セイバーズはオーナーが4代目に替わって以来、勝ち星を重ね、日本時間7日についにプレーオフ圏内のカンファレンス8位に入りました(また転落するかもだが)。今の調子だと7位もねらえそう。主力センターのデレク・ロイがしばらく前からケガで今季絶望ですが、トレード・デッドラインにやってきたボイズが活躍してるみたいです。
セイバーズは初代オーナーがバッファローの名士で、長いことオーナーを続けていましたが、彼が亡くなる頃にオーナーを引き継いだ2代目がとんでもない山師で、結局、背任の罪で逮捕、チームは消滅の危機に。NHLのチームのオーナーになりたい北米人は山ほどいますが、だいたいが単にオーナーになってみたいという、ろくにヴィジョンもない富豪だそうで、そういういいかげんなのや山師に引っかかるととんでもないことになるのですが、その消滅の危機にあったセイバーズを救った3代目はホッケーをまったく知らない富豪。なんでオーナーになったかというと、ニューヨーク州知事に立候補して落選していた政治家志願で、地域貢献で選挙を有利にという下心があったのは事実のようです。しかし、その3代目はオーナーになると、そうした政治活動から手を引き、チームに専念、ロックアウト後の2シーズン、セイバーズはそれまでにないほどの栄光の時期を経験します。
しかーし、問題は、ホッケー・チームはオーナーにとって金食い虫だということ。NHLのチームでさえも、黒字はごく一部のチームだけで、その黒字さえも、入場料収入だけではとうてい達成できない。そのくらい金がかかるのがプロ・ホッケー。セイバーズ3代目オーナーも、毎年、資産の一部を赤字補填に当てていたのが現実。そして、やがて、ニューヨーク州は、富豪に高い税金をかける条例を作ってしまったのですね。それで、富豪のオーナーは税金の安いフロリダに移転。こうしてバッファローから遠く離れたオーナーは、チームへの関心も失い、チーム売却を考える。前に書いたように、NHLのチームのオーナーになりたい人は山ほどいますが、例のハミルトンの富豪のように、自分の町にチームを移転させたいとか、そういう下心がまたあるわけです。しかし、3代目オーナーは、セイバーズをバッファローに残すためにオーナーになった人なので、移転を考えるような人には売れない、というわけで、適任の人が出るまで待っていて、ようやく4代目オーナー誕生となったわけです(オーナー探しはコミッショナーが行なったといわれている)。
私はセイバーズ以外のNHLのチームには詳しくないのですが、NHLのチームのオーナーが時々替わるのは別に珍しくないようです。むしろ、こういう金食い虫を抱えていたら、どんな富豪でもいずれ体力がなくなるわけで、そうなったら、体力のある新しい富豪にチームを譲るのはしごく当然だな、と思います。
ひるがえって、アジアリーグの日本チームは、はるか昔からチームのオーナーが同じ企業というところが多いというか、いまや王子製紙と日本製紙だけになってしまいましたが、ついこの間までは西武がそうでした。アジアリーグの前は古河電工とか、雪印があったようです。で、撤退した企業は要するに体力がなくなったってことなのでしょう。たしかにNHLのチームのオーナーが時々替わること考えたら、日本のホッケー・チームのオーナーが長い間、同じ企業じゃ体力なくなるだろうと思います。特に、今、不況なんで。
一方、今回、プレーオフでファイナルに進んだ東北フリーブレイズとアニャン・ハルラは、ハイワンと並んで、比較的新しくチームを持った企業、ですよね? つまり、体力あるし、チームを持ったばかりだからやる気満々。特にハルラのチーム経営は、語りべさんはじめ、多くの人が称賛するすばらしいもののようです。日本での試合でも、ハルラは大応援団を派遣していますが、彼らの飛行機代、とか考えたら…。
そして、今回、郡山開催のセミファイナルで、今度はブレイズの親会社ゼビオが、ある種の理想的なホーム演出をしたらしい。それは親会社の体力とやる気と、ブレイズのプロチームとしての特性が生かされたものらしい(見てないので、らしいとしか言えませんが)。
長年、金食い虫のホッケー・チームを維持して、体力もやる気も衰えている企業に、これをやれといってもむずかしいだろうなあ、と、素人の私は思います。新しい企業にはやるだけのメリットがあるけど、古い企業にはあまりメリットがないだろうし。
NHLのように、体力のある新しいオーナーが次々と出てくる、というのは、今の日本では無理というか、それができれば西武もオーナーが替わって続いただろうし、バックスも富豪のスポンサーがつくだろうし。日本製紙も王子製紙も、共同スポンサーとかがいれば、もっと変われるかもしれないし。でも、実際は、ゼビオやハルラが出てきたのは、まれな出来事としか思えないのがなんともつらいところです。
追記
最近出たある記事なのですが、かつてNHLのチームがあったカナダのケベックとウィニペグがなぜチームを持てないかということを経済面から示しています。これによると、NHLの最も貧弱なマーケットであるオタワやバッファローに比べて、この2都市はさらに貧弱だということが数字で表されています。
http://www.sbnation.com/nhl/2010/12/8/1536097/nhl-relocation-winnipeg-quebec-city
かつて、ケベックやウィニペグにチームがあった頃は、今ほどNHLのチームはお金がかからなかった、選手の年俸も安かったからなのですが。
ひるがえってアジアリーグの場合、ホッケーの盛んな地域の企業がチームを維持してきたわけですが、その地域はいずれも人口が多いとはいえず、地元の企業も限られています。オーナーが替わるということは、ホッケーの盛んな地域からそうでない地域への移転もありうるわけで、フリーブレイズはオーナーが替わったわけではありませんが、事実上、ホッケーの盛んな八戸よりも、盛んでない郡山を本拠地としていくことになるでしょう。これが今後、どういう意味を持ってくるのかも興味深いところです。