2026年4月29日水曜日

「サムライ」

 中学生の頃にロードショーされていたアラン・ドロン主演、ジャン・ピエール・メルヴィル監督の「サムライ」。なんとなく気になる映画ではあったのだが、当時は外国映画を見るには1時間余りかけて都心まで行かねばならず、中学生にはハードルが高かった。なので、映画はもっぱらテレビの洋画劇場で古い名作を、そしてたまに銀座日比谷地区の映画館へ。

1971年にテレビ放送されたらしいので、そのときに見たかもしれないが、記憶にない。ビデオが普及するのはそれからさらに10年以上あと。ビデオ化されていたのかもしれないが、その頃には特に思い出すこともなかった映画。

それが、4Kレストア版が映画館で上映。行った映画館は4Kの設備はないが、修復された美しい映像で、初めて見た「サムライ」。


アラン・ドロン演じる孤独な殺し屋が、仕事で男を殺したあと、容疑者にされ、さらには命も狙われ、という話を、クールに淡々と描く。映像と、そして、鳥の鳴き声を含む音響がすばらしい。音が語っている映画。

トレンチコートに中折れ帽子という目立つ格好で、しかも顔もバレバレなのに、なぜか目撃者の多くは犯人ではないと言う。婚約者とされる女性(ナタリー・ドロン)にはアリバイをばっちり頼んでいる。しかし、警察は絶対にこいつが犯人だと思っている。

ヒロインはナタリー・ドロンではなく、カティ・ロジェ演じる黒人の女性ピアニストで、クライマックスからラストまでのわずかな時間の彼女とドロンのやりとりと、そして意外な結末が、驚くほどみごとに決まっている。

美形の俳優はあまり好みではなかったので、中学時代、大人気だったアラン・ドロンも特に好きではなかったが、今見ると、その美しさにはほれぼれとする。他の映画より、表情を見せないこの映画のドロンの方が美しいかもしれない。