2017年5月10日水曜日

「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」(ネタバレあり)

マイケル・キートンがマクドナルドの自称・創業者(ファウンダー)、レイ・クロックを演じる「ファウンダー ハンバーバー帝国のヒミツ」を見た。
キートンといえば、「バードマン」、「スポットライト」と2作連続主演作がアカデミー賞作品賞を受賞。なのでかどうか知らないが、クロックが映画館で見るのは1954年の作品賞受賞作「波止場」。
しがないセールスマン、クロックが、カリフォルニア州のあるハンバーガー店がミルクシェイクを作るマルチミキサーを8台も注文したので、いったいどういう店だろうと思い、はるばる中西部から見に行くと、店には大行列。しかし、注文してすぐにハンバーガーが出てくるので列はどんどんはける。店の前にはベンチが少しあるだけで、そこで座って食べていると、店のオーナーが来て、ミキサーのセールスマンだとわかると店内を見学させてくれる。
店のオーナーはマクドナルド兄弟。店の名前はマクドナルド。徹底した効率のよさで次々と注文をさばく。商品はハンバーガーとポテトとドリンクのみ。ハンバーガーもポテトもうまい。
これは全国的なチェーン展開すべき、と提案するクロック。手を広げるとクオリティが保てない、と反対する兄弟。しかし、クロックに押され、フランチャイズを彼に任せることになる。
という実話の映画化で、前都知事のような顔のキートンが最初は試行錯誤しながら、やがてフランチャイズを成功させ、しかし、初心を貫きたいマクドナルド兄弟と対立し、というドラマが展開する。
この手の「実話にもとづく」という映画は、最後に、「実話にもとづいているが人物やエピソードは創作された部分もあります」という但し書きがついていることが多い。が、この映画、そういう但し書きがなかったのですね。つまり、かなり事実に近い?
ただ、創作はしてないけど削ったところは当然あるので、足し算ではなく引き算の創作という可能性もある。
それはともかく。
マクドナルド兄弟の作っているハンバーガーのおいしそうなこと。
バンズはふっくらとして、肉は分厚い。鉄板で焼いているところかおいしそう。
今のマックの薄っぺらな肉とうまみのないバンズ、あれはなんなのだ。
まあ、100円だから文句は言えないけど、日本にマックが来たときからマックのバーガーはあんな感じだった。日本に最初にマックが来たとき、銀座の三越の一角だったけれど、窓口で買うだけで、あとは立ち食いだった。でも、バーガーはたしか50円で、ドリンクも安くて、よく食べた気がする。
マクドナルドがあれほど大きな世界企業になったのはやはりクロックの力が大きいのだろうというのはよくわかる。いろいろ考えてやっているし、成功のためなら人も蹴落とすみたいなところもある。ただ、映画では抵当に入れた家を銀行にとられそうになるほどの苦境から、間を飛ばしていきなり成功者になっていたりと、ちょっと飛ばしすぎなところもある。離婚と再婚のあたりもそのあたりの事情とか全然描かれない。
一方、マクドナルド兄弟は職人タイプで、事業を大きくすることを望まず、今のままでいたいというか、今のままでないとクオリティが落ちると考えている。だからクロックの提案をことごとく蹴る。その中にはミルクシェイクの素みたいな粉末を水に溶かしてかきまわすとシェイクになる、というのがあって、これだと大幅に経費節減、ということで兄弟に内緒で強引に導入してしまうのだが、マックのシェイクがあんなのでできてるんじゃ、もう飲みたくない、と思ったら、さすがにあれはアイスクリームに戻したと最後に字幕で出ていた。
シェイカーのセールスがきっかけで始めたのに、そのシェイクを否定するようなことをする、というのがなんとも。
結局、マクドナルド兄弟はマクドナルドの商標権をクロックに売らざるを得なくなり、兄弟は自分の名前を店の名前にできなくなり(本名を使えないあの日本の女優のようだ)、その店のそばにマックができて、兄弟は店を閉じることになってしまう。
なにがなんでもマクドナルドの名前は売らない、と主張することもできたと思うのだが、兄弟もクロックとの対立に疲れたのだろう。
商標権を売ったあと、トイレで出会ったクロックに、マクドナルド弟が言う、「最初に店に来たとき、店の中を見せて、ノウハウも教えたのに、なぜ勝手に自分で商売を始めなかったのか」
するとクロックは言う、「マクドナルドという名前が成功の秘訣だと思った。クロックなんて名前の店で食事したいと思うやつはいない」
マクドナルドというのはスコットランド系やアイルランド系の名前で、ロシア東欧が起源らしいクロックよりはるかにアメリカで受ける名前なのは間違いない。うーん、でも、マクドナルドに似た名前ならいくらでもあるので、それを使えばよかったのでは?
マクドナルド兄弟があれほど自分たちのやり方にこだわらず、妥協していたら、もっと違う展開になったのかもしれない。クロックは、最初の段階では、やはり兄弟が必要だったのではないか。
成功者が初期の仲間を切り捨てる、みたいな、よくあるパターンのような感じもする(スティーヴ・ジョブズもそうだったな)。
クロックは特に、兄弟の考えたアーチのある店のデザインが気に入っていた。クロックとマクドナルド兄弟の関係は映画に描かれたよりはもっと複雑なのだろう。
最後にご本人の声や顔が出てくるけれど、どこかドナルド・トランプっぽいな。ああ、トランプもドナルドか。