なんか最近、老後おひとりさま節約生活の本が人気があるみたいだな、と感じていた。
特にUR賃貸は高齢者でも一定以上の収入か貯金があれば借りられるので人気のようだ。私もそれをねらって今の団地に移り住んだ。時々、勘違いしている人がいるが、UR賃貸(旧・公団住宅)は収入の低い人の入る公営住宅とは違い、一定以上の収入か貯金がないと入れない。郊外の古い団地の中には家賃が安いところもあるが、月5万円の家賃の部屋だとその4倍、20万円の月収=年収240万円ないと入れない。最賃の非正規にはけっこうきびしいのではないだろうか。私も年収が減る前に入ったからよかったが、今では無理。
それはともかく、アマゾンで「古い団地で」で検索すると、けっこう本が出てくるのですね。しかもよく売れているらしい。
左上の本はYouTubeで人気の出た高齢者の本で、ベストセラーになっている。あるブログでこの本が紹介されていて、そのブロガーの住む町の図書館だと、出てから2年たつというのにいまだに予約が100人以上だという。
す、すごい、と思い、うちの自治体の図書館で検索したら、すぐ借りられた。
え?
不思議に思ったので(それに暇なので)、カーリルで都内の図書館の状況を調べてみたら、予約が100人以上なんてその自治体だけだった。他は、うちと同じくすぐ借りられるか、予約が多くてもせいぜい30人くらい。自治体によって所有している本の数が違うので、30人のところは本の数が少ないのだが、その予約100人以上の自治体は本の数も多い(うちと同じくらい)。
その自治体は古い団地が多いので、団地おひとりさまの高齢者が多いのだろう、とは予想がついた。
本自体は、私には特に興味を持てないものだった。この手の本は料理とかインテリアとかが中心で、お金をかけずに料理やインテリアを楽しむ趣向のものが多く、そういうのに興味のない私には縁がないのだ。
この本の著者は50年以上前から今の団地に住んでいるというので、家賃が50年前からあまり上がっていないはずである。そして、夫に先立たれて今は一人、子どももいる。本を出す時点で貯金もかなりあるみたいだし、別居している子どもたちとの関係もよい。その上本がベストセラーでさらに貯金が増えただろうから、お金はたっぷりあるけど節約生活をYouTubeや著書で売っていくわけである(それが好きな生活なのだからけっこうなことであるが)。
そして、この方、90歳近いのに健康で健脚のよう。これ重要。
つまり、
家賃が超安い。
貯金が十分ある。
子どもたちとの関係はよい。
健康。
実は老後おひとりさま節約生活の本って、よく見ると、この条件をそろえた人の本が多いみたいなのだ(現物見たのは上の本1冊だけですが)。
家賃が超安い、または持ち家。
お金はある程度以上ある。
もともとおひとりさまではなく、夫がいたし、子どももいる。
母の介護をしながら、とか、夫と離婚して、とか、バリバリ働いて、という人もいて、そういう人の本も売れてるみたいだけど、人気があるのは上のような人の本みたい。
ほんとに節約しないと生きていけない人は、こういう本1冊に1500円も払うはずがない。だから古い団地の多い自治体で予約がいまだに100人以上、というのは納得できた。でも、ほんとに節約しないと生きていけない人の参考にはならないだろうと思う。そこそこ節約したい人だと図書館で借りて、楽しめて、しかも節約できたので、満足できるかもしれない。
ベストセラーだからもちろん、買う人も多いのである。もともと著者のファンという人も多いだろうけど、こういう本にお金を出して読んで満足したと思う人は、今はお金に困っていなくて、これから困るかもしれないから節約しないといけないなあと思っている人なのだろうか。
ヴィム・ヴェンダースの「PERFECT DAYS」は、私はあまり評価していないのだけど、この映画の人気も、老後おひとりさま節約生活の人気と似ている。
都心だが、風呂なしの古いアパートなので、家賃は安め。
わけあって家族と疎遠になっているが、主人公を心配する妹の一家がいる。
トイレ清掃会社のベテラン清掃員で、業務用の立派な車をアパートの前の駐車場に置いている。こんなベテランがそれまで非正規だったとは考えづらい。おそらく定年までは正社員で、ただ、人づきあいが苦手なので役職にはつかず、現場で仕事をしていたのだろう。定年後の今は非正規で同じ会社で同じ仕事をしている、というのが私の予想。あの安アパートにずっと住んでいたのだから貯金は相当あるはず。たぶん、アパートが取り壊しになったら中古マンションを現金で買えるくらいある。
そしてもちろん、健康。
という具合に、人気の「老後おひとりさま節約生活」の著者たちとみごとに重なる。
男でぶっきらぼうだから、おひとりさま女性シニアたちのような人気は出ないだろうけど、映画自体は人気が出た。
本はブックオフで買ったり図書館で借りたりせずに近所の老舗の古本屋(今はもうめったにない)で買うとか、近くにスカイツリーがあるとか、渋谷のおしゃれなトイレの掃除とか、そういうおしゃれアイテムもある。もともとこの映画は渋谷のトイレのPRのために企画され、監督を依頼されたヴェンダースが長編化を希望して作られたわけだから、なにかそういうPR的な雰囲気をかもしだしている。まあ、私はその辺が嫌いなんですがね。