2016年2月20日土曜日

見てよかった「スター・ウォーズ フォースの覚醒」(ネタバレ大あり)

この映画、あまり見たくなかったので、映画館はスルーしてしまおうと思っていました。
第1作の「スター・ウォーズ」(エピソード4)は大好きで、もちろん初公開時に見ています。西部劇から神話伝説空中戦まで、ありとあらゆる過去の娯楽映画の要素が満載で、本当に好きでした。
その後、シリーズ化され、「帝国の逆襲」、「ジェダイの帰還」(初公開時は「ジェダイの復讐」)と、最初のような明るさがなくなって、親子だった、きょうだいだった、と、なんだか家族のもめごとになっていったのがちょっと残念でしたが、それでも好きだった最初の三部作。
が、それからだいぶたって現れた三部作、ルークの父アナキンを描くエピソード1~3が、私はだめだった。一応、全部、ロードショーで見ましたが、全然好きになれない。最初の三部作が好きだから一応つきあっただけみたいな感じで終わってしまいました。
ルーカスはこれで打ち止めにしたのですが、そのルーカスフィルムがディズニーに買収され、ディズニーの意向で新三部作が作られる、と聞いたときは、こりゃもうだめだ、と思いましたね。
だいたい、最初に20世紀フォックスのマークの出ない「スター・ウォーズ」なんて、「スター・ウォーズ」じゃない、と思ってますから。それどころか、最初と最後にディズニーのシンデレラ城が出るんでしょ? 冗談じゃないよ。
新三部作にはルーカスは関与しないと聞いて、ますますこれは別物なんだ、ディズニーの「スター・ウォーズ」なんだ、と思いました。
そんなわけで、スルーしようと思っていたのですが、先日「オデッセイ」を見た近くのシネコンでまだやっているんですね。じゃあ、せっかくだから見てこようか、と出かけました。

まず驚いたのは、シンデレラ城が出ない! ディズニーのマークとかいっさいなし。最初はルーカスフィルムのロゴ。続いて、なつかしの第1作と同じように英語字幕が流れていき、そして、第1作と同じような映像でスタート。その後も第1作のシーンや物語展開をなぞったようなシーンが続出。ミレニアム・ファルコンが出てきたときは感涙ものでしたね。音楽が一瞬、第1作になるのだよ。
そんなわけで、これは第1作大好き人間のための映画だったので、あとはもうノリノリで見てしまいました。
第1作へのオマージュ捧げまくり、というのは情報としては知っていたのですが、実際に見てみると、これはすごい。ルーカスが関与していたら、こんなオマージュ捧げまくりは恥ずかしくてできないわけで、ルーカスが離れたからできたことなんです。
主役の新人2人がわりと平板な顔立ちで、華もないし強烈な個性もないのが不満ですが、彼らはまだどこの誰かもわからない、本人にもわかっていないわけで、そういう白紙の状態の主人公と見れば、今後、話が進むにつれて彼らも個性的になっていくのだろうと思います。
この2人、レイとフィンが、まだ恋人同士にはなってないのに、かなり仲良くなってるのはディズニーの最近のアニメっぽい。
ハリソン・フォードのハン・ソロは相変わらず借金取りに追われているし、チューバッカも健在。劣化が激しいと言われて反論したレイア姫のキャリー・フィッシャーは確かに実年齢より老けて見える。たぶん、髪型とメイクと服装のせいだと思うけど、あの髪型とメイクは第1作に従っているのだろうな。最後に登場するルークのマーク・ハミルは想像していたよりもかっこよかったです。年をとったルークはなかなかよい。続きが楽しみです。

そんなわけで、第1作大好き人間としてはたまらない映画だったのですが、もう1つ、私を喜ばせてくれたのは、この映画がジョン・ブアマンの「エクスカリバー」にもオマージュを捧げていたことです。
「スター・ウォーズ」はもともと、「オズの魔法使い」とアーサー王伝説を元ネタにしていて、ルーカスは最初は「オズの魔法使い」を考えていたらしい。実際、砂漠の惑星でおじとおばの農場で暮らし、外の世界に出ていきたいルークは、何もないカンザスでおじとおばの農場で暮らし、虹の彼方へ行きたいと思ったドロシーとそっくりです。しかも、ハン・ソロがかかし、C3POがブリキ男、チューバッカがライオンだという指摘もありました。
実際、ルーカスは主人公を少女にしようと思っていたのですが、少女だと逃げるばかりなので少年に変えた、という話もあります。なので、今回の映画が女性が主役なのは、ある意味、ルーカスの「オズの魔法使い」の原点に返ったとも言えるわけ。ただ、ヒロインのレイは外の世界へは行きたがらず、宇宙へ出ても帰ることばかり考えていますが、ドロシーもオズの国へ行ったあとはカンザスに帰ることばかり考えているのです。
一方、ルーカスは主人公を少年にすることで、そこにアーサー王伝説の要素を加えます。アーサーは悪い王ウーサーの息子でありながら、自分は立派な王になり、理想の国を作ろうとします。ルークの父がダース・ヴェイダーことアナキンであり、ルークは父とは違う立派な騎士になろうとするように。また、アーサーにはマーリンという魔法使いがついていますが、ルークにはオビワンという師がいる。そして、レイア姫とハン・ソロが王妃グエネヴィアと騎士ランスロットを連想させます(アーサー王伝説では三角関係になってしまいますが、「スター・ウォーズ」ではルークとレイアを兄妹にすることで三角関係を避けています)。
ブアマンの映画「エクスカリバー」は、「スター・ウォーズ」がアーサー王伝説をもとにしているので、それならアーサー王伝説の映画を作ろう、ということでできた映画だと、公開当時言われていました。アーサー王伝説の映画では現在でもこの「エクスカリバー」が最高傑作であることは間違いないですが、「フォースの覚醒」にはこの「エクスカリバー」を思わせるシーンが後半に登場します。
1つは、ルークのライトセイバーに触れたことで過去を思い出し、自分の運命を知らされたレイが森に逃げ込むシーン。「エクスカリバー」では、岩にささったエクスカリバー(王になれる者しか引き抜けない剣)を引き抜いてしまったアーサーが、王の責任の重さに森へ逃げ込むシーンがありました。
もう1つは、レイとフィンが悪役カイロ・レンと対決するシーン。転げ落ちたルークのライトセイバーが、カイロ・レンを素通りしてレイの手に収まるシーン。これはアーサーが思いがけずエクスカリバーを抜いてしまったシーンに相当します。
そしてもう1つ、カイロ・レンが父であるハン・ソロを刺し殺すシーン。ここが「エクスカリバー」のラスト、アーサーが息子モードレッドに刺し殺されるシーンにそっくりなのです。「エクスカリバー」ではそれは黄昏のシーンになっていますが、「フォースの覚醒」では太陽がしだいに光を失っていくシーンになっている。ここも符合しています。

「フォースの覚醒」の話を聞いたとき、カイロ・レンはモードレッドだろうと思いました。
彼はハン・ソロとレイアの息子ですが、アーサー王伝説でいうとモードレッドにあたる人物です。
モードレッドは伝説ではアーサーがグエネヴィアと結婚する前に、姉とは知らずに関係を持った女性との間に生まれた息子です。王の息子ではあるけれど、婚外子という複雑な立場。「エクスカリバー」では伝説を変えて、結婚後に姉にだまされて関係を持ち、生まれた息子というようになっています。
カイロ・レンはルークの息子ではないのですが、アナキンの孫ではあります。レイアの父がアナキンなので(まさか、実はレイアとルークの息子だった、なんてことはないよね? いくらなんでもディズニーで近親相姦はないでしょう)。
で、カイロ・レンはルークに預けられたけれど、悪いやつに暗黒面に導かれ、アナキンというよりはダース・ヴェイダーにひかれてしまったのだという設定。が、アナキンと違って完全に暗黒面に落ちていないので、迷いがある。ダース・ヴェイダーと違ってさっさと顔を見せてしまうのだが、わりと子供っぽい顔で、幼い感じ。でもって、レイアとハン・ソロは、まだ息子を救える、と思うのだけど、この両親、息子が暗黒面に落ちたんでそのショックで別れてしまったみたいなんだけど、ちょっと、育児放棄してないか、て感じはします。
で、このあとは予想なんだけど、カイロ・レンは自分がルークの後継者になれると思っていたら、そこにレイが現れて、レイの方が後継者になってしまった、なのでグレて暗黒面に落ちたんではないかい? というのも、レイはルークの娘、という説があって、それだと、最初はカイロ・レンを後継者にしようとしていたけれど、ルークに娘が生まれたらそっちが後継者になってしまい、という可能性があるのですね。養子でかわいがられていたら、実子が生まれて、親は実子の方をかわいがる、というやつ(ディズニーではそこまでやらないですかね)。
レイが砂漠の惑星に置き去りにされたのも、カイロ・レンがレイを殺そうとするから隠したのじゃないかと思うのですよ。
カイロ・レンとレイが兄妹で、という説もあるのですが。
ちなみに、ハン・ソロはカイロ・レンをベンと呼んでいて、これが本名らしい。ベンといえばオビワンの別名。
とりあえず、いろいろと謎を残したまま、映画は終わります。
エンドクレジットでは、配給元のディズニーの名前が最後に出ますが、非常に控えめな出し方で、ディズニー、大人の対応じゃん、と思いましたが、ここでディズニー色出してファンから抗議殺到だと続編作れないもんね。