまりなく、どうしてルイ15世と恋に落ちたのか、いまひとつリアリティがないのだが、途中、公妾になったあたりからゴージャスな衣装やメイクになって、公妾としてのリアリティは出てくる。

ただ、この映画では彼女は貧しい身分から成りあがるピカレスクの主人公ではなく、貧しい身分だけど幼いころから教養を身につける環境にいて、いつのまにか高級娼婦になり、まわりの男たちが彼女をルイ15世の愛人にしていく。

つまり、ジャンヌが手練手管を使ってのしあがっていく感じではまったくなくて、そういう環境にいたのでそうなった、みたいな感じで描かれているのだ。

だから彼女は悪女ではないし、ルイ15世とは相思相愛だし、それが気に食わない娘たちが王太子妃マリー・アントワネットを利用して彼女を貶めようとするけれど、娘たちも一枚岩ではなく、また、ルイ15世の孫である王太子(のちのルイ16世)に至っては、彼女を助けるよい人。

うーん、「ベルばら」とはだいぶ違う。

普通だったらピカレスクの悪女にしてしまうところを、貧しい生まれの普通の女性がまわりの環境と運命でこうなった、みたいな感じにしているところが今ふうかもしれない。

映画化するにあたって史実をいろいろ変えるのが普通だから、映画の内容をそのまま信じるわけにはいかないけれど、ルイ15世の死後、ヴェルサイユを追われたジャンヌのその後がナレーションで語られるが、それによると、フランス革命のとき、ジャンヌはマリー・アントワネットの側につき、そして断頭台の露と消えたらしい。貧しい生まれだが、彼女は出身階級を裏切って貴族になることを選んだのであり、当時は誰もが選ばなければならなかった、とナレーターは語る(ジャンヌがかわいがった黒人の小姓は革命側につき、ジャンヌを非難したとか)。

その場その場の環境で選んだ末の人生だった、と映画は言いたいのだろう。

映画は演出が平板で、あまりうまくないが、題材に興味がある人にはいろいろと楽しめる。「ベルばら」の時代、ヴェルサイユ宮殿には実際に男装の女性がいたようだが、最初に男装したのはジャンヌで、それを宮廷の女性たちがまねたのだそうだ。また、王の愛人になるには貴族の妻でなければならないとか、へえ、ほう、と思った。