2026年5月22日金曜日

ジャン・レノの「らくだ」

 ジャン・レノが自身について語る自作自演のソロ・パフォーマンス「らくだ」の公演に行ってきた。

池袋の東京芸術劇場。雨なので地下通路から行きましたが、外からの写真が撮りたかったので外へ。




1階はこんな感じ。




地下のシアターへ。



日本酒の会社が後援していて、入るとウェルカムドリンクで日本酒がふるまわれます。飲めない人は炭酸水。日本酒はとてもおいしかった。


公演が終わって出るときに日本酒が配られる、というのはXで知っていたけれど、試供品のミニチュアボトルだろうと思っていたら、しっかり300ml入りのボトルだった。リュックに入れてだいじに持って帰りました。


実はこの公演、なんとなく知ってはいたのだけど、初日の直前のニュースを見てなにげにチケットの状況を見たら、もう東京公演は完売、地方のツアーの大ホールが少し残っている感じだった。地方でも比較的近いところもあるので行こうかと思ったのだけれど、この種の演劇は小ホールでないと効果が薄いのでは、という気がして見送り。が、その後、初日のあとにまたアクセスしてみたら、東京公演にキャンセルが出ていて、最初に見つけたのは前方中央の席だったが、チケットぴあの会員登録しているうちになくなり、次に見つけたのがほとんど最後方だけど中央に近い席。ここでいいかって感じで申し込んでしまった。

しかし、行ってみたら、このシアター、後方は前の人たちの頭で舞台の両端が見えない。前の2席の間に後ろの席があるので、中央は見えるのだが、ジャン・レノが右や左の端に行くとまったく見えない。特に私の前の2人が座高がものすごく高い人たちで、舞台の天井まで頭で見えないくらい。幸い、片方の隣がいない端の席だったので、そっちに体を寄せてなんとか端の方を見ていた(もう片方もやや隣に寄ってやっと見える感じ)。

これまで演劇はすべて前の方の席で見ていたので、舞台に見えない部分があるなんてことはなかったのだが、演劇をやる小劇場は後方はみんなこんな感じなのだろうか。オペラやバレエをやる大ホールの方が遠くても全体がちゃんと見える席が多いと思う(NHKホールの1階の一番後ろとか、東京文化会館の4階とかで見たがちゃんと見えた)。

そんなわけで、舞台の一部が常に見えない状態なので、その点は欲求不満だった。座席はすべてS席で、同じ料金。多少とも安ければしかたないと思えるのだが、普通の演劇をここで見るのは考えものだと思った。

劇はジャン・レノが自分の人生を振り返りながら語ったり歌ったりするという形式で、ジャン・レノのファンであればそれだけで十分うれしいのだが、ファンではない人から見たら自分語りがえんえんと続くだけなので、満足できないかもしれないと思った。演劇として優れている感じではない。もしも演劇として優れていたら、ジャン・レノ以外の俳優がこの芝居でレノを演じても面白い作品になるはずだが、それはないだろう。逆に言うと、これはレノが演じていなければ価値がない、という意味で、ある種、一期一会的な、今見ておかないと永遠に見られないかもしれない作品ではある。

日本が世界初演というのは、日本にはレノのファンが多いからチケットは確実に売れるというのがあるだろう。日本でレノの芝居が見られるなんてこれが最初で最後かもしれないのだから。フランスなら、レノは何度も舞台に出ているわけで。内容も、日本とのかかわりを入れていて、もしも他の国で上演するならその辺はその国に合わせて変えるだろう。日本ではもう地方もチケットほとんど完売で、大成功といっていいけれど(お客さんも最後は手拍子とスタンディングオベーションで、リピーターも少なくない感じがした)、母国フランスへ持って行ったらけっこうきびしい評価されちゃうかもしれないという気もする。

レノが若い頃に出たテレビドラマのシーンが映し出されたりと、ファンにはたまらない芝居だが、レノについて何か新しいことがわかったかというと、それはちょっとない感じ。

私はといえば、今から40年近く前、日劇プラザでロードショーされた「グレート・ブルー」(「ブラン・ブルー」英語版)が大好きで、特にレノの演じたエンゾに魅せられたから、レノの芝居や歌を見られただけで満足だけれども、でも、なにかすごいものを見た、みたいな感じがないのは寂しい。そういえば、「グレート・ブルー」のレノの声は野太い声だったのに、その後、フランス語映画で聞いたレノの声はとても繊細で、英語版「グレート・ブルー」の彼は吹替だったのだと思ったが(他にもそう言っている人がいた)、この芝居でもその繊細な声は健在だった。「グレート・ブルー」、輸入盤レーザーディスクを買ったのだけど、機械がだめになったのでディスクも処分してしまった。

久々の池袋だからあちこち見ようと思っていたけれど、雨だし人が多いしで、結局、上野へ行って西洋美術館常設展へ。休館中の東京文化会館の前から撮影。雨はやんでいた。


先月行ったときとほとんど展示がかわっていなかったので、初めて見た絵はこれだけ。


金曜の夜間開館の時間帯だったが、この前と同じく人は少なめ。モネの部屋。



でも、ガイド付きのツアーのグループがこれから来そうだったので、早めに退散。

追記 ジャン・レノの「らくだ」、シアター内は撮影禁止だったので、上演前や上演後の舞台なども撮ることができなかった。映画のエンドロールのようなものが最後に流れ、そのあと、レノのフランス語の直筆メッセージが出るが、大昔に習っただけですっかり忘れてるフランス語なのに、なぜか、これは全部理解できた。まあ、英語に似た単語が多かったのですが。耳で聞いていても、セリフの中に知っている単語が時々出てきてはいたけどね。最後に舞台の前に行って装置を見たけれど、左手に置かれたバケツの中にフランス語で「グラン・ブルー」と書かれた小冊子(脚本にしては薄いのでなんだろう)が逆さに突っ込まれていた。なお、芝居の中ではレノは「グラン・ブルー」のことを英語題名の「ビッグ・ブルー」と言っていたね。「ビッグ・ブルー」は私が最初に見た英語版「グレート・ブルー」の原題。もともと英語映画として企画されたのだろう。配給は20世紀フォックスだった。日劇プラザでは全然ヒットしなっくて2週間で打ち切りだったらしいが、リアタイで書いた映画評があるのだけど、発掘して再掲しようかな。当時出していたコピー誌に書いたものです。