2019年3月10日日曜日

すごすぎる音響:映画館で見る「ROMA/ローマ」(ネタバレ注意)

Netflixの配信映画として話題になった「ROMA/ローマ」がついに日本でも映画館で公開。3月9日から全国のイオンシネマ48館で上映中!
詳しくはこちら。
https://www.aeoncinema.com/cinema2/all/movie/E0001408/index.html

早速、初日に幕張新都心のイオンシネマへ行ってきた。
ここは行きはよいよい帰りは怖いの場所で、行きは最寄駅の海浜幕張まで乗り換えなし。自宅から50分ほどで駅に到着。が、帰りは夜はうち方面の電車が1時間に2本とかそういう場所。上映終了時間を見て帰りの電車の時刻をチェックして行ったが、イオンが思ったより駅から遠く、間に合うか心配だった。でも、終了時間がネットに出ていた時刻より早かったので余裕で駅に着き、無事帰宅。

「ローマ」に関しては、Netflixがアメリカでちょっとだけ公開してアカデミー賞作品賞の候補にし、そのあとすぐに世界同時配信、映画館ではやらないとか、アカデミー賞のために映画の製作費の4倍近い宣伝費を使ったとか、配信の契約者を増やすための作品の囲い込みではないかと言われ、正直、映画を取り巻く状況にあまりよい印象を持たなかった。が、その後、世界中で劇場公開されていて、日本もいずれ公開されるとの情報があり、いつになるかな、と思っていたら、3月9日上映の映画の予約開始日の前日、3月6日に突然、イオンシネマで9日から上映とのニュースが流れた。
配給会社を通さず、Netflixとイオンの直接契約らしいが、とにかく劇場公開はめでたい。

「ローマ」については映像の美しさがいろいろ言われていたが、映画館で見て驚いたのはむしろ音響。サラウンドも重低音もすごすぎる。映画の中で地震が起きたときの重低音、クライマックスの海の波の重低音で、椅子と体が軽く揺れる。サラウンドは本当にすごいサラウンドで、音が360度から聞こえてきて、自分が映画の中にいるようだった。
今までも音がいいと言われる映画館、スクリーンを体験してきたのだが、今回が一番すごかった。別にドルビーアトモスだとかそういうのではないのに。
映像はもちろんすばらしくて、冒頭、床に水をまいて洗うシーンで、水面に空が反射して、そこを飛行機が横切るのが見える。ここが最後のエンドクレジット、空を見上げる映像と対比されている。モノクロの映像が美しい。
時代は1971年、メキシコの裕福な家で働く若いメイド、クレオと雇い主の家族をめぐる物語で、クレオは恋人の子供を身ごもるが、恋人は彼女を捨てて逃げてしまう。この恋人がクレオの前で素っ裸で棒を振り回し、最後に日本語で「ありがとうございました」と言うのだが、このシーンで彼がフリチンなのでR15の制限つきになっているらしい。で、このフリチン男とクレオが映画館に行き、クレオが妊娠のことを告げると、男はトイレに行きたくなったと言って出て行ってしまう。映画が終わり、エンドロールが流れ始めるとすぐに幕が閉まり、場内は明るくなり、みんな立って帰り始め、映画自体もエンドロールの途中でスパッと上映が終わってしまう。うーん、外国ではエンドロールは見ないと言われるが、幕まで閉めて上映自体も途中でやめちゃうのか。
そして男は戻ってこない。
クレオは雇い主である女主人に相談し、女主人は彼女を支援する。男を探し当てるが、男は逆ギレしてクレオを追い返す。一方、女主人も夫が愛人と逃げてしまい、4人の子供を抱えて、夫からの仕送りもなく、という状況。
最初にクレオが掃除していた床は車が入るところなのだが、女主人の夫がベルリオーズの「幻想交響曲」を大音量で鳴らしながらここに車を入れようとする。すごく狭いのでミラーがぶつかったりして、やり直して、今度は犬の糞をタイヤがひいてしまい、とか、この車が狭いところに入ろうとするというモチーフが何度か繰り返される。夫がいなくなったあと、妻が狭いところに車を無理に入れようとして車が傷つき、結局、大型の車を売って小型車に替えるとか、なかなか面白いモチーフ。
出産の近づいたクレオがベビーベッドを買いに行くと、外で暴動が起こり、銃を持った男たちが店に侵入してくるのだが、その1人が例のフリチン男っていうのはちょっと偶然がすぎるのじゃないだろうか? その男の銃に対し、クレオに付き添っていた老婦人(女主人の母親のようだ)がクレオの腹に手を当てて子供を守ろうとしているのが印象的。クレオの恋人も女主人の夫も許しがたい無責任男だが、そうした男たちに対し、母である女たちが連帯しているようにも見える描写だ。

以下、ネタバレなので注意してください。文字色を変えます。

ともあれ、その事件の直後、クレオは破水し、病院で出産するが、子供は死産。
夫と離婚することになった女主人は4人の子供とともに海へ行くことにし、クレオも誘う。
この海のクライマックスシーンがすばらしいのだが、映像もさることながら、迫りくる波を映画館中に響く重低音で表現した音響にやはり耳が行く。
女主人と子供2人が浜辺を離れたあと、残りの2人の子供が海の中で大波に襲われ、泳げないクレオが命がけで2人を救う。戻ってきた女主人たちとクレオたちが砂浜で抱き合う。
「子供が生まれてきてほしくなかった」と告白するクレオ。
「みんなあなたが大好きよ」と女主人。
ここで涙が出た。
自分を捨てた男の子供を本当はほしくなかったクレオ。それを隠していたが、女主人の子供たちを救ったあと、初めて本音を言った。死産した自分の子供のかわりに女主人の子供を救えたので、そのことが彼女自身を救ったのだろう。

そしてまたいつもと同じ日常が始まり、エンドクレジット(エンドロールではない)で空が映し出され、飛行機が何度か飛んでいく。さまざまな音があちこちから聞こえてくる。子供の声、犬の鳴き声、鳥の声、車の通る音のような重低音、歌も聞こえる。最後まで、音が観客を離さない。

「ローマ」が音響がこんなにすごい映画だなんて、想像していなかった。
映像もシネスコサイズなのでテレビ画面では狭いだろうが、それでも映像は、高画質の大画面テレビなどで見ればそれなりに堪能できるのではないかと思う。
でも、音響は、これは映画館にはかなわない。
音響に特化した映画館、上映会が最近流行っているのは、音響だけは逆立ちしても映画館にはかなわないからだ。
「ローマ」がこれほど音響に力を入れているということは、これは映画館で見るように作られているとしか思えない。配信であの音響は無理。
なのに配信映画として世に出した。もちろん、映画館でも上映するという条件が最初からあったのだろうが、Netflixでの配信を優先したのは確かだ。
「ローマ」を見たのは今回が初めてで、配信では見ていないのだけれど、映画館で見ると、これが映画だ、映画館でしか味わえない映画だ、と思ってしまう。
映画館でしか味わえない映画を作っておいて、あえて配信映画として世に出して、そのあと映画館で本当の「ローマ」を見てね、という確信犯なのか?
まあ、ちょっと音に力入れすぎという面もあるかもしれないが。
結論としては、映画館の「ローマ」は正真正銘の映画だが、配信された「ローマ」は劣化バージョンにならざるを得ない。「ローマ」自身がそれを証明してしまっているのではないか。
などということを考えた。
あの音を聴きに、もう一度、見に行きたい気がする。

今回幕張新都心を選んだのは、イオンシネマの中では一番近いということもあるけれど、海浜幕張へ行くのは実に30年近くぶりだということもあった。
30年近く前、当時、コミケが幕張メッセで行われていて、それで行ったのと、ほかには同じ幕張メッセの恐竜展に行った。恐竜展はあまり面白くなくて、隣でやっていた現代美術展が入場料が安いので入ってみたら、すごく面白かった、ということもあった。
当時、海浜幕張の駅の周辺はまだ何もなく、駅から離れたところに幕張メッセとマリンスタジアムがあるだけだった。幕張メッセでのコミケは短期間で終わり、また晴海に戻ったので、その後、海浜幕張へは一度も行っていなかった。
それから30年近くたち、駅のまわりには大きなビルがいくつもできていたが、千葉ロッテマリーンズのレプリカユニフォームを着た人やイベント帰りのような人が多く、なんだかすごくあわただしい、落ち着かない街だった。イオンの建物がやたら多い感じで、駅から離れると全然人がいなくなる。何もないところにあとから作った街なんだなあという感じ。競馬場や団地のある南船橋とはかなり雰囲気が違っていた。
幕張新都心へ行ったのにはもう1つ目的があって、例のシャノアール&ベローチェの猫クリアファイル、在庫切れで終了の店舗が増えているけれど、ここのベローチェはまだ在庫があるので、レシートもまたたまったので交換に行った。行ってみると、ベローチェはドリンクを売るブースがあるだけで、そのまわりにテーブルや椅子や長椅子のあるスペースがある。そのスペースはベローチェのドリンクを買わなくても座れる。
レシート3枚だったのでアイスティーを買って4枚にし、クリアファイル2枚と交換。すでに12種類コンプリートしているので、何が出てもかぶるわけだけど、なぜか、先日、神田でもらったのと同じペアが出た。
イオンシネマは実はあまり好きでなく、今回が4回目。4回とも違うイオン。幕張新都心のイオンシネマは今までに行った3つのイオンシネマよりよいのかな、という感じはした。着いたのが夕暮れ時だったので、イオンモールからは夕焼け空をバックに富士山が見えた。