ノオミ・ラパスが七つ子の姉妹を演じる「セブン・シスターズ」。
舞台は近未来、地球上の人口が増えすぎて一人っ子政策をとる社会。第一子以外は冷凍されて人口が減ったときに解凍することになっている。
そんな中、七つ子として生まれた姉妹を祖父が月曜から日曜までの曜日の名前をつけ、各自は自分の曜日のときだけ外に出て、7人で1人の人格を演じるようにさせる。そうして30年間、姉妹は七つ子だということを隠して生きてきた。
という、なかなか凝った内容で、顔がそっくりの7人姉妹を演じ分けるノオミ・ラパスの演技が見ものなのだが、ストーリー展開はのっけからツッコミどころ満載。
祖父と孫娘1人として暮らしていても食料や服や日用品は8人分必要なわけだからバレるだろうに、とか、一人っ子政策するんだったら生まれる前に、いや妊娠する前に対策しろよ、とか。
その後、長女の「月曜」が月曜日に銀行へ出勤したまま帰らなくなり、火曜日から6人姉妹が様子を探るが、姉妹をねらう当局がすごい暴力集団を繰り出して彼女たちを始末しようとする。
そこで姉妹の住む部屋に死体がいっぱい出るんだけど、あの死体、どうしたの?とか、あんなにドンパチやってるのにこの世界には姉妹と暴力集団しかいないのかよ、とか、ノオミ・ラパス強すぎ、とか、当局のやってることってなんか変じゃね?とか、まあ、次々と疑問が浮かぶのであるが、まあ、そういうところ、いちいち気にしないで楽しもうよね、と思いさえすれば大いに楽しめる。
ラパスの演技はすばらしく、七つ子の姉妹1人1人を別人格として演じ分けている。1人1人特徴がある。なかでも中心的なヒロインである「木曜」はまわりに合せないタイプ、逆に長女の「月曜」は姉妹のために自分を押さえてきた。この正反対の2人の少女時代のエピソードが伏線になっている。その他、理系オタクの「金曜」とか、マッチョウーマンの「水曜」、プレイガールふうの(でも実は)「土曜」あたりも印象的。
姉妹のうちの何人かは殺されてしまうが、「木曜」と生き残った姉妹、そして姉妹の1人と恋仲になっていた男が協力して真相に迫る。このあたりの展開も既視感があるのだけど、ラパスの七変化がみごとで、アクションやストーリー展開もテンポがよく、飽きさせない。
東欧で撮影されたようで、主要キャストもグレン・クローズとウィレム・デフォー以外はヨーロッパ人。監督もヨーロッパ人で、アメリカが舞台のハリウッドものとは異なる味わい。このあたりもハリウッドの騒がしいアクションものに比べて好印象だった。
ところで、人口が増えすぎて産児制限をするというSF映画は1970年代からすでに存在する。が、同じ70年代に、人口が減りすぎて女性が出産を強制されるというSF小説があるにもかかわらず、映画ではこちらのテーマの映画はまず見たことがない。世界的に見て、前者の方が現実的な問題ではあるけれど、日本なんかどっちかというと後者なんでは、と思うのだが(出産を強制というよりは結婚も出産もできない経済を実行している社会なんだが、おえらいさんたちはその辺を無視して結婚出産を強制するような発言をしている)。