前作「ザ・スクエア」に続いてカンヌ映画祭パルムドール2作品連続受賞の「逆転のトライアングル」。
前作「ザ・スクエア」もそんなにいいとは思わなかったし、今作もパルムドールのわりにはトマトなどの評価も絶賛というほどではない。でも、気になるから一応、見に行った。
以下、完璧ネタバレです。
3部構成で、第1部はモデルの男女がディナーの勘定をどちらが払うかでけんかする話。男は落ち目で、女の方が稼いでいて、その女もいずれはトロフィー・ワイフになってモデルをやめるつもり。つきあっている男は利用されているだけ。
第2部はこのカップルを含むセレブたちの乗り込んだ豪華客船が舞台。武器商人なのに無邪気な夫婦、資本主義社会の共産主義者を自認する船長、共産主義社会の資本主義者を自認するロシア人、セレブな乗客につきしがたう上層のクルーと、トイレ係などの下層のクルーなどなどが登場し、嵐で船が揺れてみんな吐いてしまい、トイレもあふれだし、そして武器商人の会社が作った手りゅう弾を投げ込まれて、という話。ここは船長とロシア人の会話、そして手りゅう弾が投げ込まれたときの武器商人の妻の反応が見もの。
第3部は船が沈み、無人島(?)に流れ着いた数人のサバイバルで、ここで邦題の「逆転のトライアングル」が起こる。サバイバル能力に優れたトイレ係がセレブを支配。そして三角関係も。
原題の「悲しみのトライアングル」は眉間のしわのことらしい。
第1部でもセレブのはずの男女がみみっちいことでけんかをしていて、いつ下層に転落するかわからない男女ではないかと思うが、第2部ではセレブとして安定している中高年の客たちが登場し、彼らと上層クルー、下層クルーの対比が描かれる。トイレの氾濫(=反乱)は第3部の布石だ。
第3部ではまたモデルの男女が主役になり、彼らとトイレ係の攻防になる。えらそうなモデル女よりトイレ係の方がよくなるモデル男。そして、このモデル女が最後までえらそうで、しかも本人はそれがえらそうだとはわかってないということがわかって、そして、というところで映画は終わる。
正直、第1部と第3部はわかりやすいけど、それほど感心はしなかった。間の第2部は長い脱線に見えるけれど、おそらくここが高い評価を受けているのだと思う。
ジェームズ・ジョイスの「ユリシーズ」の原書が出てくるけれど、「ユリシーズ」も3部構成で、第1部と第3部が短く、第2部が長い。この映画もそれにならっているのは明らかだ。