2014年3月30日日曜日

17年目の和解

アジアリーグのクレインズは今季は全日本選手権でも王子を破って優勝していて、全日本とアジアリーグの両方で優勝したのは7年ぶり2回目となります。
その7年前のW優勝に貢献した選手の1人が元セイバーズのデレク・プラント。何度も書いてますが、セイバーズのゴーリー、ドミニク・ハシェックとHCテッド・ノーランの間で確執があり、そうした背景の中、97年のプレーオフ・ファーストラウンドでハシェックが彼を批判する記者への暴行で出場停止、絶体絶命の危機を救ったのがデレクの同点ゴール(実際は相手のオウンゴール)とOTゴールであったというお話。デレクはハシェックとノーランの確執の真っただ中にいた選手だったのです。
デレクのゴールでセカンドラウンドへ進んだものの、出場停止が解けたハシェックはケガで出られず、セイバーズは敗退。そしてノーランはHCをやめ、ハシェックはその後、98年長野五輪でチェコに金メダルをもたらし、99年にはセイバーズをファイナルに導くが、ダラス・スターズのブレット・ハルの疑惑のゴールで敗退。このとき、プレーオフ前のトレード・デッドラインでダラスにトレードされたデレクが棚ぼたカップ獲得となったのでした(しかもハルはデレクの大学の先輩)。
セイバーズは当時のオーナーがその後刑務所に入ってしまうような山師だったこともあって破産寸前、このままセイバーズにいてもカップとれないと思ったハシェックがデトロイト・レッドウィングスにトレードを要求、ということがあったために、長い間、セイバーズ・ファンの間にはハシェックに対する悪感情がありました。ハシェック自身もしばらくの間はセイバーズを無視し続けていたのですが、レッドウィングスで2度目の優勝をしたとき、チームの記者会見でバッファローとセイバーズの元チームメイトたちに感謝の言葉を述べ、あまりにバッファローの話ばかりするのでレッドウィングス側が打ち切ろうとしたとか。このあたりからセイバーズのファンも過去を水に流そうという感じになっていったようです。
ハシェックはバッファローで貧しい子供たちのためのチャリティ活動を続けていますが、他チームに移ってもそうしたチャリティ活動でバッファローに来ていたようです。2年ほど前にはセイバーズの試合で記念フェイスオフもしていました。この頃からセイバーズの殿堂入りや永久欠番は視野に入っていたと思われます。
現地時間29日夜、日本時間30日午前の試合で、ハシェックのセイバーズ殿堂入りのセレモニーが行われることになっていますが、来季には39番を永久欠番にすることも決まりました。
ハシェックとノーランの確執が事件となった97年からすでに17年。現在、セイバーズのHCはそのノーランなわけですが、この2人が会って大丈夫かな、と思っていたら、2人が笑顔で握手している写真がありました(アップできないのが残念。セイバーズのファンの掲示板にあったのだけど、この掲示板は登録しないと閲覧できない)。さすがに17年もたっているので、どちらにとっても昔のことになっているようです。
というわけで、ハシェックとノーラン、17年目の和解、となったわけです。
関連記事(英語)
http://www.nhl.com/ice/news.htm?id=711748&navid=nhl:topheads


私がセイバーズをチェックするようになったのは2003年からなので、当然、ハシェックとノーランの時代も、デレクの活躍もリアルタイムでは知りませんでした。ただ、このハシェックとノーランの話があまりに有名なので、そこで劇的なゴールをしたデレクのことも知り、そのデレクがクレインズに来るというのでアジアリーグを見るようになったのでした。
デレクの追っかけをした2005年から2007年の2シーズンは、私にとってはとても幸せな時期でした。また、この2シーズンはセイバーズが非常に強かった時代でもありました。ダーシー・リギアGMとリンディ・ラフHCの作戦がみごとに当たり、ドゥルーリーとブリエアという2人のキャプテン、ゴーリーのミラーを中心に、派手さはないが実力のある選手たちのケミストリーが毎回すばらしい勝ち試合を見せてくれていました。本当に魅力的なチームでした(同じ頃のクレインズも)。
特に2006年のプレーオフは、ハシェックとノーランの確執の重要人物だったジョン・マックラーGMのオタワ・セネターズが優勝のためにハシェックを雇ったのにハシェックがケガで出られず、最強と思われたセネターズをセイバーズが粉砕してしまうという結末に。ポマンヴィルのOTゴールにデレクのOTゴールを思い出した人も多く、くやしがるマックラーの姿に大喜び。このあとハシェックは人間的に丸くなっていき、また、セイバーズ・ファンもハシェックが与えた痛みを癒すようになっていった気がします。
セイバーズは2007年にプレジデンツ・トロフィーを獲得したあと、低迷が続いていますが、クレインズは2009年にアジアリーグ制覇したあと、ちと低迷だったのだね。今季は2冠達成するようなチームとは思いませんでしたが、ここ一番に強くなったのかな。王子はオギリンのブレイクが驚きだったよね。2006年にはエアホッケー優勝者だったけど、今年はベストゴーリーになったんだから。