2016年3月2日水曜日

「クリーピー」(小説、少しネタバレ)

シネコンに行くといろいろな予告編をやっているのですが、その中に黒沢清監督の「クリーピー」があった。公開は6月頃でまだまだ先なのだが、これは映画より小説の方が自分向きかな、と思ったので、原作(前川裕)を読んだ。
犯罪心理学の大学教授の自宅近辺で奇妙な出来事が次々と起こり、高校時代の同級生で今は刑事をしている男が教授を訪ねてくるが、その後、刑事は行方不明に。刑事は以前、別の場所で起きた一家失踪事件を調べていたが、その場所と教授の住む場所の家の配置が似ているのだ。
で、やがて、人当たりはいいがどこか変な隣人の男が怪しくなって、というか、映画の予告見ればこいつが怪しいのはデフォ。で、そのとおり、サイコパスの連続殺人になっていく。
前半はとにかく、いろいろな出来事や事件が出てきて、これらがどう関係していくのか先が見えない面白さがあった。後半、犯人がその素顔をあらわしたあとも次々と事件が起きて飽きさせない。
まあ、あんまり詳しいことは書けないけど、最後にもう一つどんでん返しがあったりと、なかなかよくできたプロットだった。
ただ、主人公の教授がどう見ても犯罪心理学者に見えないというか、実際、教授が授業をしているシーンは1つだけで、その内容はシャロン・テート事件なので、なんかあまりリアルじゃないというか、手垢がついてる感じ。教授は美人女子大生の卒論指導をよくやっているのだが、これもあまり具体的な指導のシーンはなく、指導のあとに彼女と食事をしながら疑似恋愛みたいな気分に浸るシーンが何度も出てくる。妻を裏切る気は全くなく、妻とは良好な関係なので、こちらは全然危険なにおいがしない。ちょっとネタバレなんだけど、犯人が教授と女子大生の「交際」を利用しようとするのがイマイチよくわからん。おまけに後半(またネタバレですが)教授が犯人と思われる男の部屋に学生と乗り込んでいくのも、それまで犯人の異常な殺人を間近に見ていたのに用心なさすぎ。武器になるものを何も持っていかないのもねえ。
そんなわけで、この人とあの人は死ぬ必要なかったんじゃない?と思うところがあって、後味が悪い。
あと、やっぱり、登場人物が平板で魅力がないことだな。女はとりあえず美人、男はとりあえず三高って感じですかねえ。
と、欠点ばかり指摘してしまいましたが、面白かったのは事実です。一読の価値あり。
映画はきっと原作より怖いと思います(最近、怖いの苦手)。