「バビロン」があまりにひどかったので、逆に期待した「エンパイア・オブ・ライト」。1980年代初頭のイギリス南部の海辺の町にある映画館の人々の人間模様で、「マジェスティック」みたいな感じなのかな、と思っていたら、そうではなかった。
オリヴィア・コールマン演じる映画館のスタッフの中年女性が、新しくスタッフになった若い黒人青年に恋する話で、彼女は妻のいる支配人の不倫の相手をさせられている。幼い頃には両親との確執もあった。男に利用されるだけの彼女は精神を病んでいる。黒人青年とは互いにひかれあい、肉体関係も持つが、親子ほど年が離れているので、ステディな男女の関係にはなれない。一方、当時のイギリスは人種差別が激化していて、黒人青年もその被害を受ける。
映画館が舞台で、いろいろな映画のタイトルが出てくるが、「ニューシネマ・パラダイス」ヤ「マジェスティック」や「エンドロールのつづき」のような、映画をめぐる人生みたいな面はあまり感じない。主人公の中年女性は映画館で働いているのに映画を見ないし、社会で起こっていることにも無関心。黒人青年は、映画を見たり社会に関心を持つようにと言う。
青年は映写技師と仲良くなり、映写室で映写技術を習ったりするが、彼の目標は大学の建築学科へ行くことで、ここでも映画は人生とかかわってこない。
そういう意味では単に映画館が舞台なだけで、別に映画館でなくてもよくね?な感じは否めない。ラスト近く、主人公がピーター・セラーズの「チャンス」を見て、人生について考えるシーンがあるが、映画とかかわる人生を描いているわけではないので、1つのエピソードにすぎなく見える。
「バビロン」では著作権の関係で「ジャズ・シンガー」と「雨に唄えば」のセリフの訳の字幕が出なかったが、こちらは「チャンス」はきちんと字幕が出る。
映画にも社会にも関心がなく、男に利用される怒りをためこんでいる女性の状況とか、激化する人種差別の問題とかのテーマもいまいち掘り下げが足りないので、ドラマとしても物足りない。「バビロン」同様、映画へのオマージュが空回りしているような気がした。
帰りに西船橋駅のエキナカをのぞいてみたら、ここも猫の日イベントをやっていた。
日暮里はにゃっぽりだけど、西船橋(略して西船)はにしふニャア~なのね。