2017年9月4日月曜日

「ラムの大通り」

徒歩15分ほどのホームセンターに久しぶりに行ったら、DVDを500円以下で売っていた。タイトルがしょぼいのばかりだったが、その中になつかしい「ラムの大通り」が。
「冒険者たち」のロベール・アンリコ監督の1971年の映画。日本公開は確か1972年のはず。高校生のときに見て、とても好きになった映画だった。
こりゃ買いだな、と思って買った。
今見てもやっぱり好きな映画なんだけど、途中で何度か大きな雑音が入る。しかも、最後の「愛の喜び」のところで入ったのには本当にがっかり。不良品なのか、うちのプレーヤーのせいなのか。
内容は1920年代、アメリカが禁酒法だった時代に、カリブ海で酒の密輸をする男(リノ・ヴァンチュラ)が映画女優(ブリジット・バルドー)に恋をし、その後、彼女と知り合って本物の恋になる、というお話。バルドーの映画を見るまでがけっこう長いが、後半の伏線になっている。
高校生のときはバルドーはちょっと濃いお姐さんで、近寄りがたい感じがしていたが、年をとってから見るととてもかわいい。ジャンヌ・モローは今でも濃いお姐さんで近寄りがたい雰囲気を感じるけど、バルドーをかわいいと思うとは、年をとったな自分。
前半もなかなかいいんだけど、特によくなるのは後半。クライヴ・レヴィル扮するイギリス人の貴族で海賊(?)がヴァンチュラの恋仇になり、バルドーは貴族の夫人になれるというのであっさりレヴィルと結婚してしまう。結婚式でバルドーが歌う「ラムの大通り」がとてもいい。本当はヴァンチュラの方が好きなのにレヴィルと結婚してしまう彼女のかすかな後悔がにじみ出ている。そのあと、ヴァンチュラはレヴィルに挑戦的なことを言い、その結果、2人は危険な賭けをする。
クライヴ・レヴィルは当時ちょっと好きだった役者で、ビリー・ワイルダーの「シャーロック・ホームズの冒険」と「お熱い夜をあなたに」に印象的な脇役で出ていた。この「ラムの大通り」でも非常に印象的な役で、なんかすごくかっこいい。フランス人から見たイギリス人てこういうものなのかな、と思う。
その後いろいろあって、ヴァンチュラとレヴィルは逮捕されてしまい、やがて1933年、禁酒法が終わった時代が来る。釈放されたヴァンチュラがバルドー主演の映画の看板を見て映画館に入ると、20年代にはサイレントだった映画がトーキーになっていて、バルドーと相手役のギイ・マルシャンが「愛の喜び」を歌っている。ヴァンチュラの心の中で、マルシャンが自分になる。映画館が明るくなり、たった一人、座席にいるヴァンチュラ。掃除のおばさんたちが出てくる。
ウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」って、ひょっとして、これがもとになっているんじゃないだろうか。バルドーの最初の映画に探検家が出てくるし。ヴァンチュラもバルドーの映画を何度も何度も見て、最後まで映画館に残っていたのだ。
それにしても、映画の中で登場人物が映画館に入るシーンはなぜか上映の途中であることが多い。ヴァンチュラも途中から入るのだが、最初にバルドーの映画を見たとき、フィルムが燃えて映画館が火事になってしまう。当時はフィルムは可燃性だったのだ。その後、フィルムは不燃性になったが、今はもうフィルムではなくデジタル上映。「マジェスティック」で巻を替えるということがなんのことだかわからない時代になっていくのだなあ、と思った。つか、大学の授業で「カイロの紫のバラ」をやると、貧しいのにどうして映画が見られるのか、とか、1日中見ていられるのか、とかいった疑問が学生から出るのである。

追記 10代20代の頃は気に入った映画は2回以上見ていたが、調べてみたら、「ラムの大通り」も2回見ていた。最初は「帰郷」と二本立て、次が「さらば友よ」(リバイバル)と二本立て。前者が今は亡き八幡スカラ座。後者が今もある千葉劇場(ただし、改装されてシネコンになっているようだ)。高校時代は千葉県に住んでいたのである。パンフレットは処分してしまったと思う(残念)。