金曜日は「ノースマン 導かれし復讐者」と「エンドロールのつづき」をハシゴ。どちらもイマイチだったので疲れた。
「ノースマン」は流山おおたかの森で。
シェイクスピアの「ハムレット」の元ネタの話を、北欧神話や「コナン・ザ・グレード」で味付けした映画で、「ライトハウス」の監督の新作、ということで、一応チェックしておかねばと思い、見に行った。
シェイクスピアの劇はほとんど元ネタがあるが、「ハムレット」の元ネタの内容は知らないので、どの程度元ネタに忠実なのかはわからない。バリバリの北欧神話になっていて、ワルキューレまで出てくる。「エクスカリバー」みたいなシーンもある(ジョン・ブアマンは「エクスカリバー」でワーグナーの音楽をふんだんに使い、北欧神話の「ニーベルングの指環」の音楽をテーマ曲にした)。
映像は「ライトハウス」と同じようになかなかに渋く、グロも多い。野蛮な時代の野蛮な人々の蛮行が描かれる。
王が弟に殺され、王妃が弟の妻にされ、息子の王子が復讐するというところは「ハムレット」と同じだが、他の人物は全然違うし、ストーリーもシェイクスピアとは全然違う。
冒頭、王妃が王に寝室へ行こうと誘いをかけるのを王が断ってしまうシーンがあって、この夫婦、仮面夫婦かな、と思ったら、後半、(以下ネタバレ)王妃はもともとは奴隷で、レイプされて息子を生み、それで王妃になったので、夫の弟の方が好きで、夫を殺すよう頼んだのだ、とわかる。まあ「ハムレット」でも王妃は夫の弟の方が好きだったことはありうるなと思うが。とはいっても、このあたり、人間描写はかなり雑。
女王の出現を暗示するあたりは「グリーン・ナイト」と共通する。
「エンドロールのつづき」は柏の葉で。
これ、英語タイトルは「ラスト・フィルム・ショー」で、こっちの方が断然いいタイトルだ。
話の展開がちょっと雑というか、スムーズでないのが難点だが、インドの片田舎に住む少年が映画に魅せられ、身近にあるもので光や映像のことを知り、やがて倉庫にあったフィルムを盗んで、身近なもので映写機を作って上映する。映画館の映写技師に母親の作るお弁当を持っていって、かわりに映写室から映画を見せてもらったり、映写について教えてもらったりする。切れたフィルムをつなぐこと、映写機にフィルムをかけること。フィルムであるということがとても重要で、フィルムでなければ成立しない物語。
(以下ネタバレ)やがて映画はフィルムからデジタルになり、映写技師は仕事を失い、映写機は鉄くずにされて溶鉱炉で溶かされ、スプーンになる。フィルムも溶かされてプラスチックの腕輪になる。映画を学ぶために故郷を離れることになった少年が列車に乗ると、女性たちが色とりどりのプラスチックの腕輪をしている。そこに映画人の面影を見る少年。
「ニューシネマ・パラダイス」のたくさんのキスシーンをつなげることも、フィルムだからできたこと。フィルムだから、アナログだからできること、わかること、学べることを、この映画は伝えている。そこが気に入った。だからタイトルは「ラスト・フィルム・ショー」の方がいい。