これはすばらしい。映画技法としての「シン・ゴジラ」評。
http://realsound.jp/movie/2016/08/post-2491.html
実は私、庵野監督ってよく知らないんですよ。エヴァとか見てないし。
しかし、この映画評は庵野監督の映画製作の方法から「シン・ゴジラ」を分析していて、なかなかに面白かった。
アニメを作るようにして実写映画を作ったとか、アニメのキャラのような演技をする俳優を使ったとか、目から鱗ですね。
確かに、石原さとみは日系人に見えないけど、その理由は英語が下手だからじゃなくて、日本語がうますぎること、そして、日本人ののっぺりとした顔だからなんです。
そういえば、日本のアニメって、欧米人のキャラも日本人ふうののっぺりした顔ですね。
また、もう1人のヒロイン、女性科学者の尾頭ひろみもまさにアニメや漫画のキャラです。彼女が人気なのもわかる(私も好きです)。
前半のユーモラスなシーンや、セリフがやたら早口とか、途中でセリフが以下略みたいになる感じとか、私はそこが面白くて好きなんですが、これは実写映画のリアリズムではない。確かにアニメ、いや、むしろ漫画のリアリティに近い、とは言えます(そこがまた、私には面白かったんです)。
ゴジラの変身とかはじっくり過程を描いているのに、それに対する対策が過程省略になっている、というのも鋭い指摘です。日本人がんばるっていっても、それは荒唐無稽なファンタジーよね、と思ってしまうのはそういうところにあるのですね。
「新幹線大爆破」に言及しているのも我が意を得たりで、私も「新幹線大爆破」を連想しました。
モルモット吉田氏は最後に、映画の中心部に最初から空いていた穴を八方手を尽くして埋めた空虚感と書いていますが、この中心の穴こそ、観客が勝手に自分の思いをそこに入れてしまう空白になっているので、結果的に、この穴が映画のヒットにつながっているのです。
左派の人たちが勝手に自分の思いを入れ込んでしまうのもそこなんです。
だから、この空虚感は映画にとって欠点ではなく、むしろ利点になっていると思います。
私がこの映画にカタルシスを感じたり、多少の感動を覚えたりしても、それでリピーターにならないのもそのせいです。本物の感動は「ルドルフとイッパイアッテナ」の方にあるのです。
この映画評は納得できるものでした。そして、最後に否定的にとらえている部分も、実は長所なのだと、私は思います。私が「シン・ゴジラ」にこだわっていて、好きなのは、まさにここに書かれている要素なのです。