2013年10月18日金曜日

「アラビアのロレンス」を初めて見るには?

大学の後期授業が始まって以来、試写にも映画館にも全然行けない。
授業のために古い映画のDVDは見ているが、新作はもう1ヶ月見てない。
それはともかく。

後期は「アラビアのロレンス」をやるんですよ。
学生の中にはこの映画を見たことがある人は1人もいません。
先日、第1回をやりましたが、まず、映像なしの序曲に驚いていました。
私が初めてこの映画を見たときは70年代はじめのリバイバルで、この頃は「ベン・ハー」はじめ、少し古い名作がよく上映されていて、序曲がある映画には慣れていました。映像がある場合(「ウェスト・サイド物語」など)とない場合(「アラビアのロレンス」や「ベン・ハー」)があって、ない場合は、場内を少し暗くして、その間、トイレに行く人は行く、そして、序曲が終わりに近づくと場内がしだいに暗くなって、終わると同時に真っ暗になり、映画が始まるという、なかなか手の込んだ上映をしていたものです(最近のリバイバルだと真っ暗な中で序曲を聞くのだと。それじゃ「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と同じだわ)。
教室では電気を消しても真っ暗にはならないので、そんな中での序曲でしたが、序曲の間、なんとなくざわざわしていたのに、音楽が終わりに近づくと、しーんとなったのには驚きました。わかるんですね、音楽が終わりそうだということが。

映像は重要なところしか見せず、あとは解説をして、できればレンタルして全部見てほしい、と言っていますが、「アラビアのロレンス」は解説がとてもむずかしい。なんといっても、第1次世界大戦頃の中東情勢を説明しないといけない(私は門外漢)。とりあえず調べて、オスマン帝国がどうの、当時のアラブは、と解説しますが、学生にはむずかしいようです。私も詳しくないので、ほんとに簡単に説明しているのに、イギリスやフランスなどが利権目当てでアジアなどの地域に進出する、ということ自体があまりわかってないというか、知らないというか、うーん、高校ではそういうこと教えないのですか?(あ、近現代に入る前に終わっちゃうのか、授業が)。

と、頭を抱えつつも、ふと思ったのは、私が「アラビアのロレンス」をリバイバルで見たのは高校生だったけど、この映画の時代背景とか、全然わからずに見ていたなあ、ということ。もともと、歴史は日本史も世界史も嫌いで、地理で受験したくらいなので。
そんなわけで、ロレンスがイギリスとアラビアの間で翻弄されたということは理解できましたが、それ以外の理解については果たして、という感じです。
でも、映画はすばらしかったし、楽しめました。
なんといっても、あの映像美。これは映画館じゃないとわからない。
それから、ピーター・オトゥールが魅力的で、オマー・シャリフがかっこよくて。
もうそれに尽きますね。
当時、やはり映画館に見に行って、ロレンス命になった女子高生、けっこういましたが、歴史背景なんて全然話題にならず、ひたすら、ロレンスすてき、アリかっこいい!
この映画、女性は背景にちらっと映るだけなのに、女性ファンがものすごく多い。
オトゥールのロレンスが両性具有的、つまり、半分女性みたいなところがまた女性に受けたのだと思います(JUNEとか耽美とかBLとか、そういう系列)。

というわけで、歴史背景など吹っ飛ばして、映像美にうっとり、ロレンスにうっとり、アリにうっとり、ただそれだけでも十分に名作なので、「アラビアのロレンス」初体験はむしろ、こういう形から入った方がいいような気がします。
でも、やっぱり、授業ですから、時代背景や「ロレンスとは何者か」というテーマをしっかり勉強してもらいますけどね(授業では映像は本当に一部しか見せないので、各自が映画館なりDVDなりで全体を通して見るのが初体験ということになるから別にいいのか)。
今、改めて見ると、この映画、ヨーロッパ列強による第3世界支配に対する強い批判精神に貫かれている作品です。ロレンスがアラビアの主権を望んだように、映画の作り手(特に脚本家?)もそれを主張しているように感じます。