2018年6月12日火曜日

HINOMARUの歌詞について

RADWIMPSが「HINOMARU」という歌を発表したせいで私が一番困るのは、「君の名は。」と「空海」をこれまでと同じ気持ちで見られなくなることだ。
「空海」はまだいい。ラスト、楊貴妃に抱かれる黒猫の場面でBGMが途切れたとき、音を消してしまえばいいのだ。しかし、「前前前世」や「スパークル」などの歌がない「君の名は。」は考えられない。いや、BGMも野田洋次郎の作曲なのだからほぼ全編、野田洋次郎なのだ。
あんな歌を先に作っていたら、チェン・カイコーはもちろん、新海誠も彼を起用しなかっただろう。新海はアニメで万葉集を引用するほど日本の古典文学には造詣の深い人だから、あんなひどい「古い日本語」を書くだけで、ハイ、終了、ではないかと思う。

とりあえず、この件に関する興味深いツイッターを紹介してみる。
まずは、最近は離れていたが、RADWIMPSのファンである人の、非常にまっとうな意見。
https://twitter.com/Spinagisa/status/1005358779595046912
ここで書かれている、ラッドらしさに欠ける、洋次郎らしさに欠ける、ということは一部のファンからも指摘されている。

歌詞の中の軍歌的表現が実際の軍歌にどのように使われていたかを検証したツイート。
https://twitter.com/maboroshi840/status/1005082903741513728
国を愛する歌を作ろうと思い、参考にしたのが軍歌だったということ。国を愛する歌=軍歌、という発想で、これが皮肉でもなく、深い思想があるわけでもなく、なんとなくやっちまった感。

もともと、ワールドカップのテレビ放送の主題歌として作られた歌の、昔でいうB面に相当する歌のようだから、サッカーの応援歌の意味もあって戦いの歌にしよう、という意図があったのかもしれないが、本人の釈明にそのようなことはいっさい触れられていない。サッカーの応援歌だから、と言った方が少しは納得してもらえただろうに。
冒頭の部分、日の丸がはためくのを見て感動する、みたいな歌詞は、オリンピックで日の丸が上がると感動するという発想からなんだろう(古から、っていうのは、日の丸は明治以降なんで、全然古からじゃないが)。が、そのあとが全然オリンピックの国旗じゃなくなってくる。

とにかく日本語がひどい、愛国者として許せない、というのはこれ。
https://twitter.com/ray_fyk/status/1005403722921283584
レスの部分が笑えます。あれだと「空海」で空海が卍を書くのは空海がナチスだからになっちまいそう。マジ、卍は「空海」の頃にも言われてたなあ。

これはファンによる擁護のブログ記事ですが、そこに引用されている野田洋次郎の言葉が、また頭抱えてしまう。
http://www.noraneko.tokyo/?p=3668
「日本ってさ、すごくて、もう七十何年間戦争してなくて、それ日本の歴史上でほとんどなかったことなんですよね。」
あの、江戸時代。。。
この人、戦国時代から急に明治維新になったと思ってるとか?
帰国子女とはいっても10歳で帰国、名門私立中学に入り、大学は慶応なので、学校の勉強は一応きちんとやってるのですよね?
国を愛するなら、とりあえず、日本語と日本史と日本の古典文学をやりなおした方がいいと思う。
そういうものを含めての、日本という国なんだが、この人の愛する国って?

あ、歌詞はこちらです。
http://j-lyric.net/artist/a04ac97/l0469f5.html
最初の2行は、好意的に見れば、オリンピックで日の丸が上がったときの気持ち、ね。
次の2行で、いきなり、自分たちの体に流れる死んだ人の魂、が出てくる。
死んだ人って誰? 先の戦争で死んだ人たちでしょうか?
ここでいきなり、戦争で死んだ人々を賛美し、その魂が自分たちの中にある、と言う。
戦争で死んだ人を悼む、のでなく、賛美している。靖国神社キタ。
いざゆかん、は、好意的に見れば、日本代表がんばれ。
その次からが、洋次郎の釈明(あれは謝罪とは言わん)の中の、日本の自然災害に対する言及と、あっちこっちからコピペしてきたコピペ軍歌が合体している。
敵は自然災害、自然災害との戦いを歌った軍歌、って解釈でオケ?(「シン・ゴジラ」で使えますか?)
優しき母、強き父、完全に戦前戦中の家族観。きれいごとで非現実的。
受け継がれし歴史、というのは、上の洋次郎のコメントからすると、70年以上戦争していない日本の歴史=戦後の歴史って好意的に解釈してよね、ってことでしょうか。だったら戦後の日本語を使うべき。戦中の日本語使って歴史っていえば、戦中の歴史となるのは当然。
次からが百田センセーの「永遠の0」になっちゃう。これ、特攻隊以外、何を連想するの?
宮崎駿が怒りまくりそうだが、反応しないで無視が一番。
そのあと読むと、御霊が死んだ人の魂ってことがわかってない感じなんだが、最後の部分も日本代表応援歌として見られないこともないが、特攻隊にたとえられる日本代表(白目)。

この歌詞から感じられること。
野田洋次郎は日本代表応援歌としてこの歌を作った。
同時に、国を愛するとか国旗を愛するとかいう気持ちを堂々と表明する歌を作りたかった。
そこで軍歌を参考にした。
日本語があまりに下手だった。

これからアジアツアーで中韓にも行くようで、中韓のファンも意外に寛大みたいな反応だけど、マスコミはいろいろ突っ込んでくるだろうな。その準備できてるの? あんなテンプレの形だけの「謝罪」(誰に謝ってるのかもわからん)、わけわからん釈明なんか出してるようでは。

国や国旗を愛する気持ちを堂々と表明したかった、というところは、その後の発言を見てもかなりの確信犯のようだ。
洋次郎はこの歌が軍歌と取られることはわかっていたようで、すでに削除されているが、ツイッターで、この歌は鏡だ、ということを書いていたらしい。
この歌を聞いて軍歌と思う人、戦前戦中賛美と思う人が鏡で明らかにされる、ということで、本人はそういう人は特殊な偏った一部の人だと思っていたのだろうが、開けてみたらそういう人が多数だったのでショックを受けた、ということだろうと思う。
しかし、本人は、こういう歌を軍歌と思う、戦中賛美と思う方がおかしい、国や国旗への愛を表明できない方がおかしい、と思っているから、ああいう釈明になったのだろう。
日本が過去に悪いことをしたから、国や国旗を愛してはいけないのか、というツイートを、洋次郎は英語でしている(世界に発信しちゃった)。
ああ、百田センセーは日本でしか読まれないんですが、あなたは。。。
国や国旗を愛してはいけない、なんてことはもちろんないのです。
が、自分たちは昔の人のやった悪いことのせいで国や国旗を愛することが許されないという罰を受けている、自分たちは被害者、という考え方がまずい。
そういう発想だから、なんちゃって軍歌、なんちゃって愛国歌になっている。
そう、あの歌詞は、教育勅語暗唱幼稚園のなんちゃって戦前に似ている。

いろいろ書いてきましたが、歌詞の日本語がひどすぎるのがやっぱり一番いやですね。
そして、野田洋次郎もたまにはひどい歌詞を書くんだ、ですまないところが、ね。
あの歌だけで彼を全否定するつもりはないけれど、釈明での彼の考え方が、ほかのいい歌を聞くときにも思い出されてしまう。余計なこと言わないでくれた方がまだよかった。

あ、あと、釈明にあった、みんながひとつになる、ということ、たぶん、スポーツの国際大会で日本人がひとつになって日本代表を応援するとか、自然災害のときにひとつになって、という意味だろうと思うけど、東日本大震災で絆という言葉が批判されたように、「ひとつになる」というのは非常に危険な言葉。ましてや、軍歌と結びつけば。

鋭い指摘があったので追加
https://twitter.com/logicalplz/status/1006117566480244736

鏡の件、スクショとられてたわ。

金のためじゃないのが本当は怖いんだけどね。
(追記 その後、東京オリンピックのテーマソング作らせてもらおうというアピールじゃないかとか、やっぱり金のためだという意見がいろいろ出てますね。)

あらあら、こんなものまで。

バンドメンバーが誰かわからないし、親族と同じ価値観とも限らないが、どうせならここで正しい古語を教えてもらえばよかったのに。(と思ったら、バンド名つづり間違ってるわ。あと、ネット見ると、すでにネトウヨ界隈で「愛国歌手だった」「愛国心をたぎらせた歌」「「国の防人」の執筆者がメンバーの親族」といった言葉が「朗報」として語られていて、批判者に対してはヘイトスピーチ。応援するのはお騒がせ自民党芸能人議員とか、幸福の科学に入信した芸能人とか。)