2017年3月29日水曜日

映画2本とSF小説

先週の火曜にアンジェイ・ワイダの遺作「残像」の試写を見たあと、風邪をひいて寝込んでしまい、1週間遠出もせずにすごしていた。
その間、テッド・チャンの中短編集「あなたの人生の物語」がようやく予約の順番が来て借りられたので、読んでいた。
この「あなたの人生の物語」の表題作はアカデミー賞でも話題の映画「メッセージ」の原作なので、予約も順番待ちになっていたのだけど、はたしてこれがどういう映画になるのか? 「インターステラー」みたいになるのかな、という気がしないでもないけれど。
テッド・チャンは中短編をまだ20編くらいしか出していない寡作なSF作家だが、科学や数学を題材にした実にSFらしい作品ばかりだった。個人的には最後から2番目にある天使の話と、最後の美醜についての話が一番面白かった。

ワイダの遺作「残像」は、ポーランドで第二次大戦終戦直後くらいまでは国を代表する画家で、大学教授としても活躍し、美術館を設立したりと活躍していたのに、1949年に突然、国が社会主義リアリズムの芸術しか認めなくなり、迫害されて、1952年に亡くなったヴワディスワフ・ストゥシェミンシュキの実話。
戦争で片腕と片脚を亡くすが、芸術家・大学教授として活動し、学生からも慕われていたのに、ある日突然、国の方針が変わり、それに従わなかったために仕事を奪われ、食べるものにも困るようになる。この、従わない者への徹底的な弾圧がものすごい。
ワイダも社会主義時代のポーランドで映画が撮れなくなったことがあり、こうした国家による個人への抑圧をこれまでも描いてきたが、「残像」に描かれたことは現在も、それも社会主義ではない国で起こっている、起こりつつある。日本も道徳の教科書の件とか、かなり抑圧的になっている。
また、ストゥシェミンスキが弾圧された時代がアメリカのマッカーシズムの時代と重なるのも興味深い。

1週間おとなしくして本を読んでいたが、今日はアニメ「夜は短し歩けよ乙女」の試写に行ってきた。
非常に盛り沢山な内容で、これをよく93分にまとめたと思う。
最初は絵が手抜きっぽく感じたのだが、後半に行くにしたがって、これがこの作者のユニークな表現なのだなとわかってきた。クライマックスのミュージカル仕立てもいい。
同じ湯浅政明監督の「夜明け告げるルーのうた」の試写日程が資料に入っていた。もう試写は半分くらいは終わっているようだが、できれば見に行きたい。