すぐに見なくてもいいかな、と思っていたけれど、IMAX以外はまったく混んでいないので、見に行ってしまった、「すずめの戸締まり」。
中央部分にちょこちょこっといるくらいで、全然すいていたにもかかわらず、本編始まる直前に隣にオタク風の男が座り、2時間ずっと大きな音をたててポップコーンを食べていた。
2時間ずっと、この男の息と唾液の飛沫がその周辺に漂っていたのだと思うと、2日後が思いやられる。混んでいても隣がマスクして静かに見ていてくれる映画館の方がよかった。このシネコンはいつもすいてるので、隣に人が来ることはめったにないのだが、たまに来ると100%迷惑客。本編始まる直前でなければ移動していたと思う。そういや、以前、ガラガラのIMAXで隣に男に来られて、他の席に移った女性がいたっけ。
で、「すずめの戸締まり」。
「天気の子」みたいに、見ている間ずっと不満があって、ということはまったくなく、見ている間は楽しめた。
が、見終わってみると、なんだか底の浅さを感じてしまう。
「君の名は。」と同じせりふ、同じ構図の映像がひんぱんに出てきて、そして最後は(ネタバレ)東日本大震災なので、ああ、これは「君の名は。」の別バージョンなんだな、と思う。
「天気の子」では男が女を助けに行く話だったのが、女が男を助けに行く話になっていて、主要人物は女性が多く、女同士の連帯が描かれるところがこれまでの新海誠と違うところだが、登場人物があまりに善良な人ばかりで、これまでの映画にあった屈折も深みもない。主人公に都合のいい人ばかりが出てくる。
愁嘆場になりそうになるとユーモアを入れて重くならないようにしているところがいくつかあって、そういうところはうまいし、見ている間は先が読めない面白さもあって、楽しめる。楽しめるんだけど、深みがないし、既視感のあるシーンが多い。
(ネタバレ)昔の自分と今の自分が出会うとか、子ども時代の母と出会う「秘密の森と、その向こう」を見てしまうとねえ。このシーンの泣かせの演出もベタすぎる。
誰かが犠牲になる、というのは「天気の子」だけでなく、「星を追う子ども」でもあったけど、こういうテーマを安易に使いすぎるのもどうだろうか。
ヴィジュアル的には、ミミズと呼ばれる赤黒い煙の描写がパッとしない。あのヴィジュアルはもっとなんとかならなかったのか。
それと、猫。予告見たときからこの猫、なんかイヤ、と思っていたのだが、この猫のキャラクタリゼーションがだめです(きっぱり)。
新海は猫好きで、アマチュア時代に作った「彼女と彼女の猫」という傑作もあるのだが、この映画の猫はコンセプトがきちんとできていない。
猫はすずめが好きだけど、すずめには好かれない、とか、扉を開けまくっていたのかと思ったらそうじゃなかったとか、そして最後の成り行きとか、キャラとしての一貫性がない。この猫、いったい何だったの?って感じで終わってしまう。
あともう一匹、猫が出てくるんだけど、あれもなんだかよくわからないキャラ。
九州から東北までのロードムービー仕立ても特に新しくなく、東北へのロードムービーは「寝ても覚めても」があるので二番煎じ感は否めない。
というわけで、見ているときはそれなりに楽しめるし、無難な作りなんだけど、全体としての浅さを感じてしまう。「天気の子」よりは好感度は高いが、「天気の子」よりいいかどうかは、うーん、と思ってしまうのである。
入場者プレゼントは読みごたえのある小冊子。
そして、ショッピングセンター内のクリスマスツリー。
追記しました。