グーグルのトップページにマックス・ボルンが登場している。
今日はボルンの誕生日なのだ。
ボルンは、1990年代にヴェルナー・ハイゼンベルクについての本を熱心に読んでいた私にとってはなじみのある物理学者だ。
ボルンはハイゼンベルクの師だったが、ユダヤ系なのでナチスのユダヤ人迫害から逃れるためにイギリスに亡命した。
アメリカに亡命したユダヤ人科学者には原爆製造にかかわった人が多かったが、ボルンはイギリスに亡命したため、原爆製造にかかわらなかった。
彼自身、原爆使用には反対の意志を持っていたようだ。
亡命しなかった弟子ハイゼンベルク(ユダヤ系ではない)についても、彼が決してナチス支持ではなかったと考えていたようだ。
ボルンは終戦後、ドイツに戻り、ドイツで亡くなった。
「鋼の錬金術師」のあと、映画を見ていないので、更新していなかったが、それ以前に試写で見た映画がいくつもあり、その中の1つ、「否定と肯定」が先週末に公開された。
原作者が来日してインタビューを受けているので、その記事で十分に内容がわかると思うが、いろいろ言われているように、今の日本と重なる部分が非常に多い。
ポスト・トゥルースとか、歴史修正主義とか、いろいろ考えさせるところの多い映画。原作者を演じるレイチェル・ワイズもかっこいい。
郊外に転居して、試写室が確実に遠くなったと思う。
初めて配給会社の試写室に入ったのは19歳くらいのとき。場所は銀座にあった東和。映画は「パピヨン」。キネ旬で読者対象の試写会を試写室で行い、応募して当選したのだった。うなぎの寝床みたいな細長い試写室だったのを記憶している。
プロとして試写室に入ったのはそれから10年後、京橋にあったワーナーで「グレイストーク」を見た。異色のターザン映画で、クリストファー・ランバートの出世作になる。
そのあとは試写室族になって、試写室でたくさんの映画を見せてもらった。
当時、試写室は京橋から新橋に集中していた。
京橋 ワーナー
銀座日比谷 東宝、東和、東映、松竹、UIP(ユニバーサルとパラマウント)
新橋 ヘラルド、コロンビア(現ソニー)
神谷町 フォックス
当時はディズニーはワーナーが配給していた。
あの頃の試写室というのは椅子はひどいし、かなり見づらい環境だったが、今は試写室はずいぶんと見やすくなっている。
でも、30年以上前の試写室で見た数々の映画を忘れることはできない。
東和で見た「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」。キネ旬で分析採録をしたので2回見たのだが、2回とも、映画館では上映されなかった完全版を見ることができた。
この映画は有楽町マリオンの日劇のこけら落としになったのだが、そこで上映されたのは短縮されたバージョンだった。私の書いた分析採録もカットされた部分は削除されて掲載された(しかも誤植の多いひどい形で)。
日劇ではこの映画を見なかったのだが、その後、レーザーディスクで短縮版を見て、また、文芸坐でも同じバージョンを見た。試写室で見たのとは印象が異なっていた。
試写室で見た完全版を再び見ることができたのは、DVDだった。
映画評論家としては数年前から開店休業状態なので、試写状もあまり来なくなり、試写室に行くことも少なくなったが、試写室の思い出はとても多い。いろいろな意味で感謝したい気持ちでいる。