2013年12月14日土曜日

わが青春のマリアンヌ

確か13歳かそこらだったときに初めて題名を知り、しかし見ることもなく、思い出すこともあまりなく年をとってしまった今になって、ついに見てしまった、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「わが青春のマリアンヌ」(1955年製作)。
秋にツタヤからDVDが発売され、ただ今準新作扱いでレンタル中。近所のツタヤが閉店してしまったので、最近は地下鉄でひと駅のツタヤへ行くようになり、たまたま入ってみたら準新作・旧作レンタル100円の日だったので、なんとなく借りてみたのだった。
一応、名作とは言われていたけれど、なんかあまり興味がわかなかった作品だったのだが、見てみたら、これ、けっこう自分好み。
いや、ほんと、こんなに自分の頭の中で無視していた名作も珍しくて、どういう内容かもほとんど知らなかった。ただ、青春時代の恋の思い出の話かな、くらいで。
あと、「禁じられた遊び」のブリジット・フォセーが大人になって主演した「さすらいの青春」、原作は「グラン・モーヌ」といって、翻訳が何種類も出ていた小説だけど、デュヴィヴィエはこれを映画化したかったけれど、権利の関係でできず、それで別の作家の「傷ましきアルカディア」をもとに「わが青春のマリアンヌ」を撮った、という話を「さすらいの青春」公開の頃に聞いたのだけど、あれは本当だったのだろうか(それとも、私の妄想?)。
ま、それはともかく、この「わが青春のマリアンヌ」については、このサイトがとても役に立ちます(ネタバレ大あり)。
http://s.webry.info/sp/yojimbonoyoieiga.at.webry.info/201202/article_3.html
けっこう私の感じたのと同じ見方をしているので、大いに納得です。マリアンヌを美少女と書いている人が多いのだけど、私はマリアンヌは大人の女性、主人公のヴィンセントより年上と思いました。
しかし、この映画、フランス語版とドイツ語版を同時に撮影していて、主役のヴィンセントと語り手マンフレートの役者が違っている、というのは初めて知った。
日本で劇場公開されたのはフランス語版で、今回のDVDもフランス語版。が、以前、ドイツ語版のビデオが出ていたのだと。上のサイトの主はこのドイツ語版ビデオを持っていて、写真はこちらを使っている。ドイツ語版はヴィンセントがホルスト・ブッフホルツ。一方、フランス語版はピエール・ヴァネック。ブッフホルツの方が少年に見える、という意見があるようだが、写真を見るとそうでもないような。全体に寄宿舎の少年たちが10代に見えないが、そこは我慢(というより、昔の映画はこういうの多かったので、私は気にしない)。
いろいろなコメントを見ると、男性はブッフホルツ、女性はヴァネックが好きなようです。ブッフホルツの方が男っぽいけれど、ヴァネックの夢見がちな少年っぽい感じの方が私はよいな。ブッフホルツは好きな俳優なんだけど。
もちろん、演技しているところを見ないと本当のところはわからないので、できればドイツ語版もDVDを出してほしい。
その他、詳しいことはすべて上のサイトに書いてあるのだけど、この映画、私はてっきり、青春時代の恋の思い出、みたいに思っていて、ああいうゴシック的な内容だとは思っていなかったのだ。
マリアンヌはマザコンのヴィンセントの妄想かもしれず、そのヴィンセント自体が語り手のマンフレートの妄想かもしれず、動物たちに慕われるヴィンセントの姿は空想的な絵画のようで、ヴィンセントを慕う小娘リーゼの憎たらしさというか、最後は鹿に復讐されるあたりなんかシュールなおとぎ話のよう。
残されたマリアンヌの肖像画が本人に比べて美しくないのも、実は最初に出てきたときから気づいていて、やはり夢なのかなあと思うけれど、夢ではなく、血となり肉となっているみたいな語りがあって、夢落ちで終わらせないところがいい。
思春期に見た方がいい、という意見もあるが、私はむしろ、年をとって、青春の思い出とは無縁に、ゴシック的な世界、夢か妄想かの世界として見たので、逆に面白かった。若いときだったら青春の思い出としかとれず、あまり面白くなかったかもしれない。
(重箱の隅つつきになってしまうけれど、上のサイトでマリアンネ・ホルトをフランス人と書いているけれど、彼女はプロシア生まれ、つまりドイツ人のようです。また、モーツァルトとヴェルディと書いていますが、ヴェルディではなくモンテヴェルディです。)