最近のハリウッドのメジャー大作はアメコミの映画ばかりで、この種のアメコミは全部スルーしてきた。なぜなら、1作品を単独で楽しめないから。特にスパイダーマンやアイアンマン、キャプテン・アメリカなど多数のヒーローを抱えるマーヴェル・コミックの映画は全部つながっていて、ひととおり見てないと疎外感を感じるみたいなのだ。
「スパイダーマン:ホームカミング」を見ようと思ったのは、なんといっても「バードマン」以来絶好調のマイケル・キートンがまた鳥怪人を演じると聞いたから。
マーヴェル・コミックのライバルにDCコミックスというのがあって、バットマンやスーパーマンはこっちに所属するのだが、あのティム・バートンのバットマンを演じたキートンがライバル、マーヴェルの映画に出るっていうのもまた面白い、と思ったから。
そして、やっぱり、サム・ライミの「スパイダーマン」が好きだったから、というのもある。
んなわけで、久しぶりに(「アメイジング・スパイダーマン」はまったく見ていない)スパイダーマン見るか、と思ってシネコンに出かけた。
例によって、マーヴェル・コミックの全部つながってるシリーズの1作なので、出だしからして前の何かを見てないとさっぱりわからない設定。なんか戦争があったみたいなのだ。あとで調べたら「シヴィル・ウォー」という映画らしい(マーヴェル・ヒーローの内輪もめか何かだったと思う。もちろん、見てない)。
ヒーローの内輪もめといえば、DCの方は「バットマンVSスーパーマン」というのがあって、ちょっと興味あったのだが、こっちもいろいろつながってるらしいのでパス。マーヴェルの方の「ドクター・ストレンジ」も興味あったのだが、こっちもつながっているらしいのでパスしてしまった。「ワンダーウーマン」は見たいと思っているのだが、こっちはDCで、「バットマンVSスーパーマン」とつながってる?
なんかこの、一見さんお断り的な雰囲気が日本でイマイチすごいヒットにならない原因なのだと思うのだが、海外ではどの国でもヒットとか、わからん。
それはともかく、映画はマイケル・キートン扮する男が当局によって仕事を奪われ、その責任がアイアンマンにあると思って復讐に走る、というところから始まるんだけど、この男とアイアンマンの確執がその後どこか行っちゃってるのがなんだかなあ。ティム・バートンはこういう悪役をじっくり魅力的に描いたんだけどねえ。
で、この男がヴァルチャーという鳥怪人になるのだけど、ヴァルチャー自身は古くからスパイダーマンの悪役として有名らしい。映画ではこの鳥怪人の意外な正体が途中で明かされて、その辺からドラマとして面白くなるはずなのだけど、あまり掘り下げず。残念。
それまでは、スパイダーマンとしてヒーロー・グループに選ばれ、修業中の主人公ピーターの高校生活と、人々を救う使命にやる気満々なのだが、どうもやることなすことうまくいかず、むしろ大迷惑な事件を起こしてしまうダメな主人公が描かれる。この辺、相棒の太った少年の面白さもあって、笑えるところも多かったが、なんか全体に安っぽいというか、深みがないというか、この辺はマーヴェルのシリーズの一部だからしかたないのだろうけど。
あと、キャプテン・アメリカの道徳の授業(エンドロールの最後)はひたすら寒い。
そのあと、新海誠特集をやっているキネ旬シアターで「言の葉の庭」と「彼女と彼女の猫」を見る。
「言の葉の庭」はDVDで見て、すべてわかっているのに、クライマックスでは泣けてしまった。階段の上と下で女と男が涙を流す。「君の名は。」ではそれはうれし涙だったが、こちらは悲しい涙。雪野の号泣は、それまでこらえにこらえていたものが一気に噴き出した涙だ。
「彼女と彼女の猫」は新海誠のアマチュア時代の5分の短編を別の監督が25分のアニメにしたもので、ヒロインの置かれた状況が雪野にかぶるのだけど(声が同じ人だし)、正直、無理に引き伸ばしてる感がかなりあった。もとのアニメを見てないのでなんとも言えないのだけど。「秒速5センチメートル」でもこのアニメが併映になっているのだが、もう一度見たいと思えない。新海作品を先にやって、そのあとこれをやるから映像の差とかも目立ってしまう。「秒速」が終わったらそっと出るという手もあるんだけど。
追記 ネットで「彼女と彼女の猫」のオリジナル版を見た。リメイク版よりずっとずっとよかった。猫もこっちの方がかわいい。猫にも彼女ができてるし。絵も全然いいわ。