2015年5月25日月曜日

キング牧師の映画

キング牧師が1965年に黒人の投票権を求めて行った抗議の行進を描いた映画「グローリー 明日への行進」を見た。
この映画、アカデミー賞作品賞候補になったときは日本での公開が決まっておらず、主題歌賞を取ったので公開が決まった。
映画自体はちょっと演出がぬるいところもあるのだけれど、たまたま試写を見たのが先週の月曜日で、その前日の日曜日に大阪市で市を解体して特別区にするかどうかの住民投票が行われ、また、東京・秋葉原ではヘイトスピーチの団体が警察に守られてデモをするということもあったので、いろいろと考えさせられたし、また、キング牧師の力強いスピーチには何度も目頭が熱くなった。
アメリカは1965年にはすでに黒人にも投票権があったのだが、あちらは投票するには有権者登録をする必要があり、南部では黒人の有権者登録を妨害していたのだ。そこで、キング牧師は大統領に、黒人の投票権を守る法律を作るよう迫るが、大統領はなかなか行動しない。そこでキング牧師は南部の中でも最も人種差別が激しいアラバマ州セルマで抗議の行進をするが、警官隊によって参加した黒人たちが多数負傷するという事件が起こる。それがテレビで放送され、全国から支援者が集まり、次の行進には白人も多数参加。参加した白人が差別主義者の白人に殺されるという事件も起こる。
大統領はキング牧師に妥協案を出したりするのだけれど、キング牧師はぶれない態度を貫く。このぶれない態度というのが、大阪市の解体に反対した自民党大阪府連や沖縄の翁長知事の態度を連想させて、やっぱりこうじゃないといけないのだなあと思ったりした(自分だったらけっこう妥協案にのってしまいそうな気がしたので)。
大阪市の住民投票は、とにかくあの都構想というのがかなりいかがわしくて、賛成派の市長らが大金をつぎ込んで宣伝活動し、反対する側は自民党から共産党まで一致団結してはいたけれど、草の根で活動していたというのが印象的で、おまけに自民党は反対なのに官邸は大阪市長に肩入れして、その背後にはこの住民投票を憲法改正につなげようとしているのでは?という憶測もあり、どうなるかと思ったのだが、僅差で反対派が勝利。しかし、その結果に対し、高齢者や生活保護受給者のような弱者が反対するから世の中がよくならないという論法がマスコミや評論家などから流れるようになった。
そして、弱者は社会に養ってもらっているのだから投票権をなくせとかいった主張まで出てきている。大阪市の住民投票は女性の反対が多かったのだが、さすがに女は投票権を持つなという論調は出ていないが、極端なことをいえば、この論調は女性の参政権を奪うところまで行くような理論なのだ。
結局、日本には民主主義は根付いていないのではないか、投票権の意味がわかっていないのではないか、という気がして、最近は暗澹たる思い。キング牧師のような投票権をめぐる戦いが日本でなかったからなのか。
そんなことを考えると、「グローリー」はやはり見るべき映画だと思う。