2018年5月14日月曜日

「リズと青い鳥」と「レディ・バード」(ネタバレあり)

「映画 聲の形」のスタッフによる新作「リズと青い鳥」。
女子高の吹奏楽部に所属する2人の少女のdisjointな関係を描くアニメ映画。
そういえば、「聲の形」もコミュニケーション不全のようなものがテーマで、耳の不自由な少女を中心とした高校生たちの意志疎通の葛藤が描かれていた。
「リズと青い鳥」は音楽をやっている少女たちの話だが、主役の2人の少女、みぞれとのぞみは親友でありながらお互いを理解できないでいる。

わかりやすかった「聲の形」と比べ、非常に省略が多く、しかも原作小説やそのアニメ化を知っている人の方が有利なようで、知らなくても見られるようにはなっているが、知らないので何とも言えないみたいな感想を抱いてしまうところも少なくない。
それでもネットには非常によい意見が一般の観客から多数出ていて、大変参考になるし、やはり優れた映画なのだと実感できる。

「聲の形」と並んで思い出したのは、アカデミー賞作品賞にノミネートされた「レディ・バード」だ。「リズと青い鳥」とは鳥つながりもある。
この映画、4月に試写で見せてもらったのだが、確かによい映画であるし、共感する人も多いだろうと思ったが、私にとってはこの映画は無縁な世界と感じた。
ヒロインの母親を演じたローリー・メトカーフがアカデミー賞の助演女優賞候補となり、同じくヒロインの母を演じた「アイ、トーニャ」のアリソン・ジャネイとの一騎打ちでジャネイが受賞したが、トーニャの母が完全な毒母であるのに対し、レディ・バードの母は毒母ではない。彼女は彼女なりに娘を愛しているが、ついつい、娘のやることにいちいち文句をつけてしまう。娘は母に認められたいという気持ちが強く、認めてくれない母を憎む。愛しているのに愛してくれない、というのが娘の気持ちで、愛などないトーニャの母とはまったく違う。
この、愛しているのに、愛してほしいのに、というレディ・バードのある種の母親依存は、わかることはわかるのだが、私自身にとってはレディ・バードと母の関係は遠い世界、自分には無縁な世界で、だから共感も感動もできなかったのだ。

しかし、鳥つながりの「リズと青い鳥」を見て、みぞれとのぞみの関係は、あるいは、リズと青い鳥の関係は、レディ・バードと母の関係に似ているかもしれないと思った。
みぞれとのぞみの所属する吹奏楽部は「リズと青い鳥」という小説をテーマにした曲の練習をしている。ヨーロッパの町に住む孤独な女性リズは、ある日、青い髪を持つ少女を助け、彼女と仲良くなる。だが、少女は実は青い鳥の化身であり、自分は彼女を籠に閉じ込めていると気づいたリズは、少女を外の世界へ飛び立たせる。
リズにとっても、少女にとっても、別れはつらいのだが、少女=青い鳥のためにリズはあえて彼女を外の世界に送り出す。
高校3年生のみぞれとのぞみは人生の転機を迎えている。中学時代に親友のぞみに誘われてオーボエを始めたみぞれは音大に進学することを勧められるほどの才能の持ち主だが、のぞみをはじめ他の部員は音大をめざすほどではない。
一方、みぞれは自分の意志を持たず、のぞみ以外の人とはつきあおうとせず、ひたすらのぞみばかり見ている。みぞれののぞみに対する愛はレズピアンというよりは母親への依存や独占欲に見える。リズと少女の関係がどちらかというと母と娘のようだったように。
のぞみは外交的で友達も多く、部員たちからも信頼されている。みぞれの依存的な愛に対し距離を置こうとするようなところもある。その一方で、自分も音大を受けると言って、みぞれを音大に行かせようとするようなところもある。依存するみぞれにつきあおうとするかのように。
みぞれとのぞみはどちらがリズでどちらが青い鳥なのか。それが物語のひねりになっているが、最後まで見ると、のぞみとみぞれの関係は母と娘のようにも見える。みぞれは自分がリズのつもりだったが、羽ばたいていくべきはみぞれの方だった。
数学の参考書を手にするのぞみは、理系の大学に進むのかもしれない。だが、音大と理系に別れても、そこで2人の関係が終わるわけではない。最後にdisjointがjointになるが、互いの違いを認めてこそはじめてつながれる、ということかもしれない。「レディ・バード」の最後に母と娘が和解できたように。

「リズと青い鳥」の缶バッジ(追記参照)を配っていた。「聲の形」のときも特典配布の日に行ったのだけど、夜の回だったので配布終了していた。今回は土曜日から配布で日曜でももらえたので、あまり客が入っていないのだなと思う。
下の写真の真ん中が当たりました。
(追記 下の3人のキャラ、見覚えないな、と思っていたら、「リズと青い鳥」のキャラではなく、京都アニメーションの他の3作品のキャラと判明。左は「リズ~」の本家作品のヒロインですが、真ん中と右は全然関係ない話のキャラのよう。で、ファンは右の男の子がほしいらしい。缶バッジ配布の12日、新宿ピカデリーがどの回も埋まっていたのは、何度も入場して男の子のバッジを手に入れようとするファンが多かったから?)