2014年8月28日木曜日

フランスおとぎ話も日本アニメの世界か?

ヴァンサン・カッセルが野獣、レア・セドゥが美女ベルを演じるフランス映画「美女と野獣」。
「アデル、ブルーは熱い色」の男っぽい女性セドゥがベル?はともかく、カッセルの野獣ならぜひ見たい、と思って試写に駆け付けた。
普通、「美女と野獣」というと、ボーモン夫人作の短い小説がもとになっているが、これはボーモン夫人以前にあった小説「美女と野獣」をもとに大胆に新解釈を加えた作品らしい。
舞台はナポレオン時代のフランス。破産した商人が不思議な城に迷い込み、そこで娘ベルに頼まれたバラの花を一輪、手折ってしまったのがきっかけで、野獣の城に住むことになったベル、というのはこれまでと同じ。
で、このあとが改変されているのだけれど、ベルは毎晩、野獣の過去の夢を見る。ベルの時代から300年前、王子だった野獣はプリンセスと愛し合い、結婚しているのだが、2人に不幸が起こる。それがきっかけで、王子は野獣にされてしまったことがわかる。この不幸な出来事というのが(ネタバレになるので詳しくは書かないが)ギリシャ神話ふうの味付け。
そして、この野獣の城は森の中にあるのだが、森が生きているというか、森の神や森の精が支配する世界。その描き方が、もろ、宮崎アニメ! なので、宮崎アニメに影響を受けた「アバター」に似てるところもある。
一方、ベルの家族は兄たちが悪い連中とかかわって困ったことになっている。そして、家族に会いたいと家に帰ったベルが高価な宝石を身につけているのを見て、兄たちと悪い連中が野獣の城へ。というところでアクションが始まるのだが、これがやっぱり日本アニメ。巨人が出てきますよ、巨人が! ヨーロッパなので巨人の出てくるヨーロッパのおとぎ話っぽい感じもあるが、描き方が日本アニメの影響大。
というわけで、日本アニメおたくの作った「美女と野獣」。ただ、どうも演出のテンポがよくない。日本アニメの影響を受けているけれど、「アバター」ほどすごくない。おまけに「美女と野獣」といえば、フランスにはジャン・コクトーの名作があるのだから、フランス映画でこれはないだろう、と思う。
また、野獣は合成を使ったメイクだけれど、野獣のメイクのときはカッセルでなくてもいいような感じ。コクトー版のジャン・マレーのような、この役者が演じているんだ、という感じがない。合成があまりうまくないのだろうな。最近の「猿の惑星」映画の猿の顔と比べると、表情が全然足りない。
というわけで、カッセルはもっぱらベルの見る夢の世界の中で顔を披露ということになる。
しかし、この映画、一番よくないと思うのは、本来はベルが野獣の人間性に触れてしだいに彼を好きになり、という展開になるのに、この映画ではベルが野獣にひかれていく様子がきちんと描かれていないのだ。セドゥの演じるベルはタカビーな女で、タカビーでも包容力があるとかならいいのだけど、ただタカビーなだけで、野獣ともいがみあっていて、全然2人がひきつけあう感じがない。で、結局、ベルがなんで野獣を好きになるかというと、それは夢の中で王子が野獣にされた悲しい出来事を知り、同情したからなのだ。
でもねえ、同情では十分ではないのよ。愛になっていなければ。
しかも、ベルは夢の中で、野獣が人間の女性に愛されれば王子に戻れるということを知ってしまうのだ。本来は、ベルが野獣を愛したので野獣は王子に戻る、ということは、王子に戻って初めてわかるべきことなのだが。
でも、この夢の部分も含めた、宮崎アニメの影響大の森の神話はそれなりに見どころはある。それにしても、宮崎アニメ&日本アニメの世界的な影響はすごいと思った。「ライオン・キング」は「ジャングル大帝」、「アナと雪の女王」は「聖闘士聖矢」と、いまや世界基準はディズニーではなく、日本アニメというところか。