2018年3月5日月曜日

「妖猫傳」吹替え版リピート

今日の午前中はアカデミー賞の発表でしたが、げ、なんで「シェイプ・オブ・ウォーター」なんかが作品賞なの? 「スリービルボード」はすごい傑作なのにもともとマーティン・マクドナーが監督賞にノミネートされておらず、そのかわり脚本賞かと思ったら「ゲット・アウト」。で、「スリービルボード」は主演女優賞と助演男優賞だけって、要するに、アカデミー会員は「スリービルボード」は演技だけ認める、作品は認めない、マクドナー? 知らん、て感じなんですかね?
「ゲット・アウト」の脚本賞はよかったと思います。
「シド・アンド・ナンシー」からのファンとしてはゲーリー・オールドマンの受賞はうれしい。
ジェームズ・アイヴォリーが脚色賞だけど、オスカー初? それならすごくうれしい。
しかし、「シャイプ・オブ・ウォーター」は前の記事で書いたとおり、猫を殺しておいてそのあとの人物たちの態度が許せない、というだけでもう論外なんですが、「スリービルボード」と「ゲット・アウト」が差別する側をきびしくも奥深い視点で描いているのに対し、「シェイプ・オブ・ウォーター」は差別される側をただ描いているだけなんですよ。しかも、半魚人は最後は神扱いで、結局これはヒロインの自己満足だろうとしか思えない。
でもまあ、アカデミー賞が私が推さない映画を作品賞にするのは平常運転なんで、ただ、最近はわりと私の好きなのが受賞してたんですが、まあ、アカデミー会員の本音がわかったような気がしないでもないわな、今回のは。

というわけで、前記事で、「シェイプ・オブ・ウォーター」の口直しに「空海」こと「妖猫傳」もう一度見たいと書きましたが、オスカー受賞でいよいよ「妖猫傳」での口直しが必要になったので、すぐ見てきました。
前回は松竹系のシネコンでしたが、そこは今はもう小箱になってしまっているので、まだ比較的大きいスクリーンでやっている東宝系へ。さすがトーホーシネマズ、松竹系になかった巾着があったよ。買いましたが、画像はネットから借りてきたもの。

下が表で上が裏かな。入っているポリ袋にメイド・イン・チャイナと書いてありますが、これはもう、メイド・イン・チャイナが正解。つか、中国でも売っているのかな。
「妖猫傳」はネットで中国語版を2回見て、中国語の雰囲気はつかめたので、豪華絢爛の映像を見に映画館へ。中国語版を見たあとに日本語吹替えを見ると、吹替えも悪くないな、と思います。ネットでは吹替えの悪口がけっこうありますが、字幕版を公開していたら吹替えに対して悪口は出なかったのではないかと思う。むしろ両方見たい人がたくさんいそう。
阿倍仲麻呂のナレーションは中国語吹替えもよかったけど、やはり阿部寛の声がよいです。
中国語版にない冒頭の解説も映像がきれいだし、白楽天(白居易)の解説も入れたら完璧だった気がします。別に本編の邪魔にならない。そこに中国語版にないRADWIMPSの歌が流れるのですが、この歌が映画の中でも流れるのはよくない。せりふのあるシーンなのに歌流すのはよくないです。エンドロールの歌は中国語版にもあります。
映像はやはり美しいし、猫かわいいし、トーホーシネマズ、次はタダで見られるからまた行こうかな。吹替えの翻訳がよいような気がする。吹替えでも見たいと思えます(でも、字幕版公開してほしい)。
世間では邦題詐欺とか言われていますが、確かに宣伝のコンセプトがおかしい。キネ旬の特集みると監督は若い人向けをねらっていて、実際若い人向けだと思うし、RADWIMPSの起用も若い人向けと思えばわかるのですが、なぜか日本では中高年向けに宣伝している感じ。大河ドラマのような歴史ものに見せて、しかも中国色を極力隠しているのですが、そんなの映画が始まったら違うのすぐわかるし、始まってすぐ帰る高齢者もいるみたい。実際、中国では大ヒットだったのに日本ではイマイチというニュースがあり、それに対し、「最初から猫推しで字幕も公開してりゃよかったのに」というファンの意見が。嘘でとりあえず初動はヒットしてもその反動が来るに決まってるのだが。
この映画の魅力はいろいろありますが、空海と白楽天のバディムービーでもあり、魔法使いの弟子の美少年2人の物語でもあり、楊貴妃をめぐる男たちの愛の物語でもあり、李白と白居易の詩作についての物語でもあります。楊貴妃への愛は生身の女性への愛ではなく映画スターへの愛に近いですが、それはものごとは偽りであるという映画のテーマに重なる。また、この映画が好きな人たちのツイッターを見ているといちいちうなずく。李白について熱く語る白楽天がオタクそのもので、そのオタク部屋を空海に見られてしまい、みたいなところも面白い。
いや、語りだしたらきりがないんですが、あと何度かこの世界にひたりたいと思っています。
ところで、今回見たのは「スリービルボード」を見たのと同じシネコンの同じスクリーンの同じ席でした。ねらったわけではないですが、これでなんとか「シェイプ・オブ・ウォーター」の口直しができたかな(「シェイプ~」も悪い映画じゃないだけどね)。