珍しく図書館から本を1冊も借りていない。
今週の初めまでに借りていた本。
ジュリー・アンドリュースの自伝は、2008年に原書が出版されたもので、翻訳が出たのは今年。ジュリーがハリウッドへ行くまでの話で、その後から現在までの後編の原書は2019年に出たようだ。この後編が出たときに、出版社が前編と合わせて版権をとったと思われる。
翻訳の最後に、後編が今年10月のジュリーの誕生日に出る、と書いてあるんだけど、出ていない。
前編が売れなかったんでしょう。翻訳は出来上がっていると思うので、いずれ出るだろうけど。
この本の存在を知ったのが夏頃で、カードを持っている図書館にはほとんどなく(遠方の図書館にはあったが、予約10人で断念)、カード持ってない図書館では在庫ありがけっこうあって、あまり図書館に入っていない上、入っている図書館でもあまり借りられてないのがわかった。
そのうち近所の図書館に入り、予約1位で3週間くらい待って借りられた。
面白いことは面白いのだけど、ジュリーの人生や彼女の知り合いに興味がない人は手を出さないだろうな、という感じ。ミュージカル「キャメロット」初演の話が終わりの方にかなりあって、途中でアーサー役のリチャード・バートンとモードレッド役のロディ・マクドウォールが映画「クレオパトラ」出演のために舞台を去ったこと、この映画に出演した「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授役レックス・ハリスンとバートンとロディの写真をジュリーに送ってきてくれたことがさりげなく書いてある。ロディのはからいだろう、とは彼女の弁。
ジュリーはこの前にバートン(既婚)から強引に言い寄られて拒絶してるのだが、バートンは「クレオパトラ」で共演したエリザベス・テイラーと恋に落ち、その後、妻と離婚して結婚。ジュリーは前半部分は書いていて、後半部分は書いてないけど、推して知るべしというか、こういうのが解説なしにわかる人でないとあまり面白くないかもなあ。
読んだのがちょうど、ミュージカル「キャメロット」の日本初演(2023年10月~11月)の時期だったけど、これにあやかって、ということもなく、やはり売れなかったのだろう。
映画スターの伝記の翻訳は1980年代までは大手出版社からよく出ていたがバブル崩壊後は大手から出なくなり、その後は本が出ること自体、少なくなっている。
「オッペンハイマー」はクリストファー・ノーランの映画の原作。ピュリッツアー賞受賞ということで、かなり前に翻訳が出ていたが、今は絶版のよう。翻訳に問題山積で、実際、読んでみるとひどくて読めないくらいなのだが、早川文庫で改訳が出るようだ。
専門用語はおかしいし、訳文はひどくて意味不明だし、で、出版社(PHP)のだめさがわかるのだけど、私はヴェルナー・ハイゼンベルクが全部ワーナー・ハイゼンバーグになっていて、それが出てくるたびに拒否反応を起こしていたので、ほんとひどかった。一応最後まで目を通したが、原爆投下は必要なかったという視点に立った本であることは確か。
1980年代に出たオッペンハイマーの伝記では、原爆投下を正当化する記述があり、翻訳者の池澤夏樹(まだ作家になる前)が訳者あとがきで怒りをこめてそこを批判していたのを思い出す。自分の翻訳書のあとがきで本の内容を批判する訳者と、それを許した出版社に敬意を感じるとともに、自分の主義主張とは違う本を訳すべきではないと言った、かつて存在した四谷の翻訳学校の師、中村能三先生の言葉をそのとき考えたことも思い出した。
大学3年のとき、翻訳家になりたいと思って四谷の翻訳学校に入ったのだけど、自分がやりたいことと違うと感じて3か月でやめてしまった。でも、あのときの授業で中村能三先生から聞いた言葉の数々は、その後、20年以上たってから翻訳をするときになって何度も思い出したのだった。