DVDでしか見たことのなかった「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」(旧題「ウェスタン」)を丸の内ピカデリーへ見に行きました。
「ウェスタン」は「シェーン」、「昼下りの決斗」に続く、私の好きな西部劇第3位。
3作とも正統派西部劇から見たら異端の作品ですが、ジョン・フォードやハワード・ホークスなどの正統派も好きだけど、愛着が強いのはなぜかこれらの作品。
「シェーン」は名匠ジョージ・スティーヴンス監督の名作としての誉れ高く、「昼下りの決斗」はサム・ペキンパーの初期の作品なので新しい才能として注目されただろうと思いますが、マカロニ・ウェスタンの巨匠として地位を築いていたセルジオ・レオーネの「ウェスタン」は初公開当時はあまり理解されてなかったらしい。
文芸路線のスティーヴンスが、とか、ペキンパーという新しい才能が、じゃなくて、巨匠のレオーネが異端の西部劇を作ったから当惑されてしまったのか?
遺作の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」もそうだけど、「ウェスタン」も「~アメリカ」もアメリカで受けなかったのがそもそもの不運で、それでどちらもアメリカでは短縮版にされて公開されたから余計正しく理解されなかったようだ。
日本でも「ウェスタン」は短縮版の公開だったので、完全版の劇場公開は今回が初めてのとのこと(DVDは完全版)。
一方、日本での「~アメリカ」の初公開も短縮版だったのだが、これはアメリカとはまったく違う短縮版で、その辺の事情はキネ旬に書いたが、日本には完全版が来ていたのに、大人の事情で20分ほど切られてしまったのだ。
今年のはじめに午前十時の映画祭で「~アメリカ」の完全版にさらにプラスしたディレクターズ・カットが上映され、そして今度は「ウェスタン」の完全版が「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」と原題どおりのタイトルになって27日金曜日から公開。レオーネの代表作が2本とも映画館で完全版が上映されてなくて、何十年もたってやっと両方の完全版が公開されたわけで、まあ、長生きするもんだと心から思ったのであります。
ちなみに、「ウェスタン」が新宿プラザのこけら落としで公開されたときのことはよく覚えているのですが、当時、まだ中学生だった私はマカロニ・ウェスタンが苦手で、レオーネの映画は見ようとも思わなかったのです。なので、だいぶたってDVDで見たのが初めて。
「~アメリカ」の方はマリオンの日劇のこけら落としだったので、レオーネの2作は新宿プラザ、日劇という、東宝の顔になる映画館のこけら落としに選ばれたのだから、どちらも期待された作品だったと想像できます。が、「~アメリカ」は大ヒットして、観客にも評論家にも高評価だったけれど、「ウェスタン」はあまり理解されずヒットもしなかったらしい。
「ウェスタン」に関しては当時のことはあまり記憶にないのだけど、どうだったのだろうか。
というわけで、35年前に「~アメリカ」がこけら落としとして上映された日劇のあったビル、マリオンの日劇プラザの向かい側にあった、そして今もある丸の内ピカデリー1で「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」を見てまいりました。
しかし、なんだな、私はやっぱり「ウェスタン」のタイトルの方が愛着があるなあ。「ワンス・アポン~」のタイトルはこの映画が元祖とはいえ、やはり今ではこのタイトル、ちょっと手垢がついた感じがあり、慣れ親しんだ「ウェスタン」のタイトルの方が好きだ。
古い映画を別のタイトル、特に原題に忠実なタイトルで再公開することは時々あるけれど、新しいタイトルの方が定着したことは果たしてあるのだろうか。
「ウェスタン」の頃はそのままカタカナ・タイトルというのがほとんどなかった時代で、仮に原題どおりにするなら「昔、西部で」のような和訳にせざるを得なかっただろう。
私は「ウェスタン」というタイトルは味があってよいと思うんだよね。
「西部劇」が正統派の西部劇だとしたら、「ウェスタン」って、ちょっと異端ぽくてよくない?
異端の西部劇のタイトルとして、けっこういいんじゃないかと思うのです。
この映画と「~アメリカ」がなんでアメリカで受けなかったというと、それは、アメリカの物語をヨーロッパの文法で映画にしてるからだと私は思っています。
アメリカ人の立場に立てば、きっと気持ち悪いだろうな、てのは想像できる。
なんというか、あの、えんえんと引き伸ばしていく描き方とか、もう全然アメリカじゃないわけで、なのに話はアメリカ。日本の話を全然日本じゃない描き方で描かれたら、と思うとわかる気がする。
アメリカはさ、もっとテキパキしていたいんだよね。
でも、日本人にはあのヨーロッパ的えんえんが感覚的に合うと思うのだけど。
だから、「ウェスタン」が日本でも理解されなかったのってのはどうなのかなと少し興味がある。
それはさておき。
丸の内ピカデリーの大画面で見る「ウェスタン」はやはり最高でした。
音響がまたいいんだよね。
閉館した日劇3館は、ラストショウのときは音響ひどかったけど、丸の内ピカデリーはかねてから音響に力入れてたから違うわ。(日劇の方はおしゃれなプラネタリウムになっていました。)
丸の内ピカデリー1のスクリーンは幅が15メートルかそこらで、これより大きいスクリーンのあるシネコンは珍しくないけど、いつも行くようなシネコンの最大スクリーンと比べても、丸の内ピカデリーの方が迫力を感じる。
シネコンのスクリーンは上下左右に黒い部分がある=スクリーンを全部使っていない場合がけっこうあるけれど、ここは上下左右いっぱいに映像が映るから。
あと、2階席があるので、天井が高いのも影響してるのかな。
なにかとにかくシネコンとは全然違う雰囲気。来たのは5年ぶりだったけれど、ここが残ってくれていてよかったと思う。
とりあえず、この映画を見ようと思っている首都圏の方は、ぜひとも丸の内ピカデリーで! 上の写真のようなポスターの展示があります。2階席もいいけれど、1階の真ん中か少し前の列から見上げるのがおすすめ。実際、そのあたりの埋まり具合がよいです。
丸の内ピカデリーは午前中と夜の上映だけど、土曜日は午後の回だったので、帰りが遅くならないですむのでこの回にしました。最後に映画評論家2人のトークショーがあり、そこで気になる情報が2つありました。
まずは、宝塚が「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の舞台化をするということ。
こちらですね。
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2020/onceuponatimeinamerica/index.html
ミュージカル化とのことだけど、実はこの映画、腐女子とかBL好きの女性に大変人気があるのですよ。
かくいう私もかなり腐女子的にこの映画が好きであることは否定できません。
この辺、男性にはわかりにくいでしょうが、宝塚でやるのは非常に納得できるのです。
主役が男性2人と女性2人というのも、「ベルサイユのばら」や「風と共に去りぬ」と同じで、宝塚とは相性がいいはず。
なので、期待しちゃうのですが、宝塚はチケット入手困難、ライブビューイングのチケットもすぐ売り切れるらしいので、チケットを手に入れること自体が非常に困難かもしれません。宝塚友の会ですら抽選ですと。
もう1つは、映画館でリバイバル上映中だというのに、来週、NHKが放送するのだと。
調べてみたら、10月1日の午後、BSでの放送。
平日の午後だし、BSだからあまり影響はないと思いますがね。テレビで十分と思う人はツタヤに行くでしょ。円盤買わずに録画で済ませようって人もいるかもですが。
リバイバル中にテレビ放映って、以前にもあった記憶がありますが、今回の場合、上映権と放映権が同時に別のところに売られて、それで時期がかぶっちゃったというような事情でしょうか? わかりませんが。
10月1日はサービスデーだから1200円で見られるわけで、それほど脅威ではない気がします。