「古典新訳ラッシュに思うこと」というこのブログの記事が最近アクセスが多い。
書いた本人(自分)は何を書いたのかすら忘れていたので、読み返してみた。
新潮文庫の「風と共に去りぬ」新訳のことが中心だったので、ああ、テレビの「100分de名著」でやっているからか、と思ったが、古典新訳で検索してもその記事は全然出てこない。まあ、そんなにすごいアクセス数ではないんだけど、どこから来るのだろう、みなさま。
後半では「フランケンシュタイン」新訳ラッシュについても書いていたけれど、その「フランケンシュタイン」を日本で一躍メジャーにした中公新書を書いた京都大学教授の翻訳書が光文社文庫から出ていた。
ジョージ・エリオットの「ミドルマーチ」。なつかしい。
大学時代に文学全集で読んで、非常に魅了された作品。全集で2巻だったけれど、光文社文庫が2冊並んで立っていたので、てっきり上下巻かと思って手に取ったら、どちらも第1巻だった。
中を見ると、解説がかなりの量を占めている。これだと全4巻くらいになるだろうと思う。毎月1巻ずつ出すのだろうか。
そんなこんなでいろいろとなつかしさを感じ、アマゾンで検索などしていたら、「フランケンシュタイン」を日本でメジャーにした中公新書が出てからすでに14年もたっていることがわかった。
この新書が売れなければ、「フランケンシュタイン」の翻訳が次々と出ることはなく、この小説はSF好きや怪奇と幻想好きが読むマニアの小説にとどまっていたかもしれない。読みやすいが誤訳や訳抜けが目につくらしい光文社文庫や、女っぽい文体でやたらと尾ひれをつけて長くしている新潮文庫の訳は、中公新書のヒットで生まれたライト層に適した翻訳だったのだ。
その中公新書の京大教授もテレビに出るなどして有名になったが、古典作品の本格的な翻訳は「ミドルマーチ」が初めてではないかと思う。もっとも、翻訳者の名前で売れるほどではなさそうだが。
「ミドルマーチ」は私の大好きな小説で、ヘンリー・ジェームズの「ある婦人の肖像」と共通点もある。私が読んだのはこれ。
12年前の引越で蔵書を大量に処分し、この2冊も売ったというか、値段がつかないと言われたけど持って帰るのも面倒で、古本屋に引き取ってもらった。この全集の「鳩の翼」も同じ運命をたどり、やっぱり持って帰ればよかったとプチ後悔。
でも、文学全集は意外と公立図書館に残っているもので、「鳩の翼」は別の全集に入ったものが近所の県立図書館にある。
そして、昨日は「ムーンライト」のバリー・ジェンキンズ監督の新作「ビール・ストリートの恋人たち」の試写を見たのだけれど、ジェイムズ・ボールドウィンの原作、早川文庫で新訳が出たというけどまだ見ていない、でも旧訳があるはず、と思い、検索してみたら、市立図書館にあった。すぐに予約を入れて、近くの分館に来るのを待っているところ。ソール・ベロウやバーナード・マラマッドも入っていて、「天才作家の妻」のユダヤ系作家の件があったので、お得感いっぱいに。
というわけで、「ビール・ストリートの恋人たち」は原作を読んでから書いた方がいいと思っている。実際、映画だと主人公の若い黒人カップルと女性の方の家族以外の人物が点景という感じであまり深く描かれていないのが気になっているので、その辺を原作で確かめてみたい。