大学の講義で「十二夜」を扱うので、参考資料としてDVDを4枚1000円のツタヤでレンタルしようと思ったら、貸し出し中。しかたがないので、5枚1200円のツタヤで借りてきました(これが例の地下鉄に乗らないと行けないツタヤで、親指打撲の翌日、必死で5枚のうちの新作2枚を返してきました)。
借りたのは「十二夜」のほかに、新作の「トゥルーグリット」と「アンノウン」、旧作の「トロン レガシー」と「チャイナ・シンドローム」です。
実は「チャイナ・シンドローム」はこれまでずっと見逃してきた映画。気になってはいて、特に3・11の原発事故のあとは特に見たかったのですが、ツタヤにはDVDが何枚も入ったにもかかわらず、貸し出し中ばかりで借りれなかったのです。
で、やっと借りて見たのですが、今見ても全然古くない。いや、むしろ、今の方が身近な問題として真に迫ってきます。アメリカでは公開直後にスリーマイル島の原発事故が起き、以後、アメリカは新しい原発を造らなくなったそうな。それにひきかえ、日本はこの映画が公開された頃(70年代末)はまだ反原発の空気があったのに、いつのまにかその空気が消えて、気がついたら地震と津波の国に50以上の原発って…。私自身はずっと反原発のつもりでしたが、こんなことになっていることに気づかなかったこと自体、反原発のつもりの人も油断していたということですね(反省)。
「チャイナ・シンドローム」のすばらしいところは、ジャック・レモン扮する原発推進派の技術者が、原発の異常とその背後にある建設業者の手抜きに気づき、反旗を翻すところです。推進派だったからこそわかることがある、そういう立場の人が人々の安全のために戦うという姿を中心にしたことに、この映画の意義があると思います。
この映画のレモンは口下手で、せっかくテレビのキャスターとカメラマンが来て、放送してくれているのに、肝心なことを言えないまま、電力会社の命令で突入した警官たちに殺されてしまいますが、この電力会社の態度がまた、東電を連想させてこわい。手抜きの建設業者もひどいが、結局、電力会社も原発の利益優先で、安全第一ではないのです。
また、ジェーン・フォンダ扮する女性キャスターが、女性なのでソフトなニュースしかやらせてもらえず、不満だったのが、最後、涙を浮かべながら硬派のニュースを伝えるシーンに、当時の女性の置かれていた状況を思い出して、感無量でした。マイケル・ダグラスがすごく若いけど、彼はプロデューサーとしていい仕事をしました。レモンの旧友だった原発職員が、最初は会社の手前、言葉を濁していたのが、最後に、「彼が正しいことをしたと信じる。調査すれば、彼が英雄だったことがわかるはずだ」というシーンにも感動。技術者を演じたレモンの、原発を愛している、という推進派の気持ちと、それでも真実を伝えなければ、という技術者としての使命感の間で揺れる演技もすばらしかったです。原発の危険性を訴える人々と、彼らに対し、「電気を使ってるくせに」と言う原発職員の対比もまたリアリティがありました。反原発の人々は、推進派をもっと知るべきだったのだと思います。
新作では「アンノウン」が面白かったです。学会に出席するためにベルリンに来た科学者が事故に遭い、一時的に記憶喪失になったあと、なぜか自分の存在が否定されていることに気づく、という話で、よくある陰謀ものなのですが、その陰謀が明かされる過程が非常に面白かったです。リーアム・ニーソンは年とったなあという感じだけれど、こういう役にはぴったり。相手役のダイアン・クルーガーも魅力的で、他の脇役も渋い演技派がそろっていて、見ごたえがあります。
新作では、「トゥルー・グリット」は一応面白かったけれど、すごいというほどのものではありませんでした。ただ、復讐を果たした少女が蛇にかまれ、それがもとで片腕を失い、結婚もせずにオールドミスになっている、というところでは、復讐のむなしさを感じさせます。
準新作の「トロン レガシー」は早送りしたくなるようなつまらなさで、借りたのを後悔しましたが、元祖「トロン」の主役2人が出ているので許そう。特にジェフ・ブリッジスはさすがというか、実は「トロン」の頃から好きな俳優だったんだけど、こんないい役者になるとは、当時は思わなかったです(「トゥルー・グリット」にも出てるが)。しかし、元祖「トロン」は私は大好きだったので、こんなアホな続編作るな、と思いますね。「トロン」の頃はコンピューターは大型機械で、今みたいなパソコンじゃなかったので、そこに入っていって、というのは夢があったけど、今度のはゲーム機だものね。ゲーム機に入っていくなんて話がショボすぎる。どうせだったら、インターネットの世界に入ってトロイの木馬と戦うとか、そういう壮大なのにしてほしかったです。