マイケル・ジャクソンの伝記映画「マイケル」を見てきた。
初日の昨日は昼過ぎまではよく晴れていたのに、午後1時半くらいになったらなんだか遠くでゴロゴロ言い出したので、徒歩35分のシネコンで3時の回を見る予定で、2時に出ようと思っていたけど、すぐに出かけた。
ところが、5分後に雨が降り出し、そのあとピカピカドンドンになってきて、かなり怖かったが、びしょぬれになりつつ、なんとかシネコンに到着。が、2時半頃には雨はやんでた。まあ、2時に出てもピカピカドンドンには遭遇してたので、どっちでも同じかな。
さて、あちらでは観客には大受けなのに批評家の評判最悪らしい「マイケル」。「ボヘミアン・ラプソディ」のプロデューサーの製作で、「ボヘミアン~」も同じパターンだったけれど、「ボヘミアン~」は批評家の評価はトマトで59%だったからそんなにひどく悪かったわけではない。最終的にはゴールデングローブ賞作品賞、アカデミー賞4冠と、賞レースでも評価された。
批評家の評判が悪いのは、比較的最近まで生きていたアーティストの実話を改変して面白い映画に仕立てているからで、確かに「ボヘミアン~」では事実と違うところが多い。でも、全体としては間違ってない。「マイケル」の場合も、全体としては間違ってないんだろうけど、脚本や演出の切れが「ボヘミアン~」に比べてかなり劣る。
特に前半。曲をじっくり聞かせるシーンが少なく、細切れな印象。ドラマ部分もイマイチ。「ボヘミアン~」では主役クラスの何人ものキャラが立っていたのに、「マイケル」はマイケルの甥ジャファー・ジャクソンの演技はすばらしいものの、マイケルと父親以外のキャラが立っていない。
しかし、後半になるとステージやMTV撮影シーンで曲をしっかり聞かせてくれ、ジャファーの演技やダンスのすばらしさもあって、引き込まれる。映画はマイケルがジャクソン5の活動を完全にやめるところで終わっているが、この後半なら続編も期待できる。
マイケル・ジャクソンはジャクソン5のかわいい子どもの頃から知っていたし、映画は見なかったけれど「ベン」のテーマをラジオでよく聞いたし、ダイアナ・ロスと共演した「ウィズ」はロードショーで見た。が、もともと洋楽に興味なかったので、その後のことはエンタメ情報で知る程度。家を動物園にしたり、整形手術で白人のような見かけになったり、ネバーランドという子ども時代への逃避みたいな施設を作ったり、そして少年への性加害疑惑と、なんだか奇行のある変な人、という印象だった。
今回の映画でも家を動物園にしたり、整形手術で鼻を細くしたりというのはあるが、子どもと動物が好きなんだな、というのはわかった。
ただ、中心となっている父親との確執の描写がイマイチ。子どもの頃のマイケルにひどい体罰をしていたり、その後も息子の成功を自分の手柄にしたくてマイケルを支配下に置き続けようとしたりといった様子が描かれはするが、本当の意味で踏み込んだ描写にはなっていない。
マイケルはやさしく接してくれたモータウンの人物やボディガードに理想の父を見ていて、特に幼い頃からのつきあいのボディガードとは父と子のような関係になる。また、マイケルにきびしいことを言って逆に信頼された弁護士は兄のような存在だ。
この3人はいずれも白人で、黒人の父や兄たちよりも白人の彼らの方が心を許せる人物になっている。
家族の中では母親が常にマイケルの味方だが、存在感はイマイチ。兄たちと姉に至っては芝居の書き割り程度の描写。ジャクソン5を離れるにあたって兄たちと確執がなかったわけがないと思うのだが、兄たちはジャクソン5のメンバーとしてしか描かれず、人物としての描写がほとんどない。
「ボヘミアン~」ではフレディが「マイケル・ジャクソンはソロになってこんなに儲かった」と言われ、そこからフレディの魂の転落が始まる、という描写になっていて、このあたりの人物構成と脚本と演出がうまかったのだが、「マイケル」ではマイケルがジャクソン5を完全にやめるのは父親との決別として描かれている。ジャーメインの息子がマイケルを演じているから兄たちとの確執は描けなかったのだろう。
クライマックスでマイケルがジャクソン5としての活動はこれが最後だとステージで宣言し、それを見て怒った父親が迫ってくると、ボディガードが「失せろ」と言う。影からそっと見守っていたボディガードがここで初めて積極的な役割を演じるわけで、このあたりは効果的。
ダイアナ・ロスのような女性歌手が子どものマイケルに「かわいい」と言うシーンがあるが、ダイアナ・ロスを演じた女優のシーンはすべてカットされたらしい(このシーンの女性はダイアナ・ロスではないようだ)。このほか、少年への性虐待疑惑が勃発するところで終わる予定が訴えられて、それより前のところで終わりにするなど、あとからいろいろ出てきて改変を余儀なくされたようなので、それも演出や脚本の弱さにつながっているのかもしれない。
「雨に唄えば」、「モダン・タイムス」など、古い映画のシーンがたくさん出てきて、全部はわからなかったが、マイケルが古い映画を参考にダンスを作っていたことがわかる。時代的にしかたないが、白人文化にどっぷり浸っていたわけで、黒人のミュージシャンはクインシー・ジョーンズがちらっと出てるくらい。あとは黒人アーティストを締め出すMTVへの抗議があり、そのシーンに「ボヘミアン~」にも出てたマイク・マイヤーズが出ていて、同じような雰囲気の役柄なのも面白かった。
性虐待疑惑には否定論もあるようだが、ネバーランドみたいなのを作ったのがそもそもよくなかったのかもしれないし、父親のようなボディガードなどとの関係や子ども好きなところが、父親から虐待されてよい父子関係を築けなかったところが影響しているのか、その辺もあまり踏み込んで描いていない。後半はそういう暗い面が多く出てくるだろうから、その辺をどう描くのか興味深い。