2017年7月20日木曜日

「パターソン」(ネタバレあり)+1

水曜日は久々の試写。
ジム・ジャームッシュの新作「パターソン」を見る。
ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手で詩作を趣味とするパターソン(アダム・ドライバー)。ローラという名の妻と愛に満ちた生活をしている。
その彼の月曜から日曜までの1週間を描く映画。
テーマは詩作で、もともとパターソンはウィリアム・カーロス・ウィリアムズやアレン・ギンズバーグが住んでいた町。ウィリアムズには「パターソン」という詩集もある。
パターソンはノートに詩を書いているが、パソコンもスマホもやらない彼の詩が失われることを恐れる妻がコピーを取るようにすすめる。が、コピーを取る前に悲劇が。。。
キーになるのは夫妻の愛犬。カンヌ映画祭でパルムドッグ賞を受賞するも、受賞前に亡くなってしまったとか。映画はこの犬に捧げられている。
この犬、毎日夜にパターソンが散歩に連れていき、その途中で犬を外につないでパターソンはバーでいろいろな人に会う。バスの中でもいろいろな人に遭遇する。なぜか双子が何組も登場する。双子の姉を持つ少女が自分の詩を暗唱するが、なかなかすばらしい詩。
で、そのキーになる犬なのだけど、パターソンが毎日帰宅するとなぜか郵便受けの支柱が傾いていて、実は(以下ネタバレになるので自粛)。
この犬がパターソンに対してどんな感情を抱いているのか、ちょっと考えさせられます。
(自粛とか言いながら、なんとなくネタバレしてしまっているような)
妻のローラはペトラルカのソネットに登場するラウラという女性の話をする。ラウラはローラとつづりが同じ。ローラのイタリア読み。ペトラルカのラウラはダンテのペアトリーチェと同じで、詩人を導く女性。妻のローラは詩人パターソンを導く女性なのだ。それを邪魔する犬?(ダンテは映画の初めの方に絵で登場する)。
土曜日に詩のノートの悲劇が起こり、その翌日、日曜日にパターソンは日本人の詩人と出会う。「ミステリー・トレイン」以来27年ぶりのジャームッシュ映画出演の永瀬正敏。ウィリアム・カーロス・ウィリアムズの「パタースン」の翻訳書を手にしている。せっかく大きな日本語で「パタースン」と書いてあるのだから、映画のタイトルも「パタースン」にしてほしかった。
パターソンというのは、パターが父親を連想させる言葉で、ソンが息子。父と息子が共存しているような名前だ。
ふたたび詩作を始めるパターソン。新たに書かれた「ザ・ライン」という詩はすばらしい。
映画で使われた詩はロン・パジェットという詩人が提供したものだそうだ。手書き文字が画面に浮かび、パターソンの声がそこにかぶさるシーンが何度も出てくるが、詩作の本質のようなものが垣間見えたような気がした。

と、非常にしんみりする映画なのだが、エンドクレジットが始まった途端、最前列ど真ん中の男がいきなりスマホの画面を全開にして強烈な光を発した。
最前列ど真ん中だから試写室にいる全員に見えただろう。
エンドクレジット見ないでスマホ見るならさっさと帰ればいいのに、と思っていたら、注意した男性がいて、さすがにスマホをしまったが、普通の映画館でもめったに見ない光景だった。
そういえば、試写の前にあいさつする人がスマホや携帯についての注意をしなかった。試写に来て、しかも最前列中央をとるような人なら早くから試写室の入口に並ぶような試写会なれした人だろうと思うのだが、この人はいったいなんだったのだろう。
このところシネコンや映画館ばかりで、試写はあまり行かなくなり、最近は喉がおかしかったこともあって、本当に久々の試写だったのだけど、ちょっと行かない間に試写室もマナーが悪くなったのだろうか。

そのあとはこちらも久々の「君の名は。」を見に川崎チネチッタへ。
チネチッタは3回目だったが、レディスデーのせいかどうか知らないけど、なんだかこれまでになく雰囲気がよくないというか、特に始まったばかりの頃はなんとなくざわついていて集中できなかった。後のやつも座席蹴るし。
そんなわけで、これが20回目の「君の名は。」だったけれど、今までで一番落ち着かなかった。
思えばレディスデーでこの映画を見たのはこれが2度目で、最初は3月の「君の名は。」展へ行く直前。去年始まったばかりの頃に初めて見て、その後いろいろ考え続け、しだいに自分の中で映画が理想化されていってしまい、2度目を見たらやっぱりたいしたことなかった、とわかるのが怖くてなかなか2度目を見れなかったのだけど、その展覧会のために直前のレディスデーに行って見た。でも、このときは別に問題なかったけどなあ。
というか、このとき、映画が自分の理想化よりさらにすばらしいことがわかり、ついにリピーターになったので、雰囲気はよかったのだろうと思う。
来週はDVDなどのディスクも発売され、私もブルーレイのプレーヤーもないのにコレクターズ・エディションとDVDの両方を予約してしまったのだけど、手に入ったらとりあえずDVDを見るだろうから、その前にもう一度映画館で見たいと思って行ったのだったが。。。
映画館の方は、キネマ旬報シアターで今週末から上映。来週末からは新海誠の過去作も上映されるので、こちらでもまた見ると思うけれど、その前に音響のよいチネチッタでもう一度と思ったのだ。ただ、チネチッタは音はいいけど、画面は少し暗いと気づいた。なかなか理想の環境はないものです。