2016年4月17日日曜日

「ルーム」@日曜のシネコン

私のイチオシ映画「フランク」の監督の新作「ルーム」をそろそろ見に行かなければと思ったが、比較的近くの松竹系のシネコンではやっていない。東宝のシネコンはどこも遠く、結局、以前行った日本橋のシネコンを予約。が、当日は暴風雨で電車が遅れ、少しあせった。以前は地下鉄オンリーだったけれど、今は地上を走るJRなので、天候の影響が大きい。
「ルーム」は脚本も書いた原作者の作品という感じで、「フランク」のような変わった映画の監督の個性は感じられなかったが、監禁部屋で生まれ、外の世界を知らず、母親以外の人間と話をしたことのない5歳の少年の見た世界として面白い。
母親である若い女性は少年を絶対に監禁の犯人に会わせない。犯人を父親として認めたくないからだ。また、犯人が少年に父らしい感情を抱いたり(実際、ラジコンのプレゼントを差し入れする)、少年が犯人を父と思ったりするのを徹底的に排除している。17歳で誘拐され監禁された女性にとって、少年は犯人とは無縁の自分だけの子供であり、その息子を生きがいとしてなんとか生き抜いている。
犯人は実は住宅街に住んでいて、納屋を改造して外に音が漏れない部屋を作っているようだ。また、部屋の鍵も番号式で、番号は犯人しか知らない。そんなわけで、息子をいつまでもこの狭い世界にいさせるわけにはいかない、外の世界に行かせたいと思った女性はついに脱出を決意。が、その方法というのが息子が死んだことにして、敷物にくるんで、男に死体を外に持ち出すように言う、というのだけど、これはけっこう危険な方法のような気がしたが、それ以外に方法はないようだった(そのくらい、男が周到に準備して誘拐したので、しかも、男は最近失業して金がないようなので、今脱出しないとこれからどうなるかわからないということもあったのだろう)。
とにかく脱出に成功。男は逮捕されるが、母子の苦難はそれからも続く。
監禁されていた7年間の間に、女性の両親は離婚して、母は再婚していた。救い出された娘と孫を見て、母親は無条件で孫を受け入れるが、父親は孫が犯人の息子だと思うと顔を見ることができない。救いは母親の再婚相手で、子供を扱うのがうまく、義理の孫と打ち解けるようになる。
一方、マスコミの対応は日本とは違って遠慮がなく、マスコミ対応にお金がかかるので女性にテレビ出演を持ちかけるとか、日本ではちょっとありえない。その収録で女性はひどいことを言われる。子供が生まれたときに、犯人に、病院の前に置いていってくれと言えばよかったのに、自分のために子供を手元に置いた、みたいなことを言われ、女性は自殺未遂を起こす。
全般に、子供に対するケアはあるのに女性に対するケアがないと感じるが、救出されたときにはすでに成人とはいえ、相当なケアが必要なのにテレビに出すとか、ちょっと非常識だ。
そうしたなかで5歳の少年が成長し、母親以外の大人ともつきあえるようになり、やがて同世代の友達もできる。母親の力になろうとさえ思うようになる。この少年の健気さと成長が救いになる。
舞台はアメリカだが、アイルランドとカナダの映画で、おもにカナダで撮影されたようだ。そのあたりの根っこがどこかわからない感じが、少し不満が残る。