久々、京橋。
「バリー・リンドン」を国立映画アーカイブでやると知ったときは下半身を痛めて歩くのも困難な時期だったので、都心まで行って3時間以上座るのは無理、と思ったが、料金安いので一応予約しといた。そして、今週火曜日くらいから急激に治ってきて、歩くのは困難ではなくなったので、出かけた。
京橋の写真はデジカメで撮影。国立映画アーカイブではデジカメ持ってるとわかると盗撮が疑われるのではないかと思い、デジカメはバッグにしまってガラケーで撮影。外観はさすがに暗くてもう撮れない。恐怖映画のポスター展やってるのは知ってたけど、この日はたまたま13日の金曜日。ジェイソンはいるのか? のぞいてみる時間はありませんでしたが。
「バリー・リンドン」のポスター。これはデジカメできれいに撮りたかった。
お客さんは私のようなリアタイシニアは少ない。どういう人が見に来ているのだろう。完売なのに空席があり、それも特等席だったりするので、前売りで気になる映画はすぐに予約して、行けたら行く、みたいな人がそこそこいるのだろうか。確かに入場料安いし、場所も便利なので、通い出すと癖になるのかもしれない。私はちょっと、今はコロナだし、自宅から近いとは言えないので、また行くかどうかはわからないが。場内、けっこう咳してる人いましたよ。私はこの映画は初公開時に10回近く映画館で見てるが、初公開時はまったくヒットしてなくて、場内はいつも静まり返っていたから、こんなに咳が聞こえる状態での「バリー・リンドン」っていうのもなんだか奇妙だった。
あと、昔笑いが起こったところで笑いが起こらず、ここで笑うのか?というところで大きな笑いが起こるのも奇妙だった。
今回は35ミリのフィルム上映というのも目玉のようで、今は映画館で上映される映画はほとんどデジタルだから、フィルムで見られるのはこれが最後かも、という気持ちはあった。ただ、フィルムだと4K修復版とかに比べて画質の劣化は避けられない。前半は明るい光や鮮やかな色彩のシーンが多いので、昔に比べて美しくなくなったという思いで見ていた。ソフトフォーカスの美しさが感じられなくなっている。
後半は渋い色や黒っぽい色彩のシーンが多いので、こちらはあまり画質の劣化を気にしないで見られた。フィルムだと暗いシーンの表現力がデジタルに比べてダントツにいいらしい。デジタルよりアナログの方が情報量が多いので、という話はよく聞く。その一方で、アナログはどうしてもノイズが多くなる。CD聞きなれているとアナログレコードのパチパチがいやだとか。デジカメだけでなくフィルムカメラも使っている写真マニアの撮ったフィルム写真を見ると、味わいがあるが、デジカメのくっきり感に慣れているとくすんで見える。「バリー・リンドン」はデジタルを映画館で見ていないので、比較できないが。
初公開時に映画館で10回近く見たあとはレーザーディスクで見ていた。トリミングされていたが、画質はよかったと思う。そのあと、DVDを見たら、画質がものすごく悪くなっていたので、これはあまり見ていない。アマゾンで検索したらクライテリオンというところから4Kが出てるので、早速注文。
「バリー・リンドン」は年をとって見方が変わったとか、新しいことがわかったとかいうことがほとんどない映画なので、若い頃の記憶の映像が悪くなってしまったものは見たくないという気持ちが強く、映画館で上映されても見に行こうとは思わなかったし、ソフトもレーザーディスクのあとはDVDを数回見た程度。だから今回は久しぶりだったのだけど、アカデミー・フィルム・アーカイヴのフィルムならそんなにひどい状態ではあるまいと思い、スクリーンで見るのはこれが最後かも、と思って行った。実際、画質は思ったほど悪くなかった。ただ、どの場面を見ても昔の記憶がよみがえるので、比べてしまう。シーンも、次はどのシーンでせりふは、というのまで思い出せてしまうので、やっぱり新しい発見とかはない。それでも至福の3時間であることに変わりはない。字幕は昔と同じ高瀬訳で、こっちもよく覚えているのだった。
前半の最後近く、レディ・リンドンが外に出るシーンと、後半の冒頭で、シューベルトの音楽が一瞬、ゆがんでいた。インターミッションの文字が出ると次々と席を立って、たぶんトイレなんだろうけど、シューベルトの即興曲が流れているのになあ。
出演者のハーディ・クリューガーとレオン・ヴィタリが昨年、亡くなっていたのだね。ヴィタリは「キューブリックに魅せられた男」のとき、子どもたちは出てくるのに奥さんが出てこないので、ああいうことにとりつかれてるから奥さんには逃げられて、今は独身なのかな、と思ったら、3番目の奥さんに看取られたようだ(結婚したのはキューブリックの死後)。あのドキュメンタリーのとき、すでに病気で、もう先が長くないのでドキュメンタリーを急いで作ったようなことが言われていたので、驚きではなかったけれど。
そして、ハーディ・クリューガーといえば、「シベールの日曜日」。